第133話 相談
晃達がベッドに入った頃、ソレイユは慌ただしく動き回っていた。団員達に報告していたのだ。
遊郭を出た所で晃対して毒づいていて、罵声を浴びせている者から殺気がしたのだと。気になり後をつけたと言う。そうすると女神アルテミスの屋敷に入っていった。女神アルテミスが直接関係してるとは思えないが、そこの屋敷に住まう者が邪な事を考えていると警戒するようにと言っていた。
そしてイザベラがソレイユを伴いローラン達と話をする。しかし、肝心な時に副団長はいなかった。野暮用でどこかに泊まりに行ったらしい。野暮用とはメアリーと宜しくしくやっているのだが。つまり彼女も捕まらない。
事情を説明し、万が一の夜襲に備えて警戒するようにした。確かに屋敷の周りに夜だというのにチョロチョロ動き回る人の気配がするからである。
警戒しているぞという風に玄関先に篝火を立て、歩哨を立てた。ダグラスのパーティーのメンバー達がいたので分担してお願いしていた。そのおかげか特に襲撃もなく朝を迎えていた。
晃達の方はやはり桜がひたすら謝辞を述べ、桜は晃の背中に抱きつきたいと言うので、晃はターニャの方を向いて寝ていた。晃越しにターニャと桜の話が進んでいたが、晃は二人の会話を子守歌代わりに早々に寝てしまっていたりする。
昨日分ったのは桜が一般常識をあまり持ち合わせていない事であった。そのため朝早くから女性陣達が、晃が寝ている間に、晃に対しての接し方についてや常識の話をしていた。晃にはなるべく聞かせたくないそういう話もあったからである。逆に桜の持っている色々な男性との接し方の知識を伝授されていた。
一般的に男性はこういう事をされると弱いですよーだとか、遊女として身につけている常識と一般人の常識がかけ離れているのだが、ギブアンドテイクになっていた。
そして晃は朝食の後、桜を連れて出かける事になった。まずは女神アルテミスにお礼を言いに行く事にしていた。
アルテミスの屋敷に入る時に晃は不快な思いをしていた。嫌な視線を感じるのだ。体にねっのりとした嫉妬の入り混じった視線なのだが、不快な理由が分からずに晃は戸惑っていた。
そう晃に敵意を剥き出しにしていた者がこの屋敷に住んでいるからである。
屋敷の門を叩き、出てきたメイドさんに女神フレイアに面会したいと話をするが断られた。
「えっと、多分冒険者の晃がお礼を言いに来たといえば会ってくれると思います。一度確認して貰えませんか?」
メイドは訝しげな視線を向けていたがら、少々お待ちくださいとだけ告げて扉を閉める。暫くすると駆け足の音が聞こえて、勢いよくドアが開き女神フレイ女神アルテミスが蹴躓き、咄嗟に晃に抱きしめられていた。
「あら、私に会いに来てくれるなんて嬉しいわ。ついに私のことを好きになってくれたのかしら?ふふふ。さて、この子はどなたかしら?」
訝しげな目を向けていたが
「ごきげんようアルテミス様。今日もお美しくて眩しいですね」
晃は半ば本気のお世辞を言ってみたりする。下手なのだが・・・アルテミスは本気で驚いていた。晃からそんな言葉が出るとは意外だったのだ。
「えっと、昨日のお礼をこの桜と言いに来たんです」
アルテミスが遮り
「こんなところでもなんですから、こちらにいらして」
そしてメイドに
「私の一番大事なお客様よ。一番上等なお茶とお茶菓子を用意してきてね。晃様はお食事はもうお済みでしたか?」
「あ、はいもう食べてきました」
「よかったわ。私も済ませてましたから。ではお茶だけにしましょうか」
そう言ってアルテミスの執務室に向かう。そこにあるソファーに座り話を始める。桜が話を切り出す
「あの、アルテミス様ありがとうございました。私感謝してるんです」
当然理由がわからないのでアルテミスは
