第6話 『マグナアルカナ』を楽しみます

マグナアルカナ


 数年前に発売されたゲームながら、今も人気があるMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)である。


 キャラクターは冒険者として大型モンスター討伐や素材採取をギルドで受注したり、住民の依頼を受けるなどイベントが多数あり、また定期的にアップデートされるのでユーザー人口は多かった。


 レベルによって受けれるクエストが変わるため、ユーザーは積極的にレベルアップに励むのだった。


◇□◇□◇□


『それでどこまでクエスト受けられそうですか? どこで合流します? クエスト受注先ですか?』


 明るい康子の声がボイスチャット越しに聞こえてきた。健亮は康子がいる街を確認すると移動しながら話す。


「今、ちょうど康子さんが居る街にいるよ」


『え? どこですか? そっちに行きまよ』


「じゃあ、中央噴水前に集合って事で」


 待ち合わせ場所である噴水前までやって来ると、康子が使っているキャラクターが居るのが見えた。そちらに近付きながら健亮が話しかける。


「お待たせ」


『え? これが健亮さん? あの厳ついキャラはどうしたんですか?』


「ふふふ。せっかく課金したからキャラクターを作り直したんだよ。どうだ可愛いだろう?」


 目の前にやって来たキャラクターに康子が驚いていた。そんな様子に健亮は機嫌よくキャラクターにポーズを取らせていく。


 健亮が今まで使っていたキャラクターは防御力重視型の戦士であり、職業に似合った筋肉隆々な大男であった。


 今回、作ったキャラクターはそんなキャラとは真逆であり、細身の少女で長い銀髪、エメラルドグリーンの瞳に筋の通った鼻、はにかんだ笑顔を浮かべる様子は正に美少女と言っても過言ではなかった。


 装備は華麗な装飾が施されたレイピアを差しており、防具は軽装鎧であるが貴重な素材で作られており、それとアクセサリーなで防御力アップやスキル発動をさせていた。


 装備を見せびらかすようにポーズを次々と決める様子に康子はため息を吐く。


『まあ……なんというか健亮さんの好みは把握しました。こんな感じの可愛らしい女の子が好きなんですね。それで職業はなんですか? タンク職じゃないですよね? それと名前は前と一緒のアレックスですか?』


「いや、職業は魔法戦士で名前はユーフェだ。前のキャラクターは防御中心の戦士だったからな。今回は攻撃力にスキルを振ってみたんだよ。物理攻撃だけだと汎用性がないかもと思って、魔法が使えるようにしたんだ。あと細身の可愛い子が強いなんてギャップがあっていいと思わないか? そんな話は後でも出来るだろ。早くギルドに行って討伐クエストを受けようぜ」


「……。なんか健亮さんらしいけど、その姿を見ながらボイスチャットしてると違和感しかないので、テキストチャットに切り替えますね」


「なんだよそれ」


 呆れたような声で康子がテキストチャットに変更した。しばらくチャットした後、ギルドに向かった2人はクエストを受注するとパーティーを組んで近くの平原に向かった。


◇□◇□◇□


『なんか健亮さんって感じな戦い方でしたね』


「なんでだよ! いいじゃん。勝てばいいんだから」


『まさかスキル編成であんな戦い方をするとは思いませんでしたよ』


「色々と試したかったからな。いい感じだったろ?」


 クエストを終わらせてギルドに戻ってきた2人は再びボイスチャットで会話をしていた。


 受注した討伐クエストはビックボーンと呼ばれる巨大な牛を5匹討伐であり、初級クエストの中では強い部類であった。


『ユーフェちゃんの攻撃力が異常過ぎますよ。なんですかあれ? レイピアなのに斬撃の嵐って。タンク職の時も防御重視と言いながら全部カウンターでモンスターを倒してましたけど、今回の戦い方も独特ですね』


「スキルで斬撃が取れたからレイピアでも出来るか試してみたら出来たんだよ。ちなみに鈍器でも斬撃が出せたぞ」


「もう意味が分かりません」


「はっはっは。マグナアルカナの世界は奥が深いのだよ」


 健亮は久しぶりにパーティーを組んで戦闘が出来て楽しかったのか、上機嫌に会話を続けるのだった。

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