第132話  添い寝

 その後皆がシリカを受け入れた。そしてシリカから晃に一つお願いがあった。名前を付けて欲しいというのだ。親から付けられた名前は別にあるし、シリカというのは所謂源氏名であったらしい。その為新しい名前を欲しいという。元の名前を確認しようとしたが、女郎屋に売るような親が付けた名前はいらないと言うのだ。あまりの真剣さに晃は気圧されてしまった。おっとりとして穏やかなシリカであるが、そこだけは絶対に譲れないという強い意志を感じたのである。


 晃は暫く考えた。

 最初に着ていた着物の柄の事を思い出していた。そういえば桜に似た花だったなぁと思ったからである。そう桜にしたのだ。


「じゃあ、桜(サクラ)というのはどうかな?」


 シリカが頷き


「素敵な名前をありがとうございます。ではこれから私の事を皆様桜とお呼びください」


 桜は新たな名を気に入ったようである。


 夕食ができるまで暫く時間があった。ルーシーは食事の準備だが、その他のメンバーで桜を連れて服を買いに行くことにした。


 桜の顔の化粧はアキラがクリーンをもう一度掛けて全て落としてあげた。


 そう花魁の化粧だったからである。今はまるで別人であるが、そこには妖艶さが消えた清楚な少女がいた。晃はあまりの綺麗さに思わず胸が高鳴った。


 それはともかく履物も来客用のサンダルしかなかったので、履物も急ぎ買うことになった。夕食までそんなに時間があるわけではないので、今日のところは大雑把に服を選ぶ事になった。


 桜の身の上話を聞かされ、あまりにも理不尽な状況であった事と、見も知らぬ好きでもない男に純潔を奪われる。そんな悲しい状況であった事に皆涙していた。殆どの者が遊女というのを単に淫らで、自ら選んで娼婦になったも者と思い込んでいたからである。


 基本的に一般女性は娼婦を毛嫌いするのだ。


 今の桜の姿を見ればこれが遊女シリカであったという事は関係者や直接見知った者しかおるまいと。それぐらいの変わりようだ。


 勿論大まかな輪郭が変わるわけではないので、遠目からは何となくわかるが、近くに行くとけばけばしい化粧等がないので気が付かないのだ。


 小一時間殆どで10着の服と下着、靴などを買って行く。


 桜は何も持っていなかった。持っているのは着ていた着物ぐらいである。


 着せ替え人形状態にされ、あれをあれよという間に服を選んで行った。晃も一着桜に別で買ってあげてたりする。また女性陣にプレゼントする服を買って行くのだが、皆のサイズが頭にインプットされており、そつなく選んで行く。彼女達が下着を物色している間に会計を済ませ外で待つことにした。


 日用品等はまた後日買う事にし、今日は来客用に取り置きしている物を使うこ事にしてもらった。


 屋敷に戻るとローラン達がいたので、ローランに少し話を聞いた。遊女が着ていた着物が売れるような店があるのかと言うとニヤニヤしながらローランがあると言う。釘を刺された。当人を連れて行かないと駄目だぞと。その代わり身請けの時に着てい着物は一式全て揃っていれば高値で買う好事家がいるらしい。血の跡などはそのままにしておけと。


 そう桜がお金を持っておらず、晃が分け与えたとしても彼女は思うようにお金を使えないだろうと判断したので、自らが着ていた着物を売ってお金にする分には気兼ねなく使えるだろうと判断した。


 ローラン達と話し終え、離れの方に一旦戻るとソレイユが戻っていて、皆から桜の事を聞かされ、ざっくばらんに


「私はソレイユっていうの。よろしくね桜ちゃん」


 と挨拶していたりする。


 離れの玄関に入ると、居間の方からこれで今回の嫁会議を終了しますとおそらくエニーだと思う声がなんとなく聞こえてきた。晃がヨメ会議ってなんだろう?と思いつつ、居間の扉を開け、だいまーと声を掛けたが、何故か全員からお帰りなさいませご主人様と言われ、アキラは驚いていたのであった。


 食事の時に本邸の方にいる六連星本体のメンバーに桜を紹介した。殆どの者が事態を知っているのでかいつまんで説明し、明日は一旦パワーレベリングの為にダンジョンに入る旨を説明した。身を守る事ができる力が欲しいの、でルーシィ達に行ったのと同じようにパワーレベリングを行い、ステータスを上げる。


 勿論ステータスが上がったからといって狂人のごとく強くなるわけではないが、街中で盗賊やごろつきに襲われたとしても逃げたりゴロツキ程度であれば殴り倒すだけのステータスが身につく。そう先殆ど桜はイザベラと契約をしていたのである。


 桜の選んだ道は晃の側を離れたくないという選択だ。つまり冒険者になりたいと言う。

 ただイザベラの言うには桜には冒険者としてやっていく素質があるのだと言う。彼女の種族がそうであった。ワーキャット族と言う猫耳を含む獣人族の中でも特に身体能力や戦闘能力に秀でた種族だと言う。

 確かに晃はこの細い体に似合わない力があるなと、どこからこんな力が出てくるのかなーと抱きつかれて必死にしがみつかれた時に振りほどけなくて感じていたのであった。


 そして夕食をしているとターニャが戻ってきた。桜の姿を見て、まじまじと桜の事を見ていたが、事情を聞きにっこり微笑みながら


「少し驚きました。えー、ギルドでアシスタントをしていますターニャと言います。よろしくね桜さん!」


 これで晃の周りの女性が7人になったのであるが、晃は基本的に一人で寝かせてもらえない。数日に一度は一人で寝るのであるが、大抵の日は誰かと基本的に二人と添い寝である。しかし、美少女達と添い寝をするだけで一切手を出してこなかったのだ。


 ターニャが言う。


「まだあまり桜ちゃんと話をしていないから、私が桜ちゃんと一緒に晃くんと添い寝かな。添い寝番を決めようとしていたのだが、皆ターニャに先を越されてしまったのだ。皆悔しがっているが桜は


「はい、よろしくお願いしますと」


 と言ってしまったものだから訂正がきかなくなってしまった。晃はこの手の事に対して抗議するのをいつの日か止めていた。無駄だと学習しているのだ。


 抗議しても抗議しても追い払ってもい払ってもいつのまにか忍び込んでいるからであった。

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