第七話
エスメラルダ魔法学院の敷地内にある屋外魔法練習場。は、現在、平らに整備され終えた。
ある人物とある人物が、やらかした、からであった。
ただし、
ある人物が、やらかした出来事は。一つ間違えれば大惨事になってしまう現象だった。
整備用の土を運んで、整備した執事の実力が主を上回っていたから――難を逃れた、だけの話。
少女、ジュリエット・キャピュレットは――――。
ジュリエットは、ミシェーラに諭されたあと。本日の授業内容である、土系統の基礎訓練を始めた。
先に基礎訓練を開始していた他の生徒たちは、改めて魔力制御の難しさを思い知ることとなった。
教師であるミシェーラほど――土を滑らかに隆起運動できなかった。簡単にしていたことが、できなかった。
難しいことを容易く行ってしまう、一流とは。
授業前に生徒たちに、自ら手本を見せ。魔力制御に関して重要性をミシェーラが語った内容が――重い。
が、
生徒たちを魔法使いにするには、このぐらいの重しを引きずって、でも、前進してもらう必要がある。
魔法使い、が――常に魔法使い、と、呼ばれていくために。
初め、ぎこちなかった魔力制御だった生徒たち、だが。徐々に、魔力を繊細に伝えることが、できる生徒が――チラ、ホラ、出始めた。
生徒たちの上達ぶりに、数秒前まで授業妨害していた執事服を着たオトコ。ボサ、ボサのくせっ毛をかき上げる、と。悪ふざけしていたときは、別人の真剣な表情。
「この
オトコの隣で地面に向かって杖先を一生懸命に、振っている少女に語った。が、しかし少女には、口にした言葉は聞こえていなかった。
力いっぱい、杖先を地面に向かって魔力を伝えるが、頑固として地面は動かなった。ジュリエットは、むしゃくしゃに杖を振りまくった。
「もう、やめた方が。よろしいのでは、ジュリエット――無駄なことを」
タクト形状の杖を振ることを止め下げる。完全に皮肉を言い放っている人物に、茶色い、つぶら可愛らしい瞳が
あと、より――超不機嫌全開。
原因は目の前に立っている。発育の良い胸を抱えるように、腕組みした少女。
「お嬢さま、」
「エーァデ・ヴァスマイヤ、よ。クラスメイトの」
苛立ちから弾かれる声。
エーァデ・ヴァスマイヤは、少女と呼ぶには似つかない悩ましい容姿の持ち主であった。ジュリエットよりも、頭一つ身長が高く。深い顔立ちが、大人びた色香を放っていた。そのうえ褐色肌が健康な肉体を演出し、服の上からでもハッキリと主張するバストは、いつかボタンを外してしまうのでは? と無意識に男たちに期待させた。髪は、赤色よりも紅色のストレートロング。
あと、数年すれば――魔性の女と呼ばれるだろう。
と、想った瞬間に思い出したかのように――とっさ無慮は、ジュリエットとエーァデを見比べた。
やはり心配していたことが、主に。
あきらかに第二次性徴の差、が違い過ぎた。二人が同年代なのか? 疑ってしまう、ほど、に。
主は年齢よりも、より幼いのであった―――お胸、が。
そして心当たり、一つあり。
「エーァデさま。お尋ねしたいことが、あるのですが」
「な、なに。かし、ら!?」
見た目は大人びていると言えども、中身は十六歳の少女である。高身長も相まって、見下ろされている独特の威圧感から急な質問に、体が勝手に後ずさりしてしまった。
ユーモアを通り越して、変わっている――この執事の今までの行動を終始、見知ってしまっているからだ。予測不能な、一つ、一つ、この執事がすることに対し、ての恐怖。
本来、無慮は、女性にモテる。
中性的な綺麗な顔立ちに、光すら屈服させてしまう漆黒の美しい髪と瞳が妖艶を演出し、背丈も十分にあるので自然と目を引く。
社交界の場に姿を現したら、ご婦人たちに取り囲まれてること、間違いなし人物――像。
――――だけ。
――――――の。
――――――――オトコ。
――――――――――だった。
「豆や野菜などをよく
目をしばたいた、エーァデは。尋ねられた質問内容の意図は理解できない、が、質問内容には答えることは、出来た。
「摂ってます、わ。美容と健康のために」
その回答を待ってました! と、言わんばかりのオーバーリアクションをしながら、ジュリエットの胸を指差し、
「ほら、お嬢さま! お食事のときに、“嫌いって”、いいながら取り除いたり、食べなかったり、してるからですって――ちっぱい原因。お肉ばかり食べてないで、ちゃんと、お胸を成長させる成分が多く含まれている、豆やお野菜も食べて――――目指せ、脱、ちっぱい! です!!」
偏食家ならぬ肉食化、
と、
銀色のゆるいウェーブの髪が、ゆるりと浮かぶ。それは、物質内にたまった状態の電気が、プラスとマイナスの電気量のバランスが崩れることによる放電現象で、逆立っているのではなく。
自律神経の一つである交感神経が外部から刺激された、怒りからであった。
そして、
華奢な体からは、輝く黄金の粒子が
体勢を維持したまま頭部だけを器用に横に振り、両眼球をギョロと持ち上げ、
「チッパイ。ワタシノシラナイ、タンゴ、ネ」
無慮は自身の胸の前で、両手で膨らみを象徴した、あと。すぐに、素早く上下運動を繰り返して、真っ平を表現して見せた。
ジュリエットが
その状態で杖の先端を無慮に向け、
「シンデ、コイ」
合言葉だった。
球体のなかに詰まっている黄金の粒子、に。さらにもう一つ、白銀の粒子が出現する。と、黄金の粒子と白銀の粒子は恋い焦がれた恋人のように、急接近し、触れ始めると。
次々――輝きだした!
「二つ――創り出せる。とは」
無慮は地面を力強く叩くように踏みつけた。
低い音が地面の下から聞こえ、徐々に音と振動が増していく。屋外魔法練習場に居る生徒たちは、今の状況が理解できないことの不安と恐怖から血の気が引き、蒼白に。
ミシェーラは危険だと判断し、“逃げなさい”、と叫ぼうとした。
――
大気が圧縮され、急激に地面が揺らぐ。耐えきれずに生徒たちは、一斉にへたり込み。ミシェーラも、片膝をついた。
震源地は、無慮が踏みつけた箇所。
「あの
足を離す。
熱し溶けた生き物が這い、黄金と白銀が混じり合い光り輝く球体の真下に移動する。
と、
産まれた、球体より一回り大きな溶岩蛇。
そのまま産まれた勢いで垂直跳びし、最大開口角度で容易く球体を丸呑みし、上空に向かって――急上昇。
雲が泳いでいる高さまで到達――――光った。
そして、
気持ちよく泳いでいた雲たちを蹴散らしたのであった。
気を失っている少女をお姫様抱っこ、しながら。
無慮が頭のなかで言葉にしていた、こと、が。何げなく、一音、一音、形を作っていた唇が。
“天才です――お嬢さま”
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