第131話 報告
晃は全員が揃うのを待った。全員といっても服を取りに行ったエニーが戻るのを待っていただけだった。
薬を出して準備をしていた。レヴィに頼めばそれで済むのだが、晃はそれは酷な話だと思い、お願いするのをやめていた。レヴィが自分を好いていてくれている事が分かっていて、新たに連れてきた女の治療をとは言えなかった。
かなりの万能薬であるが、魔法には敵わない。エニーが着替えを持って来たので晃はお礼を言い、シリカの着物を脱がせていく。
皆何も言わないし、シリカも何も言わない。みんなあるところを注目していたが、変化がない。晃は手に薬を取り
「今から薬を塗るから少し染るよ。それと胸を触るよ。もうちょっとの辛抱だから我慢してくださいね」
優しく薬を塗り込む。一瞬シリカの表情が苦悶に歪み、苦しくなったのが分かるが、さすがに声は出さなかった。少し待つと傷がだんだん消えて行く。
晃はその様子をじっと見ていた。傷が治るとすかさずシリカに対してクリーンを掛けた。一安心したのだが、目の前に裸のシリカががいる事に意識してしまい、真っ赤になりなが慌てて背中を向ける。今度は大きくなってしまったが、皆その様を見ていたがさすがに今度は何も言わない。
シリカが黙ってエニー から渡されたワンピースを着て行く。
シリカの着替えを確認したメアリーが
「晃くんもう大丈夫よ。さあ説明してちょうだいね」
晃はかいつまんで話を始めた。アルテミスと言う女神が暴漢に襲われていて、怪我をしたところを助けたと。そして屋敷に連れ帰り怪我を治し、お礼がしたいと言い出したが、晃は見返りが欲しくて助けたわけじゃないからとやんわり断っていた。しかしそこに先ほど皆が見たガブリエルと言う冒険者が、アルテミスにガブリエルの行きつけの所に連れて行き、お礼をするようにと託され送り出されたと。そしてあっという間に首根っこを掴まれて、気がつけば遊郭にいたと。そしてそこの女将とガブリエルが話をし、シリカの部屋に連れて行かれた。シリカは今日が遊女デビューで、初日だったという。そこで彼女は1000万と言われ、ガブリエルがお金を払ったと。よく話を聞いていなかったようでその1000万というのは彼女の身請け費用で、彼女は通常の遊女とは違い、身請けする者にのみ抱かせる、そういう算段をしていたのだという。晃は
「僕は情けない事に彼女をその、抱けなかったんだ。みんなの顔が頭に浮かび、裏切っているような気がして。女将に言われていた身請けの金額が3000万で、その金額を僕は持っていたから彼女に身請けをするから、屋敷のスタッフか一緒に冒険者をやらないかと誘い今に至るんだ」
と言い訳をする。
またシリカの事についても、なぜ遊女をやる事になったかというより、やらされているのかという事も説明をしていた。彼女がまだ男性経験がないのに、いきなり初対面の見も知らぬ者と肌を重ねる事を強要されていたと話をすると皆泣いていた。
ただしイザベラだけは別である。
「晃くん、シリカちゃんの事は分ったよ。私達の嫁仲間として受け入れようじゃないか。それはいいんだけれども、アルテミスの事が気になるのよね。女神はね魔物とファースト以外から傷をつけられる事がないんだよ。暴漢に襲われていたと言うけども、彼女が怪我したのが不思議なんだ。
「え?そうなんですか。胸と腕に深い傷があり、この薬を塗って治してあげたんです。その後、お礼にこの体しかないので抱いてくれと頼まれたんですが、僕はそんな襲われた女性の弱みに付け込むような真似はしたくありませんと、自分を大事にして下さいと言って断ったんです」
と言うイザベラはため息をつく。
「はあ、そうやってアルテミスの胸を見て触っわてきたのね。私のは触らないのに。うーんおかしいわね。あの子は清純と恋と美を司るような清純派の恋の女神の筈よ。お礼に自分の体を差し出し抱かせるようなそんな女じゃない筈なの。
「そうなんですか。確かに綺麗な人ではありますね。それで僕が彼女を抱かないと言うと、言われてみればタイミングを計ったかのように現れたガブリエルさんが、僕を遊郭へ引っ張っていったんですよね。ただ彼らの目論見はともかくとして、僕はどういう経緯があったにしろ感謝してるんです。不条理に遊女をさせられ、見も知らぬ男に純潔を捧げなければならない。そんなシリカを僕が救えた事に満足しているんだ。だからアルテミスさんとガブリエルさんには返しきれない恩を感じているんです」
そんなふうに晃が皆に語っていくのであった。
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