女神vsスルーの達人
秋谷イル
女神vsスルーの達人
プロローグ
こんにちは! わたしは女神のイセカ! 天界生まれ天界育ち! 見た目は十代後半の青髪美少女! 露出の高いあざとい衣装を着せられているのは
そんなわたしの使命は人間、特に日本人を異世界に転生させること。だからフルネームもイセカ・イオクール。あの親父いつかぶん殴ってやる。
どうして天界では人間界みたいに改名が許されていないのかしら? ステファニーかミシェルあたりに改めたいわ。
え? なんで人間を異世界に送るのかって? あの馬鹿親父の趣味よ。あの人、アニメで「〇のすば」を見てわたしを生み出したんだから。おかげでデフォルトでノーパンよノーパン! わたしのこのデザイン、もしもイラストが付いたら絶対パクリって言われるからね!
ゴミスキルを人間に与えてろくでもない異世界に送り込み、それを眺めて楽しむのが最近のパパの趣味。
で、なんで日本人なのかというと、こいつらがやたら異世界転生・転移慣れしてるから。どいつもこいつも、ちっとも驚かないのよね。みんな異世界転生物のラノベやアニメに毒されすぎでしょ? いきなり慣れ親しんだ世界から別の世界に飛ばされるのよ? ちったあ焦りなさいっての可愛げが無い。
あと、日本人て発想力のバケモノだらけなのか、どんなゴミスキルを与えてもなんやかんや活用法を見出してどうにかしちゃうのよね。そういうところもパパのお気に入り。
さ〜て、今日は誰を異世界送りにするのかな? パパが自分でやればいいと思うんだけど、案内役は女神じゃなきゃヤダーとか駄々こねるのよね。まあ、そのおかげでわたしは生まれたんだけど。本当は部屋でゴロゴロしながら少年ジャ〇プでも読んでいたいの。最近の推しはア〇デラよ。
というわけで、ふよふよ飛んでガチャの前に降り立つ。毎日1000ずつ配布されるポイントをこいつに投入してガチャを回すと候補者が決まる仕組み。なんでこんなシステムなのかというと、もちろんお父様がソシャゲにもハマっているから。お布施でいくらでも課金できるからって色んなゲームでランキング上位の廃プレイヤーになってるらしいわ、あの
でも分身を大量に作って複アカでギルド対戦してるのは、あれ規約違反なんじゃないかしら?
なにはともあれ、今回は何ポイント注ぎ込もうかな? 唇に指先を当てて考え込む。候補者は基本的に一日一人しか選べないルール。だから、このガチャに十連でSSR確定なんて仕組みは無い。代わりに投入ポイントが多いほどレアリティの高い人間が選ばれやすくなる。だから毎日最低の100ポイントだけ投入して、ある程度貯まったらドカンと突っ込むのが勝利の秘訣。
実を言うと今日のログボで念願の30000ポイントを達成したんだよね。お父様曰く、このガチャの天井らしい。人間を異世界送りにすることは正直興味無いんだけど、このガチャってやつは射幸心を煽られてクセになる。
やっちゃう? やっちゃう? ついにやっちゃう? 上限いっぱいポイント投入、やっちゃう?
やっちゃおう! ヒャッハー! SSRを超えるアルティメットレアこーい! まだ一度も拝んだことがないのよ、ていっ!
ポチッとボタンを押す。これ前から思ってたけど全然「ガチャガチャ」ではないよね? なんで回す方式にしなかったのかな? 何はともあれ演出が始まった。
キ、キター! 画面に虹がかかった! この時点でSSR以上確定! でもまだよ! ここから! 天井投入でSSR止まりなんて許さないんだから!
あっ!? 結果が確定したと思ったら追加で初めて見る演出が!? 嘘……来るの? ついに来るの?
き……キッタああああああああああああああああああああああ! UR!! 初URよ! 生まれてすぐにこのガチャを回し始めてから早数年、ようやくお目にかかれたわ! さあ、あなたのお名前と特徴は!?
【田中
え? 最高レアリティの割に随分平凡な名前ね? 日本人、男性、十七歳。このへんも全く新鮮味が無いわ。
あ、でも何かしら並外れた才能があるはずよ。だってURだもん。アルティメットレアよ。能力まで平凡なわけが……。
なにこのステータス? 凄く普通! 何もかも普通! 漫画じみた高いIQも身体能力も超能力も無いわ! どういうこと!? なんでこんなやつがURに……って、備考欄に何か書かれてる。
【スルー
……は? どういう意味? するーちからって何?
よくわかんないけど、やっぱり何かしらの特殊能力的なものが最初からあるのね。なら、どんなゴミスキルを与えてもやっぱりなんとなくなんとかしちゃうでしょ。
あー、でも、やっぱり期待外れ。顔写真を見るに容姿はイケメンみたいだけど、優男風だし、わたしはどちらかと言えばア〇デラのアン〇ィみたいなコワモテマッチョマンが好きなのよね。
もういい、さっさと転生させて次に行こう。まあ、またしばらくはポイント貯めなくちゃだけど。
──しかし、この後わたしは田中 祐之介という男を引き当ててしまったことを深く後悔するのだった。
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