第8話  決着

 晃は既にかなり疲れていた。ダンジョンで格上の魔物と戦った後だからだ。


 だがしかし今は踏ん張って相手を倒さないとイザベラがやばい。


 しかし、イザベラはニコニコしながら見ていた。


 相手は強かった。教科書通りの打ち込みだが、晃は剣技など教わった事がない。なので感覚と身体能力頼みで戦っている。


 身体能力は晃の方が一枚も二枚も上なのだが、攻撃は全て躱すか剣で少し軌道を外される感じで当たらない。


 しかし相手の攻撃は晃にかすり傷をだが付けていく。


 晃は魔法を発動した。周りの空気が変わりだした。何かを感じたのか相手の表情が変わりだした。


 また試しにと剣に着火魔法を強目に出すと見事に炎を纏った剣になった。


 炎を纏った剣で斬りかかると相手はうお!とか叫び、かなり驚いていた。そしてその炎が飛び火し、草むらが燃え出した。


 絶叫と怒声が聞こえる。

 相手がファイヤーボールを出してきたが、晃は剣で弾く。

 鞭を出してきたりするが晃は全て躱す。


 次第に戦いがエスカレートしていく。晃の極大魔法発動まで残り3分。更に庭の雑草が燃えていく。


 そしてついに晃の剣が1本絡め取られ、弾き飛ばされた。弾かれた剣が飛んでいった先で誰かに刺さったらしいく絶叫が木霊した。


 そろそろ決着を着けたく、相手の後ろに回れればなと思うと何故か景色が変わり相手の後ろにいた。


 間伐入れずに剣を喉元に突き付けた


「僕の勝ちだ。降伏し、僕達の屋敷で何をしていたか話して貰いますよ。極大魔法を使ったので解除しなければ貴方は約2分後に爆発し、確実に死にます」


「ちょっと待ってくれ、ここの土地は君のか?」


「正確には女神イザベラ様のですが」


 誰かが、仕掛けようとしていたが


「止めろ!彼の方が強い。それにここは彼らの土地だ。俺達の方が闖入者で、襲われたんじゃなく、彼らを襲った側だ。君、済まない。空き家だと思ったんだ。ケイト火消しを頼む」


 イザベラがやって来て


「晃くん、私なら大丈夫だよ。それに彼は嘘は言ってないから離してあげて。それと皆に次ぐ。女神イザベラの名により、これ以上の戦闘を止めるよう求む。武装解除しなさい」


 雰囲気が変わり、イザベラは輝いていた。誰もが彼女が至上の存在だと分かる。やはり人ではないのだなと晃は感じたが、その幼くも妖艶な姿にドキドキしていた。顔は幼いが体は18歳前後なのだ。


 火消しはあっという間だった。庭に魔法の雨が降り、一気に消えた。そして庭の端に野営道具を無理矢理避難させて佇む100人以上がそこにいて平伏していた。


 イザベラはその人達の前に行く。


 そして必死の形相の一人の少女が、晃に縋り付き泣きながら


「どうかご慈悲を。大輔を殺さないで。我々に非があるのは明白で、都合の良い事を言っているのは分かりますが、どうかどうか」


 血相を変えたイザベラが


「あなたケイトじゃない。貴女も下界に来たのね。晃くん、大丈夫だから魔法を解除して離してあげなさい」


 晃は頷き大輔と呼ばれた男を開放したのであった。


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