「あらあら。あなたを私は見た事がないですけども、何か感謝されるような事を私はしたのかしら?」
晃が間髪入れずに
「はい、昨日アルテミス様をお救いした事のお礼として、ガブリエルさんが僕を遊郭に連れて行ったじゃないですか!そこでガブリエルさんが話をよく聞いていなかったからか、僕を身請け人として、この桜の身請け金を払っちゃったんです。知らずにしちゃったんですよ。彼女はちょうど昨日が遊女となった初日で、初めての客が僕だったみたいなんです。そのまま身請けだけして帰ってきたのですが、結果彼女を遊女から救ったのがアルテミス様なんですよ!だからこうやってお礼を申し上げに来たんです」
そうするとアルテミスは
「あらあら何か凄い事になっていたのね。そういえば昨日久し振りに身請けがあったと屋敷の誰かが言ってたけども、あなた達だったのね。ふふふ。じゃあ晃様は私にどんな感謝をしてくれるのかしら?」
「そうですね・・」
晃らが戸惑っていると
「じゃあこの場で私を抱いていただけるかしら?ふふふ」晃は真っ赤になりながら抱きしめ
「アルテミス様そのからかわないでください。これが精一杯なんです。僕なんかがアルテミス様なんかにおいそれと触れちゃだめじゃないですか?僕なんかじゃあアルテミス様に釣り合わないですよ。僕なんかじゃアルテミス様の隣に立つように資格はないと思うんです。でも大人の女性なんだなーと魅了過ぎて眩しいです」
アルテミスは
「ふふふ。今はハグだけで我慢してあげるわ。晃様は2つのそれも一つは有名な団を率いるに団長じゃないの。私の隣に立つ資格は充分にあるのよ。勿論ベッドを共にする資格十分にね。あらごめんあそばせ。かわいいからついついからかいたくなるの。それはともかく今後はいつでも遊びに来てね。メイド達には伝えておくわ。あなたがたが来た時にはいつでも私の部屋にすぐ通すようにとね。愛おしいお方」
晃はたじたじで、そんな様子をアルテミスは見ていて嬉しそうだった。
お茶菓子等を頂き、この後ギルドで桜の登録が必要で色々することがあるという事で、今日は失礼しまた。改めて遊びに来させて頂きますとなった。
アルテミスは事を急ぐとろくなことがないなというのは分かっているので、今日はこれぐらいにしてあ晃を送り出す。
送り出す時にアルテミスは晃の頬にキスをし、
「いってらっしゃい。気を付けてね勇者様」
とにっこり微笑みながら送り出す。アルテミスが一つ一つ順番に晃の好感度を上げる作戦に出ていた。アルテミスも気が付いていた。晃あまりに事をしてグイグイ行くと引いてしまうタイプだというのが分かったので、ここはゆっくりじっくりねっとりと絡みつくように己の魅力をさりげなくアピールし、己のことを常に考えてしまうぐらいのさりげなさで行くことにした。
その効果はかなりあったようで、晃は隣に歩く桜を不機嫌にさせるには十分なだけの崩れた顔をしていた。基本的にアルテミスの見た目は晃をドキドキさせ、夢中にさせるには十分な大人の魅力を醸し出す妖艶な姿なのだ。
屋敷を出て行くとまたあの視線を感じる。振り向くが特に何もないのだ。おかしいなと思いつつもあきらはギルドに向かい、ターニャに桜の冒険者登録をしてもらう。念の為ダンジョンに入れることを確認する。その後ダンジョンに入るための装備を見繕うことになる。
彼女の革の服を買いに行ったのだが、彼女は動きを阻害するものを嫌った。鎧などは体力的には着れるのだが、動き難いと嫌がっていて、防御力のある革の服を買うことになったのである。
そうして防具屋を出てポーション類などを補充しようと裏路地にある店に向かうのであった。
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