第127話  身請け

「あ、あの、どうして?有り難いお話しですけれども、身請けをして頂く理由がありません。今逢ったばかりなのですよ?ひょっとしたら、私は性悪女かもしれないのですよ?」


「理由?何でだろう。僕は男で、好きになった女性を救いたいだけだよ。好きな子を救うのに理由がいる?僕はシリカが他の男に抱かれるのが嫌なんだ。それじぁあ駄目かな?僕は結構独占欲有るんだ。それより落ち着かないから服を着て欲しいなー。シリカさんの見た目は僕の好みを再現したかのような感じで、その、スタイルとかも物凄く奇麗で、触りたくなるというか、その、理性が保てそうにないんです。押し倒してしまうのを我慢してて、じゃなくて、えっと、後ろ向いているから早く服着て!それともう一つの理由だけど、なんて言ったら良いのかな、そう直感?多分縁だと思うんですよね。偶々助けた人の恩と言われ連れて来られたけど、逃げられたのに何故かこの店に黙ってきたんだ。僕の意思ではこういった所には来ないと思うんです。またガブリエルさんが選んだ店もだし、シリカさんが初めて客を取る日に偶然僕が来たって単なる偶然でしょうか?上手く言えないけど運命を感じたんです。身請けするからって僕の愛人とかになる必要は無いし、やっぱり僕がいやなら他の人の所に嫁げばいい。暫く屋敷を助けてくれるだけで良いんです。居場所がなければいつまでもいても良いし、屋敷で酷い事を言う人は居ないと思うんです。もし居たら全力で守ります。もし僕がシリカさんの初めての相手になる時は、ちゃんと人としてお互いを知り、尊敬する対等な立場として抱きたいんです。気障かもだけど。先程触れた時に違和感を、そう、これが運命?なのか、要は運命を感じたんです。シリカはこんな所にいちゃ駄目だ、僕の所に来るんだ!」


 晃の真剣さに羽織った着物を落とし、裸のままシリカは土下座で謝辞を言い、いきなり泣きながらキスをしてきた 涙でしょっぱかった。そして胸に晃の頭を抱き寄せ暫く涙を流していた。不思議と晃は性的な興奮はなかった。


「はい。私シリカは稀有なる冒険者晃様の求めに応じ、貴方の情婦になる事に対し、ここに同意をします。あの、皆の前でキスをし、私の胸をえーと、血が出るまで噛んで頂く必要があります。しきたりなんです。できないと偽装とされ、同意無しと見なされます。噛むのはこの女は俺のだと言う証になりますから」


「わ、わかりました。大丈夫です。それに情婦になんかならなくて良いですから。身なりが整ったら部屋を出ましょう。持っていく物は?」


「はい。何もないです。持って行きたくありません。裸で行きたいくらいです。でも、私の肌は晃の様以外に見せたくありませんから、持ち物は今からここを出る時の服だけです。あ、あの、我儘を言いますが、ここを出た後で服を買ってください。この服もすぐに燃やしたい位なんです」


 着替えると言っても、遊女が客を取る時に着る着物と寝間着しかなかった。彼女の物を一応準備させ、収納に入れた。化粧品もあったが要らないと言うが、売ってお金の足しにしようと言うと、頷いていた。


 シリカを改めて見るとまだ少女だ。多分15歳前後位だろう。160cm位で晃の人間スケールが発動する。84-54-86と見た。すらりとした7頭身で、年齢からの幼さが残るが物凄い美人だ。ほんわかとした感じだが、数年すれば間違いなく絶世の美女になる。小顔で丸顔だ。声はやや高い。髪は白に少し青みがある。セミロングのストレートだ。


 動きに気品と妖艶さがある。仕込まれているのだ。


 それから更に話し込んでいた。シリカは晃の横に座り手を離さない。

 シリカは晃についていくという。晃はホッとした。晃は別段聖人君子ではなく、普通に煩悩を持った高校生だ。だいぶ変わらざるを得なくなったか、根底はそこだ。シリカの胸が気になり、触るのを必至にこらえていた。

 少し心配が有っる。皆がちゃんと受け入れてくれるだろうかと。特にルーシーだ。彼女はピュアだから。


 それはさておき、昨夜はシリカはずっと泣いていたのだと。早ければ明日客と寝ないといけない。覚悟はしていたが、どこぞの変態に体を触られるかと思うと悲しく、怖かったと。震えていたりした。そんなシリカを愛おしいと感じついつい抱きしめて背中を擦る。


 何度も身請けする所作を練習した。噛むのは甘噛みだけだが、女性の胸を初めて口に含んでいるのだが、そこには性的な興奮はなく、シリカの人生が掛かっているからと真剣に取り組んでいた。

 シリカは時折晃の股間をチラ見して、興奮していないことに驚きつつ、紳士に貰われていくんだと嬉しかった。優しく抱きしめてくれて、壊れ物を扱うかの如く優しくして貰い、うっとりしていた。


 そろそろ下に行った方が良い時間になっていて、晃はシリカを伴い下に降りる。

 通常は見送りの為に一緒に腕を組んで降りるのだが、しきたりとかで、晃の後を変わった足取りでゆっくり進むのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る