亡者撲滅目録

瀬名

第1話

「おい、新入りそっち行ったぞ。最後のトドメはお前が刺していい。」


新入りと呼ばれたアル・インヴォートは無言で何者かを追いかけて鎌を背中から取り出す。


「た、助けてくれ、俺は何もしてねぇ。そうだろ!?」


鎌を向けられた人ではない何かが泣きながら訴える。

それに同情したのかアルはピタリと鎌を止めてしまった。

鎌が止まったのを見てホッとしたような顔をしていた人ならざるものは突然首と身体が別れた。コロリとアルの足元に先程まで泣きながら懇願していた彼の首が落ちており間違いなく息絶えていた。

アルは紙袋の下にある自分の目を大きく見開いていた。間違いなくアルの先輩にあたるフォームが大きな死神の様な鎌で首を斬っていた。


「トドメは迅速に刺す。そう教えた筈だ。なぁ、新入り?」


「……しかし、まだ、彼は人を殺して…」「殺してないから生かしてやるって?そういうことかよ。」


自分が考えていたことをズバリと当てられて何も返せなかった。


「生きてるだけで罪深い。それが現世に生きる亡者だ。」


"亡者"

それら一人一人は非力な力しか持たない。しかし、生者の負の魂を少しずつ少しずつ飲み込むことで生者をも殺す力を持ってしまう。


「……奴らだって亡者になりたくてなった訳じゃないのはわかってるよ俺だって。だからと言って殺さない訳にはいかないんだよ。」

その言葉を聞きながらアルは先程の亡者の遺体が転がっていたところに目を向ける。亡者は既に光の粒子となって消えていた。


「次に死ぬ時はもっと安らかに死ねるといいな。」


そうぽつりと呟いてフォームは鎌をしまった。

それに倣ってアルも同様にしまう。


「何故、亡者は居るのでしょうか。人間は死んだら天国に行けると信じている人が多いのに。これでは地獄だ。。死んでからまた死なないと行けないなんて……」


「亡者を作るのも、人間作るのも、俺達みたいな半端ものを作るのも神様だ。それをただの都合の良い偶像として使っている人間だけに恨みがあるからじゃないのか?………どんな理由でも亡者なんて作ってるやつなんてクソだと思ってるけどな。俺は神様ってやつを1回でいいから殺してやりたい。」



ゆっくりとしかしハッキリとフォームは言う。


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