第7話 転売屋には厳しい現実を突きつけますが、何か?

 ~ジュリアスside~



「と、言う訳ですの。転売について何かいい案は無いかしら」

「そうですねぇ……」



 その日、ミラノ・フェルン作家の新刊発売記念イベントをして帰ってきた妻は、怒りの形相で【執筆している物や絵などへの転売を防ぐ方法はないか】と言う相談を受けました。

 確かに、人気作家のサイン入り小説や、人気絵師の絵とは喉から手が出るほど欲しいものの一つであり、それらを手に入れる為に気合と根性で手に入れる猛者もいらっしゃいます。

 それを上回るのが――転売屋。

 ファンでもないのに、ファンの素振りで近づき手に入れる為に労力を惜しまない方々とも言えますね。



「転売に関しては、他国に売りはらう魔道具に関しても報告が上がっています。早急に解決しなくてはならない問題の一つではありますね」

「そうですわね……」



 事実、便利なものや生活に欠かせない物、趣味の範囲のものまで幅広く行われる転売先は、国内にとどまらず、他国へと渡っているのも確か。

 ならばどうするか。

 ――強硬手段の一つになりえますが、身元を確認できるものの提示が必要になるでしょう。

 身元確認をとれるものとなると、この国では発行の際にも厳しい検査が行われます。

 その上で手に入れた身元確認が出来る書類なりを見せて、合格ならば売る。

 グレーやアウトな人材に関しては、ちょっとお話ししましょうと連れていくことも可能ですね。



「国内で潤うはずの物が他国で潤うのは、些かどうかと思っていました。それも国から売るのではなく、転売と言う形なら厳しく取り締まるしかありませんね」

「となると、やはり身分証明書の発行が必要不可欠になりますわね」

「ええ、また、利用目的などもシッカリと定まっていない限り、難しい所ですね」



 それでも穴を見つけて手に入れていくのが転売屋でしょう。

 身分証明書を持っている人間に金を握らせ買わせると言う方法も十分にあり得ます。

 その場合、代わりに購入した人物に対しては、相応な罰金刑が待っていることを大々的に知らしめなくてはなりません。

 悪質な場合は、牢に入ってもらう事もやむなしでしょう。



「国の法によって、転売に関する事を国民に知らせる義務が出てきそうですね」

「ええ、身元確認の為の書類も、手に入れるにはそれなりの金額が必要ですわ」

「私としては、そこは致し方ない問題だと感じています。今は、絵ではなく動く者を捕らえるカメラ……でしたっけ? それがあるので、身分証明書には持っている人間の顔写真を張ることも義務ずけましょう。大事な身分証明ですから、奪われた場合、奪った相手には厳しい刑を処さねばなりません」

「ですわね」

「ですが、治安の問題からして先の内容は難しい所も出てくるでしょう……どうです? 身分証明書となるものを、商業ギルドで使っているブレスレットにすると言う大胆な方法もあります。商業ギルドとて、転売屋には頭を悩ませていると言いますし」

「なるほど……それなら手続きもそれなり簡単ですし、アウトな人材はそこで直ぐに弾かれますわ」

「購入履歴も魔道具によって記録されますから、一般人にも馴染みが深いでしょう。これを使わない手はありませんね」

「ただし、購入離籍の後の販売元が怪しい場合などは、ちょっと署まで引っ張ってきてもらわなくてはなりませんわね」

「まずは商業ギルド長とお話ししましょうか」



 こうして、長い論議の後、その日の内に商業ギルド長は呼ばれ、転売に関するアレコレの相談をした後、商業ギルドで身元確認及び、購入履歴及び販売履歴を調べたうえで、怪しい人物に関しては別室にて厳しく販売経路などを聞き、記録することも義務図けることに決定しました。

 また、一週間から二週間のうちに、ブレスレットを持っている商業ギルドからの身分証明を持つ者たちには、商業ギルドへと赴き、販売、購入したもののチェックを行う事も義務付けます。

 これで、大半の転売に関するアレコレは直ぐに判明するでしょうし、商業ギルドと国が連携して転売屋を潰す覚悟があると言う事を、国民に知らしめることが可能でしょう。



「強引なやり方は好ましくはありませんが、転売屋に関しては少し厳しくしなくてはなりませんね」

「今までが甘すぎただけですわ。甘い汁を吸った分だけ手痛い思いをして貰わなくては」



 笑顔で口にするリコネルに私も頷くと、それから程なくして転売に関する厳しい条例を出しました。

 国民には申し訳ないと前置きしたうえで、転売屋の行き過ぎた行動を国が容認できなくなってしまった故の条例であると伝え、国民からは致し方ないと言う、やや不満げな声もでましたが、実質、転売屋にとっては命を絶たれるような物でしょう。


 転売屋と解れば、重い処罰を入れ込む条例に、他国から来ていた商人ではない転売屋は国から出ていくか、新しく真っ当な仕事を見つけるしかないでしょう。


 甘い汁で生活していた分、彼らの生活は困窮するでしょうが、因果応報と思っていただかねばなりません。


 商売としてのやり取りまでは禁止していない訳ですし、転売屋を商売にしますとは商業ギルドには言いにくいでしょう。

 また、商売として転売をする場合は、直ぐに商売を取り消し、重い罰金を支払うか、下手をすれば牢に入ってもらう事になっております。

 危険な橋を渡ってまでは、やらない事を祈りたいところですね……。





=======

追加で一話入れ込みました。


転売、許さん。


身元確認が出来ないと売り買い出来ないようにすれば

スイッチも手に入りやすいのにな!!

という、私事を考えながら執筆……転売の多さよ……。

店で買うより2万も高いってどういうこっちゃ!


それでなくとも、転売は色々な所で多いですね。

マスクだったり、消毒液だったり、一時期流行りましたね。

ああいうのは、ちゃんと規制して欲しい所です。


話の区切り的に一話浮いてしまうので入れ込みましたが

ジュリアス様視点、久々でしたので楽しかったです(笑)


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宜しくお願いします(`・ω・´)ゞ

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