第100話  決着

 晃は必死に戦っていた。エニー達には隙を見てセーフエリアに逃げ込むように指示をしていた。エニー達も分かっている。晃が押されていて危機を感じているのに、自分達が行けば足を引っ張るだけだという事を。助太刀をするのではなく足を引っ張るのだ。


 分かっていることなので晃が開けたところまで引っ張って行っているのを確認し、一斉にセーフエリアに逃げ込んでいった。


 レヴィも4人を守るためセーフエリアまで一緒に入っていた。


 そしてすぐに引き返し、晃あの助太刀に向かう。晃は走りながら鎌鼬を投げつけ細かい傷を負わせる。


 しかしすぐに回復してしまうが、エニー達を逃がすために自分に注意を向ける必要があり、そのため攻撃していたのだ。足の速さで言うと晃の全力疾走には遠く及ばないが、それでもかなり足が速くランニング程度のペースでは追いつかれてしまう。軽装鎧とはいえ剣を持ち、装備をしているので、本来の全力疾走には遠く及ばない。


 エニー達を逃がす為に一時的に全力疾走で開けた所まで行っていた。その為今はそのツケを払う事になっている。息が切れてゼーゼー言いながら戦っているのだ。時折剣で直接攻撃を狙うがあっさり躱わされる。10撃目位だろうか、向こうの攻撃を躱しきれていたのだがついにヒットしてしまい、殴られて吹き飛ばされて行く。壁に激突する寸前に晃は転移を行い、奴の後ろに回り、剣を突きたて吹き飛ばされた勢いを利用し深々と突き刺す。そのまま剣を突き刺したままにして別の剣を出しまた切りかかって行く。奴の再生が驚異的なものであるが、流石に剣を突き刺したままであればそこは再生しないだろう?とそういう考えだ。

 レヴィが追いつき、ファイヤーボールを投げつけてくれる。時折そちらに注意を向けるので注意を逸らした隙に斬りかかっていく。頭上に転移したりもしたが落下時に気付かれて手で頭をかばわれてしまい、手に剣が刺さったままたが刺さったけん事平手で吹き飛ばされる。


 今度は足の方に転移し勢いのまま突き刺す。しかしその代償は大きい。既に左手は折れていてぶら下がっており、肋骨も何本か持っていかれている。顔もかなり腫れていて見るも無残な姿である。なんとか粘って粘って残り30秒になった。


 片腕が動くので剣を片手に果敢に切り込んでいく。転移をしたが読まれていて殴られ、また吹き飛んでゆく。今度は顔の前に転移し片目を潰した。そしてまた離れるが、転移10の使い過ぎでいよいよ鼻血が出てきた。そして晃の持ち味である機動力は失われてしまった。そう片足が折れてしまったのだ。


 そして奴が口から何かを吐き出し、無事な方の右腕に当たり肘の先から先を文字通り持っていかれてしまった。しかし時間が来た。晃が一言言う

「悪いなチェックメイトだ」


 そうすると奴は藻掻きき始めた。そしてだんだん体が中心部に向かって収縮され、サッカーボール位の大きさになったかと思うと弾け飛んだ。


 晃は足を引きずりながらドロップ品を収納に入れてセーフエリアに歩き出した。慌てた レヴィが寄り添い肩を貸して歩いて行く。歩きながらもヒールをかけて行くが、晃の意識は朦朧としていた。

 そしてセーフエリアに辿り着くと、エニーに抱きつかれ、すぐ横になった。しかし晃の意識はなかった。


 晃が気絶した原因は転移の使いすぎである。


 転移を使える回数には制限がある。体に対する負担が大きく、無尽蔵に使えるわけではなかった。しかし相手があまりにも強く限界を超えて転移を使用せざるを得なかったのだ。戦闘中は気が張っており意識を保っていたが、奴を倒したと言う安堵感から緊張の糸が切れてしまい、一気に身体に対する負担の代償を払う事になってしまった。

 そしてセーフエリアに着いてから30分ほどで目が覚めた。自分が多くの者に見られている事を感じ取り、無事にセーフエリアに、皆のところに来たのだなとようやく認識できた。体に違和感があった。そう右腕がないのだ。晃は左手で右腕を触りながら欠損修復と唱えた。そうすると腕が生えてきたのだ。

 皆驚いていた。それとレヴィーはボロボロになった晃の剣を回収しに行っていてくれていた。

 ボロボロで使い物にならない状態であった。一番強い剣をとりあえず修復機に入れておいた。ほぼ全ての剣を出していたが、以前使っていた古い剣であれば健在なものがある。そのためここを出るときにはその剣を使おうと思っていたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る