第22話 天使とスライムの話
天使の顔はスライムで覆われていて鼻と口以外は見えていなかったのだけれど、その口元を見た限りでは天使もまんざらではないような様子だった。少なくとも私はそう感じていた。今も口からは淡い吐息が漏れているのだけれど、私達はそれを無言で見守る事しか出来なかった。あさみもいつもとは違って歌を歌ったりはしていなかったのだ。
「あの、この天使はこれからどうなるっスか?」
「さあ、私は何も考えていないんだけど、アイカはどうしたいの?」
「私は天使の生態が少しでも理解出来て次につなげることが出来たらいいなって思っているよ」
「次につなげるって、イヤらしいことを考えているんじゃないっスよね?」
「も、もちろんよ。私は学者なんだし知らない事を学ぶのが仕事なのよ。そうだ、ルシファー君も一緒にスライムで遊んでみたらどうかな?」
「それは本気で遠慮させていただくっス。大体、こんなスライムで何をしたいのかさっぱりわからないっスよ」
「そうそう、あの天使って胸があるから女性だと思うんだけど、みんなあんなにスリムな体型なのかしら?」
「あ、自分達天使には他の生物と違って性別とか無いっス。自分達は繁殖行動を取ることはないですし、個体数は主が全て管理してくれているんで問題無いっス。あと、胸がペッタンコなのは戦闘の時に邪魔にならないようにしているだけっス。アイカとかみさきは戦闘タイプとは言い切れないのにペッタンコなのはどうしてっスかね?」
「ねえ、あなたって自分が偉い天使だから私に暴言を吐いても良いって思ってないかな?」
「え、自分は暴言なんて吐いてないっスよ。何か気に障るような事を言ったとしたら申し訳ないっス」
「いえいえ、自覚がないなら気にしなくていいのよ。そうそう、私が調べたところによると、このスライムって悪い天使にしか催淫効果が無いみたいだよ。万が一ミカエル君が触れても平気だから安心してね。いい子には何も起きないみたいだからね」
「自分は悪い子ではないから大丈夫なんっスね。子供じゃないんだけど、この見た目だったら説得力ないっスよね。それにしても、このスライムってどこから入手したんですかね。自分にはまだまだ知らないことがあると思うと嫌になっちゃうっスよね」
「本当よね。私も学者なんて言っているけど、まだまだ学んでないことがたくさんあるのよね。今日は色々と学べそうだから良かったんだけどね」
アイカはそう言いながらもミカエルの足元に大量のスライムをまいていた。そのスライムは一瞬だけ伸びたと思うと、空に飛んでいた鳥を捕まえていた。
鳥を飲み込んだスライムは少しだけ色が濁ってしまったけれど、ミカエルの足を伝って徐々に体を包みこんでいるのだけれど、ミカエルは全く反撃をしようとはしていなかった。
それどころか、ミカエルはスライムにその身をゆだねてしまっていた。
「アレって、ミカエルが自分から取り込まれてなかった?」
「そうなのかな?」
「私もそう見えましたけど、ミカエルは自分の欲望に素直なんですかね?」
「見た目はちびっこだけど、私達はこのまま続けちゃっていいのかな?」
「いいんじゃないかな。私だって気になる事は気になるけど、アレに飛び込むのは無いと思うな。学者としては体験しておきたい気持ちもあるけど、それはちょっと違うと思うんだよね。私が一人でいる時にそっと試したいかも」
アイカはこのスライムを試してみたようだったけれど、人間が試したところで何の変化も起きやしないのだ。そもそも、このスライムは天使に対する嫌がらせで作られたものなのだ。どうして天使に嫌がらせが必要なのかと聞かれても困るのだ。そもそも、このスライムの制作者がただの私怨で作ったに過ぎないのだ。
製作者の一人であるルシファーから聞いたことがあったので知っていたのだけれど、このスライムは天使や唯一神以外には普通のスライムで害はなく、天使や唯一神にとっては天敵と言っていい存在になるのだろう。なぜ、このようなスライムを作ることになったのかと言うと、単純に面白そうだったからとしか聞いていないのだ。
「ねえ、このスライムって私達は本当に触っても大丈夫なのよね?」
「ああ、お前たちが触ってもただのスライムでしかないぞ。ただ、長時間触れているとスライムの酸で体が溶けてしまう恐れもあるのだけれど、そこまで長時間触れているのもどうかと思うけどな」
あさみとアイカは私とルシファーの会話を聞いても何を言っているのか理解していない様子だった。私も全て理解しているわけではないのだけれど、この二人よりは多少は詳しいはずだ。ちょっと触るのは嫌だったけれど、このままにしておくのも申し訳ないのでミカエルとあの天使を重なるように移動させてみようと思う。二人は協力してくれるだろうか?
