杏奈の日記

@annamaria

第1話 居候

私はいい母親になれるだろうか?

これは深刻な、自分への問いだ。


 今大学1年の現在杏奈に母親になる予定はない。でも、この問いはいつからだかわからない位、遥か前から杏奈の中にこびりついて杏奈を苦しめる。


 あ、おばあちゃんに今日遅くなるって言わなくちゃいけないんだった。公衆電話はこの当時どこにでも当たり前にある存在で、携帯電話はまだまだみんなの手には渡っていなかった。


「もしもし、おばあちゃん?今日バイトだから夕飯外で食べてくるね。10時までに…わかった、わかった、帰ります」


 心配性の祖母と几帳面な祖父と暮らし始めたのは、高校入学の時だから今年で4年だ。父と育ての母は大学の入学時には海外の留学先から帰ってきたが、杏奈は一緒に住むという選択肢を尋ねられたことはない。


 本音を言えばどこだって杏奈にしてみたら変わりばえはしない。

 どこでも私は居候。


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