【甦生契約条件⑴】
死神は私の手を持ち、何やら呪文のようなものを唱えた。と、その瞬間、あたりがどんどん暗くなっていった。
目の前に何があるのかわからなくなるくらいまで暗くなった時、死神は立ち上がり[さて。]と呟いた。
[ここですか?]
私がそう聞くと
[えぇ。少し待ってくださいね。今電気を付けますから。]
と言って、フィンガースナップをした。パチンという音と共に、ボゥとほのかな明かりが灯った。見渡す限り部屋は広く、黒レンガ造で、天井が高かった。殺風景な部屋がどことなく中世西洋の監獄を連想させた。
[さて、契約をしましょうか。]
死神はそう言って振り返った。死神は禍々しい骸骨の姿になっていて、異様に目だけが生々しかった。私は悲鳴を上げそうになったが、慌ててそれを呑み込んだ。よく見れば、衣装まで黒いローブに変わっているようだ。死神は部屋の奥に置いてある立派な椅子に腰掛け前にあるこれまた立派な机の引き出しから紙と黒色の蝋燭を出した。
[では。あなた、こちらへ。]
死神はそう言って机の前を指した。私は指示に従った。
[この紙に契約内容が書かれているので、よく読んでからサイン欄にサインしてください。]
そう言って差し出された紙にはよく分からない字の羅列があった。それを読もうとしたが、どうも読めない。[あの]と顔をあげると何かの分厚い洋書を読んでいた死神は顔を上げ
[あぁ、そうでした。死んでいるけどここの住民でないんでしたね。]
と意味深なことを呟いてから
[訳しますね。]
と続けた。死神はまた呪文のようなものを呟き紙に手をかざした。と、その瞬間訳の分からなかった文字の羅列は読めるものに変換された。
『––––甦生契約条件––––
⒈目的を果たしたならば直ちに報告しにくること。
⒉生きている人間に生き返ったことを気づかれてはならない。
⒊地上で罪を犯してはならない。
⒋我々は地上にことに関しては一切関与しない。
⒌もし破ったとするならば直ちに罰を与える。
以上のことを約束するならばここに署名を__________』
罰・・・とは何なのだろうか。処刑か、いやもう死んでいる。そう考えている私に
[あ、ペン忘れていましたね。どうぞ。]
と言って死神は万年筆を紙の上に置いた。
[ありがとうございます。]
私はそう言って会釈した。
[あの。罰って具体的にどうするんですか?]
質問するのは迷ったが、処刑だったら嫌だなと思った。死神は
[そうですね。何を破ったかによります。]
と言って少し考えてから
[ついこの間の例ですが、地上で罪を犯した人は餓鬼道に落とされました。契約条件でいうと三番ですね。]
死神はそう続け、三番を指した。目の前で骨が動いているのに少し驚きながらも[なるほど。]と呟いた。
サインをして生き返れるなら契約条件も呑める。私は決心し万年筆をとり、紙に名前を書いた。顔をあげると、死神は満足そうに頷いた。
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