「あのさ、ルシファー君と話してたことってどういう事なの?」
「私も良く知らないんだけど、遠い昔にルシファーが唯一神との戦闘に勝利を収めた晩に、何百人もの悪魔技師を呼んであのスライムを作ったらしいよ。それこそ、今の状態にするまでにとんでもない試行回数を繰り返したらしいよ。それで、出来上がったのが天使だけに効果のある催淫スライムってわけみたいよ」
「それって、何のために作り出したのかな?」
「さあ、本人に聞いても『禁欲生活であんなのに抗う姿を見れるなんて楽しそうだから』としか言われた事無いんだけどね」
「それって、本当ですか?」
「ああ、本当だとも。俺はもう少し肉体を削るような直接的なのが良かったんだけど、配合を計算していたやつがここらへんでいいでしょうと言ってチームを抜けたんだよ。それが無かったら今とは違う世の中になっているかもしれないんだよな」
ルシファーがこのスライムを作っていた時にミカエルはまだこの世界に戻ってきていないようだった。どこに居たかはわからないけれど、次からは簡単に連絡が取れるようにしてみてはいかがだろうか。みたいなことを言われ続けていたそうだ。
ルシファーとミカエルは仲が良いように見えているけれど、実際はどうなのだろうか?
「ねえ、ルシファーとミカエルって仲が良いの?」
「特別仲が良いとかは無いけれど、俺が堕天使になる前でミカエルがまだ大きかったころの話にはなるけれど、ミカエルは俺の周りをメチャクチャにひっくり返している時もあったと聞いている。そんな奴に対するちょっとしたイタズラがあのスライムだ。俺はまだ半分が天使かもしれないのであのスライムに触るのは少し怖かったけれど、いざ触ってみると何も効果は出ていないようだった。俺が触っても平気なスライムではあったけれど、肝心かなめの唯一神も天使も世界各地にやってこようとはしないんだよな」
ルシファーはどこか寂しそうにしていたけれど、それを聞いたアイカはいつも以上に目を輝かせていた。目を輝かせつつ、持っている棒をミカエルの大事そうな部分に近付けていった。
今まで聞いた事も無いような甘美な声が響き渡っているのだった。
じっくり責めることに飽きていたようなアイカではあったけれど、ミカエルのその声を聞いた瞬間に真面目な医者という風貌に代わっていた。持っていた棒を少しずつ振動させてミカエルの弱そうなところを集中的に責める事にしたみたいだ。
色々な国の事が良くわかってきましたが、それは表面だけの上澄みだという事も多少は理解出来ていた。ルシファーはこの世界で一番強い存在なので、無暗矢鱈と歩き回ったりしている彼を呼び止めるのも良くない事だと理解しているらしい。
「ミカエルとあの天使ってどれくらいあんな感じになってるの?」
「あのスライムが無くならないことを祈っているけど、そんな事言っちゃって大丈夫なの?」
「ああ、俺なら大丈夫さ」
「私達は大丈夫なのかな?」
「うん、君達も一緒で大丈夫だと思うよ」
スライムが無くなるまであとどれくらいわからないのだけれど、それまでは十分楽しませてもらうことにしようかな。なぜかルシファーが振動する棒を持っていたのでそれを頂くと、あさみとアイカも同じものを探している様子だった。
私達は三人でミカエルの体に刺激を与え続けてしまった。最初のうちは絶叫と言うか悲鳴と言うかそのような物がミカエルから発せられていたようだ。誰も得をしないように見えて、実は誰も不幸になっていないのだ。
私が本当に何となく棒をミカエルの股の間に入れてみると、ミカエルは口元から泡を吐いて倒れてしまったのだ。原因は恥ずかしくて言えないけれど、それを気にしていないミカエルはその間もずっと棒を離さないでいた。
