麻雀初心者の後輩に今日も惨敗する私

猫とホウキ

一巡目

 私はたまに会社の同僚と麻雀に行く。ちなみに女だが、女性で雀荘に行くのは珍しいらしく、自己紹介もしてないのに雀荘の店長から名前を覚えられてしまっている。

 可愛いし、フリーでも来てくれないとか言われるけど、お世辞なのは見え見えだし、さすがに一人で来るのは怖い。だから仲間内で面子が揃っているときしか来ない。


 最近、後輩君が麻雀覚えたので打ってみたいと言ってきた。そして同僚A氏と同僚B氏ともに、雀荘に通うようになった。


 もう通算で10回くらい打っている。しかし初心者の後輩君、まだ一度もラスがない。半分はトップで、残りも二位か三位である。

 打ち筋を見てると初心者丸出し、筋も分かっていないようなレベルなのに負けないのである。


 一方、私は後輩君に負けっぱなし。しかしビギナーズラックもここまでだ。今日こそは絶対に勝ってやる!


*****  *****  *****


平和ピンフって難しいですよね」


 後輩君が言った。私は七対子チートイツになりつつある捨て牌に舌打ちしながら「何が?」と返事をする。


「だっていろいろ厳しいじゃないですか。リャンメン待ちじゃないとダメとか、鳴いたらダメとか。こんなに頑張って揃えてもたったの一飜イーハンですよね。なんか理不尽」

「平和は揃えるものじゃなくて揃うものだからね。理想的に手牌が揃っていって、理想的にテンパイすると勝手に付いてくるものだと思って」

「そうなんですね。僕も『メンタンピン!』って格好良く言いたいなあ。ああ、また平和できそうもないままテンパイしちゃった」

「おい」

「リーチかけます。上がれるかなぁ」


 平和にならなかったということは、狭い待ちだろう。でも私はテンパイできるまであと何年かかりそうなツモ運だったので、あっさりとオリて、まずは現物を切った。


「あ、ツモりました。リーチ一発ツモドラ1です。

「ああ、そうですか」


 カンチャン待ちを一発でツモるんじゃない。


 次の局、また後輩は「平和にならないなぁ」と言っていた。言いながら、またリーチをかけてきた。


 私は相変わらず勝負できる状態じゃなかったのでオリた。そして二巡後に後輩は「ツモりました」と言った。


 だからペンチャン待ちを簡単にツモるんじゃない。あと裏ドラ乗せるな。


 その次の局。後輩はまたも「平和にならない…」と嘆いていた。嘆いているくせにリーチをかけてきた。


 私は珍しく勝負できる状況だった。後輩のリーチ後、最初のツモ巡でテンパイしたのだ。私は迷わずリーチをかけ、場に二枚出ている限りなく安牌アンパイに近い、オタ風の西を切った。


「あ、先輩、それロンです」


 ナチュラルに地獄待ちしてんじゃねえ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る