第137話 女将の最後

 晃達は急いで煙の立ち込めるエリアに向かった。逃げ惑う人々が邪魔なので、晃達は屋根伝いに走っていた。かなり異様な光景ではあるが、そんな事を言っていられなかった。


 ただただアルテミスの屋敷を出ようとした際に大輔が倒れた。どうも晃の蘇生でかなりの力を使ったようであった。今までは死者蘇生をしてもどうということはなかったのだが、大輔は魔力が全て持っていかれたと唸るっていた。そして魔力切れによりやがて気絶したと判断していた。


 魔力切れ起こすとほぼ数日魔力の枯渇した状態になり、日常生活にも支障が出る。2、3日は起き上がれない可能性が出てくるというのだ。魔力の少ない者はそこまではいかないが、魔力の多い者殆どそういう傾向があると言う。晃は大輔が倒れた時に一瞬頭が痛くなった。また、妙にガブリエルが馴れ馴れしくなって戸惑った。大輔が倒れる前後から何やら周りの様子がおかしかったた。イザベラ達に大輔を託し晃達は駆けて行く。


 いつの間にやらバックヤード団と六連星の主だった男性陣が付き従う。目的地が目的しな為、基本的に女性が入れないので、女性陣は殆どどついてきてはいないのだ。だがレヴィ達には門の外で、特に遊女達を保護するようにお願いしてある。どうも逃げた遊女達を捕まえ、逃げた者達をあらくれの者達に連れ去られ犯される事が想定させると言う。それを警戒しての事である。


 やがて火元が見えてきたが、やはり牛遊郭のある歓楽街から火の手が上がっている。そして大勢のものが門から慌てて逃げてゆく。


 基本的に戦闘を六連星が受け持ち、消化をバックヤード団が担う。そう彼らはケイトの加護により水魔法が得意なのだ。そしてどこから連れてきたのか分からないが、多くの魔物が闊歩していた。そして多くの死体も見えた。


 遊女の死体や客と思われる者の死体の他に禿と思われる子供の死体もあった。


 しかし死体に構っている余裕はなかった。魔物が歓楽街を襲っているのだ。女を見つけると服を剥ぎ取り犯している。晃達はそういう魔物の背後に回り込み、斬り倒していく。助けた女性をケアしたいが、そんな余裕は全くない。そのまま何も言わず次の獲物を探しに行く。怪我をしていようが、何をしようが構う余裕がなかった。引き止められそうになったりもするが、心を鬼にしてその場を離れる。


 何匹倒しただろうか?やがて大概の魔物を駆除したが、客として来ていた冒険者や町や歓楽街の警護の者や、遊郭のボディーガード、客として来ている貴族達のボディーガード、腕っぷしに自身の有る者達がある一匹の魔物と戦っていた。


 冒険者達が薙ぎ払われ、蹴られたりして次々と吹き飛んで行く。死んではいないようだが、腕が折れて曲がっている者、足をやられている者、中には手足を失ったも者などもいる。


 そうしているとうつ伏せになり吐いていた者がその魔物、巨大な猿のようなトロールに似た4本腕の化け物に襲われて命を散らそうとしていた。

 晃は咄嗟に転移し、その者を蹴飛ばし、脇においやりる。

 その魔物は強かったが、対峙する晃は互角に戦っていた。冒険者達が仲間がやられる!晃にとって今戦っている者達は仲間認定である。


 どれぐらい戦ったっだろうか?ヒットアンドアウェイを繰り返してダメージを重ねていく。既に4本の腕のうち2本は切り落とした。その魔物の本来の武器は分からないが、今使っているのは冒険者から奪った武器だ。冒険者の身の丈殆どある大剣を軽々と扱っている。そういう膂力があるのだ。そして片手には槍である。周りが固唾を呑んで見守っている。他の冒険者達ては歯が立たなかったが、晃は互角以上に戦っている。勿論晃も無傷というわけにはいかないが、ダメージとしては向こうの方が大きい。そして戦闘開始から約4分半、魔物は突然爆発し霧散していった。そう、晃の極大魔法が発動したのである。晃は強敵と睨んでいた。その為に戦い始めたすぐに発動していたのである。ヒットアンドウェイをしていたのは無理に倒す必要はなく、ダメージを重ね倒せそうなら倒す程度の感覚で戦いをしていたのである。魔物は最後だったようで、周りから拍手喝采が起こる。今いるのはシリカがいたその遊郭の前である。


 店は燃えていた。周りを囲むギャラリーの中に見掛けた事のある遊女や、禿、使用人達がいた。そしてその者達が居る中心に、一人の遊女に抱きかかえられていた女将がいた。虫の息である。よくよく見ると下半身がない。晃は慌てて駆けつける


 女将が最後の力を振り絞り晃に話をする


「ごめんね。あなたに嘘をついたの。2日後と言ったけど、1日後だったの。それにあなたの昨日の行動で予言が本物であるという事は重々分かっていて、敢て1日遅く言ったの。ゴホゴホ」


 女将は苦しそうに噎せた。そして更に


「彼女達をよろしくね。この書状に彼女達の身請け人としてあなたの名前を記してあるの。門番の所にも同じ書面が置いてあるわ。あの後門番た達と話をして、晃という冒険者がこの書状を持って現れたら通してあげてとね。私は罪が深いわ。許されるかしら?」


 晃は手を取り頷いていた。


「はい大丈夫です。大丈夫ですが、皆さんを体を売らずとも食べていけるように生きる術を与え、自由に生きられるようにしようと思います」


 晃が女将の最後の願いを聞き入れたので、女将は安しニコット微笑みそして息を引き取った。建物がますます燃え広がってきて、今いる場所も危なくなってきた。ざっくりと晃宛の手紙を見る。死体の処理について書いてあった。自分は遊郭共に燃やして欲しいいと。火災の為、中に入れないだろうから、建物の中に死体を投げ入れて欲しいと。晃は皆にその旨を伝え、皆が了承した。その為遺言に従い建物の中に女将の死体を投げ入れた。手紙にこうもあった。あなたの仲間にどうやら死者を蘇生させる事ができる者がいるようだけども、私が生き返るた為の猶予期間内に彼は目覚めないわ。だから建物と共に私を逝かせて頂戴と。この続きは門番に見せ、門を出た後で読みなさいとあった。晃はその先を遺言通り読まなかった。そして皆を率い建物を離れ門の所に向かうのであった。

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