とても気に入ったのかもしれないけれど、それとこれとは話が異なってくるのだ。こっちで良くてもあっちではダメという事が頻繁に起こってしまう。今よりも天使の数が多かった当時ですら天使を捕まえることは人類の急務だったはずなのだが、家に帰ると誰もいない時が多かった。
私はその事を少しだけ思い出して、気分が落ち込んでしまっていた。それでも、天使とミカエルに対する攻撃は止むことが無かった。
天使とその一派にしかきかないスライムを利用していたのだけれど、普通の人が同じように体験してみても、催淫効果は薄くその見た目もそれなりに良い方だとは思う。
ルシファーが手伝ってくれた遺産のお陰で私は自分の事は自分で調べたりも出来るのだ。
私は相変わらず、微妙に外れているであろうポイントを責めているのだけれど、味的にはずっといいものが出てきている気がしていた。
時々聞こえてくるミカエルの絶叫と天使の声が合わさっていた。そんな状況はとても珍しいらしく、私の知らない人たちも見に来ることがあった。幸いにもそのままゴミを捨てていく人はおらず、大体の人がわざわざ挨拶をしてくれたりと友好的な人類や爬虫類の代表がいた。
私もマナーは守らないといけないなと思っていたのだけれど、ついつい夢中になってしまってミカエルの存在の事を忘れてしまっていた。忘れてしまっていたのだけれど、私の右手は振動を自動で発動する事も出来る万能戦士タイプだった。
二人を重ねたところで何も起きなかったのだけれど、私達がルシファーと天使を蘇らせることが出来たとしても、私は今以上に頑張るだけであった。
頑張りすぎた結果、絡まってしまうかもしれないので慎重になってしまった。そんな二人が一緒に責められるのはいかがだろうか?
私の他にもあさみは背中や頭などを責め、アイカは上半身を調べ出した。そんなに簡単に弱点は見つかったかもしれないけれど、やらないよりはましだと思ってやり遂げることにっした。俺が子供の頃はバカみたいに走り回って暮らしていたものだ。
そんな子供を叱ってはいけないという決まりも無いので、ミカエルが死ぬか私の気が済むまで攻撃させてもらいますね。
「サクラさんってミカエルに何か恨みでもあるの?」
「そんなものはないけど、どうして?」
「何となく、サクラさんってミカエルに対しては冷たく見えちゃうからね」
ミカエルに対して何かされたとかは無いのだけれど、私は何となくミカエルを責めたいという欲望に押されてしまったのか、直接ミカエルの大事そうな部分に触れてみた。スライムと厚手の手袋のせいで感触は微妙だったけれど、ミカエル自身はとても満足できるような状態になっているようだった。私もそれは肌で感じることが出来た。
「ねえ、ミカエル君がこのまま戻らなかったらどうするの?」
「それはその時に決めればいいんじゃないかな?」
「そうですよ。天使の世界では貧乳がスタンダードなんですから、それと同じくらいすがすがしい気分で終わりましょう」
「今もミカエルは絶叫しているけれど、不思議な物でそんな光景はすぐに慣れてしまっていた。そんなわけだから、二人にはもっといい気持になってもらわなきゃね」
私の言葉がきっかけとなって、二人の天使を快楽の海に溺れさせていくのだけれど、残っているのは自分の腕だけだった。
意外と腕は金属や加工品よりも強く、手が溶けるといった被害もなかったようだった。そう言えば、夏祭りでも似たような出来事があったような気もしていたけれど、今のように直接触るような状況ではなかったはずだ。
私は再び天使とミカエルの前に移動すると、それだけで楽しい人生が送れるようになると思う。ミカエルも天使も顔自体は見えていないけれど、とても幸せそうな表情をしているという事が、わずかに見える口元からも理解することが出来たのだ。
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