第22話  自らの意思での戦い

 晃はダンジョンでの手続きを終え、自らの意思でダンジョンに入る。門番に言われたのは初日にも関わらす最初と次の層のみにせずに過信して奥に行くった冒険者の多くが命を落としているから、先にはまだ行くな。アドバイザーの許可があるまでやめとけと警告をされ、はっとなり、深々とお辞儀をした。


 晃は周りが見えていなかったのだ。

 ロトを回す事、つまりイザベラにちゃんとした住処で過ごして貰いたく、魔物を倒す事しか考えていなかった。


 入り口が2つあり、地下に向かう方にしか入れない。片方は地上ダンジョンの筈だが、入り口の封印が解けていないので入れない。


 ダンジョン内は岩がゴツゴツいていて幅は3m〜5m,高さが2.5〜4m位な感じで、時折直径10m位の開けた場所がある。


 進む事3分位で早速魔物のお出ましだ。


 先日遭遇した魔物が4匹だ。

 いきなり飛び掛かって来たが、先日とは違い動きが見えて、冷静に躱し剣を叩き込む。次の奴が脚に噛みつこうとしていたが、回し蹴りで吹き飛び、仲間を道連れにして霧散する。最後の一匹が鍵爪で切り裂きにかかるが、胸当てに当たりダメージは無い。バランスを崩している所に蹴りを入れて壁に当たり霧散した。魔石を5個拾い次を探す。


 戦闘は呆気なかった。弱い魔物が数匹程度なら、女神と契約すれば契約の恩恵で接近戦に必要なステータスのみだが、少し上がる。レベルが0から1に上がる程度だか、晃には先日と違い戦えていたので少し調子に乗り始めた。第1階層を彷徨うも魔物が出て来ない。階段を降りて2階層に進む。先日転移したのは、5階層だった。


 場所に見覚えがあり、自分が転移したのはまだ最初の層だと思っていた。


 最初の層は何階までかなと勘違いをしていて、最初の層は1階層、次の層は2階層を指していた。元々5階層で死にかけていてまだ早いのだが、無知とは恐ろしいのだ。


 偶々数分前に別の冒険者が入っていったから、まだ魔物がリポップせず、この辺りは魔物が出ないんだなと勘違いをして、どんどん進む。


「おっ!ここで襲われたんだよねーリベンジしちゃる」


 等と呑気にしていて、喉が渇いたなと水筒のお茶を飲む。


 少しすると見た事の無い魔物が現れ晃を襲う。人間に似た上半身に馬の下半身、いわゆるケンタウロスというような魔物であった。晃は知らなかったが本来この階層に出るよう魔物ではなく、もっと下の階層にいる筈の魔物であった。先ほど傷だらけの冒険者とすれ違ったなーとは思っていたが、命からがら逃げてきていて、その冒険者を追ってきた魔物であるが、目の前の 晃にターゲットが変わった。


 弓を放ってきたが盾で受け止める。大した事がないなと思っていたが、次に腰に下げた剣を引き抜き斬りかかってきた。何とか盾で防ぐもケンタウロスの攻撃の方が早く、反撃する暇がない。そうしているとやがて晃は尻餅をついた。次に槍に持ち替え、突き刺すようしてくる。晃はのたうちまわりながら躱すのが精一杯だ。時折剣で弾いたりはするが、立ち上っての反撃が中々出来ない。そうしているとふと思ったのは上に飛べたらなあ、そこからだと落下する時に剣を突き立てればあっという間に倒せれるだろうなと思い始めた。既に躱しきれない状況で、切り傷がかなりあり満身創痍になってきた。足は既に刺され、今や走る事ができない。


 晃は諦め始め呟く


「僕このまま死ぬのかな。せめて彼女を作りたかったな。ああ、上に飛べたらなんとかなるのにな」


 そうするとふっと視界が変わった。なぜかケンタウロスの上にいると分かる。そのまま剣を抱えて体重をかけ落下するに任せる。そうすると見事に首筋から剣が刺さり、ケンタウルスは霧散していった。どうやら弓と矢を落として行ったようで、晃は弓と矢を回収し、魔石を収納していく。そうして壁際になんとかもたれかけながら、収納から傷薬を出し、塗って行く。この薬がかなりの傷でも治してくれるというのが分かっていた。時間は掛かるが徐々に傷が治っていく。特に薬を塗った所というのが一番治りが早く、5分殆おとなしくしているとなんとか歩けるようになった。


 ここはまずいとようやく気付き、入口に向かい歩き始める。すると先日の魔物が10匹位出てきた。なんとか全てを撃退したが、先程のケンタウロスと戦っていた時よりも動きが軽く、力が漲っている気がした。傷も何故か殆ど治っているような気がする。


 そして魔石を回収しとりあえず目的の数を確保した。


 怪我もしてしまっていたり、装備も傷がついた。


 その為早々に戻る事にするが、中々簡単には進む事ができない。まだ他の冒険者達が帰るには時間が早かったが、既に晃が通ってきた所の魔物がリポップする時間を過ぎていた。その為少し進むと数匹の魔物と遭遇するような状況になっていて、1階層に着いた頃には百匹以上の魔物と戦った後だった。体を休めがてら全ての魔石を回収していく。中には色の違うものもあったりするが、特に知識もないのでどんどん収納していく。異様に腹が減っていたが食べている余裕はなかった。一応収納の中には宿で出た朝食の残りのパンなどを入れてあり、食べようと思えば食べる事が可能なのだが、そんな余裕は既になかった。


 そうして15時ぐらいだろうか、漸くダンジョンの外に出る事が出来た。余りにの傷の多さに、ダンジョンの監視番の者がどういう敵と戦い、どこまで行ったのかを聞いてきた。晃はケンタウロスの特徴を説明し、階段を4回降りたと説明する。


「馬鹿野郎!最初の層と次の層までにしとけと言っただろ!それ以降の所まで行くってお前は死にたいのか?偶々戻ってこれたようだが、その様を見る限り死にかけたんだろう?違うか?」


「えっと、あの最初の層を超えるのは5階層よりも下の話じゃないんですか?」


「お前まさか最初の層というのは初心者層の事を指してると思ったのか?俺が言ったのは1階と2階までにしておけという意味だったんだ・・・5階層ってレベル2になっていないと余程特殊な力や攻撃魔法でも持っていない限りレベル1の者が単独で行っても歯が立たないんだぞ」


「その、ケンタウロス以外は普通に戦えたんですけども、この傷は全部ケンタウルスとの戦いの時に受けたんです。あれも5階層に出る魔物なのですか?」


「いや待て、さっきからケンタウロスって言うが、あれは10階層以後の魔物だぞ。あれは中級者向けの階層で出るものだ。本来5階層になんかは出ないぞ。確かにケンタウロスのドロップだな。しかし坊主はよく生き残れたな」


「あーそうなんですか。確かにケンタウロスに追われている人がどこかに逃げていきましたが」


「お前、それって押し付けられたんだぞ。あまりにも知識がなさ過ぎるな。とりあえずもう一週間は5階層までに留めておけ。お前の話ぶりから5階層まではどうやら問題なさそうだが約束してくれ」


「はい申し訳ありませんでした。」


 さすがに普段お気軽な晃だが、勘違いとはいえやらかしたのである。それで怒られたからしゅんとなっていた。門番も反省していると判断し、それ以上は言わなかった。そしてダンジョンを引き上げギルドに向かうのであった。

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