魔導柱

魔導柱<Ⅰ>

 デル達の案内でドームのほぼ中央まで向かうと、モニュメントのようなものが建てられていた。

 大きさは2mほどで柱と言うよりもモノリスのような形だった。表面に文字や模様のようなものはなく光り輝いたりもしていない。

 何も知らなければ墓標などにしか見えないな。


 それにしても大事にしている割に結構無造作に置いてあるな。


「これ、少し調べてもいいか」


「壊したらぶっ殺すわよ」


「壊すような魔法なんて知らないよ」


 俺は一人で魔導柱の前に立つと手をかざして調べ始めた。


「ディテクト!」


【アクセスポイント】


【別名:魔導柱。実際には柱というよりも板の形に近い。マナを具現化するジェネレーターへ繋ぐ装置】


 ふむ、レベル1だとこんなものか。

 じゃあディテクト1000倍。


【アクセスポイント】


【クライアントとサーバーの相互接続をするための通信機器】


【第1層(魔術言語)、第2層(変換)、第3層(エネルギー放出)まで全ての接続を担う】


【このモデルは通常よりもパケットが4倍ある】


【ただしパケットに余裕があったとしても、サーバーの負荷を超えると共にオーバーフローする】


 あ、あれ…… なんか、いきなり全然違う表記になったんだが?

 まるで地球のインターネットの説明みたいだな。


 パケットが4倍ってなんだよ。


【アクセス過多への対応策としてワイドバンドに対応している。しかし対応した機器でないと通常のバンドのアクセスになってしまうので注意が必要】


 対応機器って……要するに魔法使いの杖ってことか?

 ワイドバンドに対応しているからといって、魔法が4倍になるわけじゃないのがミソだな。


 要するに魔法使いの杖がPCかスマホで、魔導柱が中継アンテナかWiFiルーターで、宇宙人の人工衛星がサーバーって感じで考えればいいのか。

 そういえば物理魔法とかは分かってるけど、探索系の魔法とかはどうなってんだ?


【監視衛星などが対象となる個体や地域を探し出して情報を送りサーバーで情報を精査してアクセスポイントを経由の後、機器に結果を送る】


 ふむ、なるほど。いやあリファレンスがしっかりあるのは助かるぜ。

 俺が女神のところで作業していたときはまともなのがなくて本当に苦労したからな。


 エネルギーってのはマイクロ波とかで送ってたりするのか? うーん、そこは全く分からないか。


 お、なんか注意点があるな。


【探索系魔法は比較的負荷が掛かりやすいため、大きな負荷をかけるとアクセスポイントが危機を感知して一時的にシャットダウンをして再起動をします】


【再起動には数分がかかり、その間該当の地域において一切のアクセスができなくなります】


 なんかこういうのを読むと科学の発展系って感じで魔法感が全然ないな。

 確かに魔法も科学も突き詰めると同じようになるって言われるけどさ。


 これってどれくらいの負荷を掛けたら落ちるんだろうか。いずれ何処かで試してみるか。

 その地域の魔導柱を落としてしまえば、相手は魔法を使えなくなる。

 いやもし味方に魔法使いが居れば同じか。


 でもセレーネの神聖魔法は使えるわけだから、時と場合によっては使えるかもしれない。


 他に魔導柱を使わない精霊魔法というのがある。

 アーキタイプと呼ばれ、この星の原初の生命と言われている彼らの力を借りて魔法を行使する。

 だがこの精霊魔法はほぼ絶滅したらしいので、あまり気にする必要はないだろう。


 うーん、魔導柱を調べたところで彼ら紋様族が狙われる理由は結局分からない。

 これを狙っているってことはなさそうだ。運ぶにしても大変そうだし。


「実は凄いロリコンとショタコンが居て、彼らを全て自分の物にしたいと思ってたり?」


 そっちの方が現実的か……いや、それで殲滅戦をしかけたら元も子もないだろ。


 うーん……、やっぱり分からない。


「あんたっ! 何時までそうしているつもり!」


「え、あ、ごめん。つい考え込んでいて」


 少しと言いながら結構時間をかけてしまいデルが声をかけてきた。

 これ以上調べても何も分からないだろうとみんなの元に戻る。


「勇者様、それで何か分かりましたか?」


「色々と調べたけど、紋様族が襲われる理由は分からなかったよ」


「そうですか……」


 残念そうにするセレーネだった。


「他に、何か思いつくものはある?」


「他に価値のありそうなもの……後は代々受け継いでいる本の類くらいかなぁ」


 本か……。


「見せてもらって……」


「絶対にダメ!」


「ええ、なんで?」


「貴重な物ばかりなんだから、そんなおいそれと見せるわけにはいかないの!」


 それもそうか。あ、そうか別に中身を見る必要はないんだからここで調べればいいのか。


「だったらそれでは構わないよ。離れたところでも魔法で価値を探ってみるから」


「あんたそんなことが出来るの」


「この指輪で探索系の魔法が少々使えるんだ」


「余計なことはしないでしょうね?」


「今のタイミングで余計なことをする意味はないだろ」


「……まあ確かに」


「“サーチ”!」


 本を探す。

 反応は……え……、4000超えって……凄い数だな。

 半分位は一つの場所にまとまっているようだが、後は様々な場所に置いてある。


「もう少し片付けた方がいいんじゃないのか」


「そこは、ずーっと大きな課題なんだよね」


 あははと言った顔でカトリナが言う。

 どうやら彼らはあまり片付けが得意ではないらしい。


 さてと、その中で金銭的に高い本をサーチ。

 約300冊程が高価と判断。


 上から順にサーチして……。


「あ、あのさ……、な、なんか凄い価値があるみたいだけど金貨2万てどれくらいの価値になるかな」


「金貨2万枚!? うわっ、うわぁ……、それだけあったら慎ましく生きていたら一生を過ごせそうですね。あ、それなら名誉貴族の称号が買って土地を手に入れるという手も……」


 おい聖女様、貴女はどうしてお金が絡むと一気に俗物化するんだよ。

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