五巡目
前回は後輩君に一局目から攻められ、なにもできずに負けてしまった。
しかし、その次の対戦。私はやけに研ぎ澄まされた感覚があった。
勝てる気がする。集中していると周囲の動きがゆっくりに感じることがあるというが、私の状態はまさにそれだ。
今回も
***** ***** *****
配牌が終わる。
「あ、配牌でテンパイしています! これって凄いんでしたっけ?」
そして後輩君の一言で私の集中力はぱっつんと途切れる。
「別に大したことないよ。リーチかければいいんじゃない?」
投げやりに言う。一局目で親にダブルリーチされるとか、もう家に帰って早くおやつ食べたいとしか考えられなくなる。
「そうなんですか…。大したことないんですね…」
「うん。ダブルリーチって役になるけど、
「二飜かあ。あ、でもドラ3枚ありますし、結構良い手ですよね!」
死 ね ば い い !
どうやってテンションを維持しろというのか。どうやって勝つイメージを持てというのか。
とりあえずこの局は勝負しない方が良いな…。
さて、まずは一発を避けないといけない。後輩君が切った牌は白だ。私の手牌に現物はない。
現物がなくとも、字牌に逃げておけばおそらく直撃は回避できるだろう。ただ問題は私の手牌に字牌すらもないということだ。
いつもは呼んでもいないのに集まってくるオタ風軍団が、こういうときは誰も来ない。つくづく役に立たない連中だ。
一九牌なら大丈夫かな。でも、なんか嫌な予感がする。
と、そこで閃く。
私はドラを持っていた。赤ドラじゃない普通のドラだ。
筒子の4。後輩君がこの牌を三枚持っていると仮定する。その場合、この牌を使える形になっている確率はかなり低いのでは?
ダブルリーチでドラ3枚あって、さらにドラで待っている状況とかあり得ない。だからきっとこのドラは通る。
もし通らなかったら脱いでやる。その覚悟をもって私はドラを切った。
「先輩! それロンです!」
同僚AとBが、何してるの?って目で私を見た。親のダブルリーチにドラ切りで突っ込む馬鹿は普通いない。
違うんだ! これは高度な心理戦の上での結末なのだ。
ダブルリーチ一発ドラ4かぁ。ハネマンだよね…。
そして後輩君が手牌を晒す。想定通り、ドラの
後輩君が裏ドラをオープンする。
なんとドラが倍増した。
親の三倍満直撃で一撃死が確定した瞬間である。
「よし、脱ぐか」
私はブラウスのボタンを上から順に外す。いいさ、そんなに脱がしたいなら脱がせばいい。
(注:脱衣麻雀ではございません。負けて脱ぐ人はただの馬鹿か変態です。)
「先輩! これ何点ですか!」
「分かったから。脱ぐから、しばし待て」
「えっと、暑いですかね? って、あ、ちょっと、先輩、どこまでボタン外すんですか!? ブラジャー見えちゃいますよ!?」
「ボタンは全部外すしブラジャーも外すしスカートも脱ぐけど文句ある?」
私を見て、同僚AとBが首を横に振っていた。ないない、ないないと無言で語っているる。その『無い』が人としてあり得ないなのか、脱いだって見たくないなのか、それとも胸がないなのか、定かではない。
その様子を見て、再度、決断する。
「よし脱ぐか」
「わ、だから先輩ダメですって! 先輩の裸見たって誰も得しないです!」
貴様、言葉に気をつけろ!
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