片付けようとするとつい遊ぶのは何故なのでしょう<Ⅲ>

「俺は堅苦しいのは苦手なんだよ。そこで若い女の子がお腹を空かした姿を見ながら食事をする趣味はないし」


 俺の言葉に3人は本気で驚いた顔をしていた。


「ど、どうする?」


「だ、だめだよ」


「あの勇者様、ごめんなさい。大変ありがたいのですが旦那様に知れたら酷く叱られてしまうので……」


「そんなの黙っていればいいんじゃない」


「あのその……この子は嘘がつけないので、きっとバレてしまいます」


「おっと、そうきたか」


 先ほどからセレーネは黙っているのでチラリと見てみる。

 笑顔でうんうんと小さく頭を上下に動かしている。どうやらこの後の成り行きを全て俺に任せるつもりらしい。


「うーん、どうせ後で夜の相手をするんでしょ。だったらちゃんと食べておかないと、途中でバテちゃったら楽しくない。その方が困る」


「ちょー!? ゆ、勇者様!?」


 だんまりを決め込んでいたセレーネが驚いた声を出す。

 3人も何て初な反応で顔を真っ赤にさせている。慣れていないんだろうけど内容は分かっているんだな。


「俺は凄いぞ、一晩中でも可能だからな」


「な!? ひ、一晩中しちゃうんですか!?」


「当然3人同時だ」


「3人同時なのに一晩中!?」


 セレーネが一々声を上げている。

 3人の娘さん達も、自分達がどうなるのだろうと固唾をのんで俺を見ていた。


「なにせ俺はこの世界に来てまだ日が浅いから、一晩中かけてこの世界の話を聞きたいんだ」


「せ、世界について!? って……あ、あれ……、それって……」


「セレーネはさっきから何と勘違いしているのかね」


「え!? そ、それは、その……だ、だってそんなの……ずるいですよぉ!」


「それなのに空腹で頭が回らないんじゃ困るし」


「で、でも……もし勇者様を楽しませられなかったら……」


「それでも叱られると」


「は、はい……」


「俺を楽しませればいいんだろ? 君達の話を聞かせてもらうだけで十分楽しいのだが?」


「あ……」


 どうやら一番年長の少女は意味が分かったらしい。


「それに実はここだけの話だけど今夜は彼女、聖女さんの先約があるんだ」


「え? わたくしと?」


「それで先約よりも先に他の子と楽しんだってなったら、彼女の面目を潰してしまうじゃない」


「せ、先約って……ええ? え? えええ?」


 さすがに無茶ぶりしすぎたか。セレーネも状況に追いついていない。


「だからこれ以上は察してよ。口止め料も兼ねて一緒に食べようよ」


「……た、食べちゃおうよ?」


「だ、だよね……」


「ですが……」


 ぐぅぅぅ……。


 最後まで悩んでいた彼女のお腹も鳴ってしまう。


「ほら、食べようぜ」


「わ、分かりました……」


 何とか押し切る形で全員食べることとなった。

 ちなみに、セレーネとの話はそのまま有耶無耶にしてしまおう。


 食事は5人でも食べきることが出来ないほどの量だった。

 3人は最初こそ恐る恐るだったが食べ始めると、すぐに美味しい美味しいと楽しんでいた。


 食べ終わる頃には日は暮れ始め部屋が暗くなってくる。

 その頃になると3人とも大分緊張感も和らいでいた。


 そのままロウソクを付ける。


「あのバルって人物は一体誰なの?」


 まずは彼女たちの身近そうなところから聞いていく。


「あの人は……」


 この村から少し離れたところに大きな土地と農場を持つ独立した自由農民という人らしい。村の農場でも約半分がそのバルという人物の土地だとか。


 この辺りは常に魔物の被害を受けていて、せっかく農作物を作っても何かあるといつも潰されてしまい困らされていたが、ここ10数年は魔物の被害も落ち着いて生産量ものきなみ増えていた。

 やっと軌道に乗ったところで今回のアンデッド襲撃で非常に不安だったが、俺が解決したので感謝しているとのこと。


「なんか普通に感謝されてるだけなのか」


 女の子まで宛がって何か含むところがあるのかと思ったんだけど、もしかしてこの程度は普通のことなのか?


 一緒の部屋に置けないとか、同じ物を食べさせないとかいうわりに、夜の方はガッツリやっちゃって良いってえらく都合のいい話じゃないか。

 それが奴隷ってことなのか? 持ち主の都合の良いように使っていいのか。


「こういうこと……えっと今日みたいなことって結構あるのか」


「いや、あんまりないです」


「そうなのか」


 もしかしてバルって人も、こういう接待に慣れていないのかな。

 それとも俺が、そういうのを好みそうって噂でもあるのだろうか。確かに嫌いではないけどさ。


「でもでも、こうやって綺麗な服着れたし、お化粧もしてもらえたし。なんか楽しかった」


「それに、美味しいモノが食べられて凄くよかったー! 勇者様ありがとう!」


「そうかそうか」


 その後も他愛のない話をしていく。

 村のあの子とあの子が恋仲だとか、何とも年頃の話ばかり。

 そこにはセレーネもがっつり食い付いて話してきた。


 どこの世界でも女性の恋バナ好きは変わらないんだな。


 この子達と色々話して分かったが、奴隷は教育らしいものを受けていないため歴史や地理に関して全く分からないのは衝撃だった。

 当然文字も読めないし、両手の指の数を超える計算も難しい。


 日本というのはちゃんと教育が行き届いているんだなと認識できる事実だった。

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