第104話  40階層

 別れてしまったおおよその場所を聞いていたが、41階層への階段のすぐ近くだった。


 晃は気配を慎重に探りながら40階層を進んでいく。運悪く40階層に上がったすぐに主と出くわしたと言っていた。時折魔物と出くわすが、鎌鼬を放って倒していく。階段まで行ったが分からず、1時間ぐらい探索をしてようやく違和感が感じられた。壁の一部が本来の壁ではなくアースウォールを使ったようなそういう壁があったのだ。晃は収納にあったウォーハンマーを出し壁を砕いて行く。5撃で壁に穴が開き、ようやく崩れ去った。そこは袋小路があり、袋小路の入り口を塞いだような感じであった。パッと見何もなかったが床をよく見ると6名が横たわっていた。

 晃が恐る恐る近づくと全員生きていた。そう40階層に残った者たちの人数と特徴と合致した。晃は警戒しつつ一人を起こしにかかる怪我も酷く、片手がなかなったり、足がない者、目が潰れている者様々だった。五体満足な者が皆無だった。


 とりあえず気絶しているようだが全員に欠損修復をかけていた。すると一人また一人と目が覚めたようだ。か細い声で唸っていた。晃は1人1人に水を飲ませたりパンを一口口の中に入れたりした。そうすると最後の力を振り絞るかのごとくパンを食べ、晃は更に温かいスープを一人一人に飲ませていく。それから10分ほどしただろうか、多少なりとも体力が回復したのか空腹が僅かだったが回復してきたのか一人が口を開いた


「助かったよ。だがあなたは何者ですか?我々の仲間がダンジョンのどこかにいる筈ですが見かけませんでしたか?」


 晃は説明をしていく。自分があなた達を助けに来たとそして仲間のうち42名が38階層に退避していて、5名が地上に向かい援軍を求めに行って、グラッドが自分の仲間達と地上に向かい救援隊を組織している筈だとそして、エニーが自分と共に38階層の仲間達の所に救出しに行ったと。その男は安堵からか涙していた。みんな生きているのか一人も死んでいないのかと。晃は答える。


「亡くなったのは41階層で加護が切れた時に数名の方が亡くなられたと聞いていますが、幸いそれ以外で亡くなった方はいないと聞いております。あなた達はもうずっと何も食べていないのでしょう?消化に良いものを持ってきていますのでまずは食べ、動けるようになってから38階層の仲間達の所に向かいましょう」


「そう言うが、すまないがそれは無理だ。皆怪我が酷く、足を失った者もいるんだ。とてもじゃないがここから動く事もうできない」


 それと別の者が


「団長!俺の足が生えてます」「あっ!俺の腕も生えている」と言いし団長が


「何を馬鹿なことを言っているんだ?腕が生えるわけ」と言いつつも手足を無くした者達を見て、服の一部がなく破れていたりするので、確かに一度失われた筈の手足が生えているという事を確認して絶句した。

「あの―僕はヒールが使えませんが、欠損修復ができるんです。どうも初級や中級の回復系の魔法が使えないのにいきなり上級の欠損修復ができるようなんです。なので皆さんが気絶している間に欠損修復をしておきました。なので体力さえ回復すればいけると思うんでまずは食べましょうよ。


 」


 本当は弁当を出してあげたかったがさすがに飢え死にする寸前だった者にがっつりした食べ物は体が受け付けない筈なので、消化に良いものを少しずつ渡して食べさせた。あまりに大量に出すと一気に食べてしまい体が悲鳴をあげるだろうというのが予測できたからであった。


 30分程して皆が動けるようになったというので、無理をしているのだろうとは思いつつもこの場に留まるということは自殺行為以外の何物でもないので、晃が移動をすると決めた。そして温存しておいた最後の魔物避けを使う事にした。そう先ほど38階層から40階層に来た時は魔物避けを使わずに来ていた。その為に晃は魔物となるべく遭遇しないようにと走っていたのであった。彼らの足取りは重かった。圧倒的に体力がなくなっていたのである。それはさておき通常の倍の時間はかかったが魔物避けのおかげで進行方向の魔物を倒す以外特に何もなく40階層から39階層に上がるのであった。

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