第5話 久しぶりに『マグナアルカナ』へログインします
「それにしても厳重だったなー」
健亮はタクシーに乗り込むまでの事を振り返っていた。用意されたタクシーに乗り込むまで人事部4名が付き添い、その途中で同僚たちが自分に話しかけようとしたが人事部によって阻止されていた。
同僚達は部長から話を聞いたのか、一様に焦った表情を浮かべており、なんとか健亮と話そうとしていたが人事部によって止められていた。
「まあ、康子さんからの連絡以外は出なくていいんだよな」
帰宅途中のタクシーから健亮の携帯電話は鳴り続けており、登録されている名前を見ると自分に仕事を頼んでいた者達からであった。
中にはショートメールやSNSのダイレクトメール機能で送ってくる者もおり、なりふり構わず連絡が取りたいようであった。
「とりあえずは今日は電源切っておこう」
連絡があった名前と回数をメモりながら家に戻った健亮は、鳴り止まない携帯の電源を切るとベッドに放り投げる。
そして途中に寄ったコンビニで買った夕食とビールを並べるとゲーム機の電源を入れた。
「久しぶりに電源を入れたからアップデートがあるなー。その間に晩飯を食べてしまおう」
アップデート完了残り時間を見ながらPCを立ち上げる。そして『マグナアルカナ』の最新情報を紹介している動画を見つつ健亮は弁当をかきこむ。
そしてビール片手に動画を眺めながら情報を集め続けるのだった。
「……なるほどな。従来のシステムは大きく変わっていないが、色々と実装された感じか。おぉ……。あのモンスターも復活したのか。え? この装飾品が出やすくなっているだって? なんてこった。あんなに周回したのに……」
一通り『マグナアルカナ』の情報を収集した健亮が、残っていたビールを一気にあおると次のビールに手を伸ばす。
ゲームのアップデートはもう少し時間が掛かるようで、コンビニで購入したプリペイドカードを眺めながら健亮はニヤニヤとしていた。
「久しぶりにゲームが出来るなー。そう考えるとなんて素晴らしい環境だ。……だけど仕事をしなくてもいいのか? 田中主任と松本係長の仕事は緊急案件だと聞いてたけど問題ないのか? まあ、完成レベルで資料は作っていたし、それも部長に引き継ぎ資料で渡しているから大丈夫だと思うけど……」
するめを齧りながら健亮は途中まで対応をしていた仕事を振り返っていたが、パソコンを回収されているので何も出来ないと開き直り、ネットでさらなる『マグナアルカナ』の情報を集めるのだった。
◇□◇□◇□
『健亮さん!』
「うぉ! そんな大声を出したらビックルするだろ康子さん」
1週間ほど携帯電話の電源を入れるのも忘れて『マグナアルカナ』を楽しんでいた健亮だったが、携帯電話の電源を入れた瞬間に待っていましたとのタイミングで河合康子から連絡が来た。
『私からの連絡には出てくださいと言ったじゃないですか! 固定電話を持ってないんだから、出てくれないのなら家まで押しかけますよ!』
「お、おう。ごめんなさい。電源は常にオンにしておきますので許してください」
『あと『マグナアルカナ』にログインしてい他のにチャットすら飛んで来なかったんですけど? 『土曜日に一緒にやりましょうね』と言いましたよね?』
「そっちもごめんなさい。久しぶりにやったら操作をほとんど忘れててさ。勘を取り戻すのに時間が掛かったんだよ」
『もう。こっちは万全の態勢で土曜日に待っていたんですよ。バツとしてSNSのアカウント教えてください』
「はい。仰せのままに」
康子の怒っている顔が易々と想像できる健亮は、顔は見えないが康子に向かって平謝りをするのだった。
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