第15話 生き残りたい
進みだす事10分位だが、晃は犬のような顔をした魔物達に追いかけられていた。
棍棒を振りかざし唸りながら迫ってきており、晃は恐怖に駆られ逃げていた。
他の冒険者がいたのだが、晃は逃げるのに必死で周りが見えていなかった。
「ギャハハハ。あの坊主ビギナー(初心者)か?ダイン如きに泣きながら逃げてるぜ!」
「だっせーな。ダンジョンに入って来て、しかも初心者層で魔物と戦えないなんてあり得ないな。女神は何であんなんを許可したんだ?」
等と晃を馬鹿にしていた。
ダンジョンの出入りは冒険者ギルドが管理していて、女神から許可を受けた冒険者しかダンジョンに入る事を許されない。少なく共初心者階層で戦える力は女神と契約すると得られ、後は戦う目的と覚悟があれば普通は女神が許可する。
しかし、周りの冒険者からは戦う覚悟が無いと笑われたのだ。
当たり前の話だ。平和な国の一般人が虫以外の生き物を殺すとしたら、小学校の授業での蛙の解剖位しかない。それも昔の話だ。今では殆ど行われてはいない。筆者も解剖用の殿様蛙を捕まえに行ったものだ。趣味が釣りなら別だが、それでも哺乳類を殺した事のある者は皆無と言っても過言ではない人数しかないのだ。
なので獣型、ましてや二足歩行となると精神的なハードルが高い。
晃は追い詰められ袋小路に来た。先に進めないのだ。振り向くと数秒で対峙する事になり、剣と盾を構えて震えながら迎え撃つように身構えた。
袈裟がけに剣を振るとあっさり肩に入り心臓の当たりで止まったが、敵は霧散した。後ろから次の奴が来て盾で棍棒を防ぎ、剣を刺す。3匹目が飛び掛かり晃は押し倒され、首筋に噛みつかれそうになる。必至に抵抗していると急にそいつが燃え上がった。
先ほど晃に罵声をあびせていた数人のパーティの中の女性が放った魔法のようで、晃は助けられた。
その場にぺたんと座り込んだが、その女性、いや少女が近づいてきて
「あの…大丈夫ですか?余計なお世話様じゃなかったですか?」
耳が尖っており、エルフ?と思う美少女だ。
「あっありがとう。助かりました。二足歩行のは人に見えて・・・」
深々と礼をしているとパーティの一人が襟首を掴んできて
「バカヤロウー!初心者層とは言えお前みたいな成りたてが来て良い層じゃない。みっともなく逃げるんだったら冒険者なんて辞めちまって母ちゃんのおっぱいでもしゃぶってろ。お前の女神は誰だ?なんでお前のようなヘタレに許可が降りてる?周りにも迷惑が掛かるから帰れ!」
そうやって壁に投げられた。
「ちょっと可愛そうじゃないの。ごめんね。あいつ乱暴な事を言ってるけど、悪気はないの。体調が悪い時は無理しない方が良いと思いますよ。顔色が悪いですよ。出口はあっちだけど、行けますか?」
「うん。ここを出たいんだ。無理やり連れてこられて困っていたんです。じゃ、その、ありがとう」
晃は悔しさと出口が分かった安堵から去ろうとした。しかし、少女に手を捕まれ
「これをどうぞ。まっすぐ向かえば出口までは持つ魔物避けです。ご武運を」
そうやって晃は先の若者に罵倒されながらその場から逃げた。
その若者は
「おいテメー何で助けるんだ?お前あんな子供が趣味なのか?」
「あのね、困っている人を助けるのに理由はいらないよ。それにあの子女神と契約してないよ。変だよね」
「どういう事だよ?契約してなかったら入り口を通れないだろ?女神の加護が無ければゲートに引っ掛かり入れない筈だぞ。何で通れたんだ?」
別の者が話し出す。
「確かに女神の加護が感じられないな。ただ、失われた筈の加護が感じられた。今のこの膠着した状況を覆すキーマンだったりしてな。おい、念の為ダンジョンを出るまで密かに守ってやれ。お前ら二人でな」
「えー団長そりゃ無いっすよ。なんで俺があんなガキをって、分かったよ行けば良いんだろ?行くよ。ったく世話の焼ける」
「団長ありがとう!行ってきますね。私も不思議な力を確かに感じたんです。無理やり連れてこられたって半分は本当だと思います。多分まだダンジョンに来る準備が出来ていないのにいきなり連れてこられて一人にされたんだと思います。では」
そうやって密かに監視されているとも知らずに晃は走った。
そしてダンジョンの出口に何とか辿り着く。
出口で見えない障壁が有った様で、晃はねっとりと絡み付く何かを無理やり引き離しながら外に飛び出した。
するとダンジョン中外に警報が鳴り響き、間もなく大騒ぎになった。
晃は驚いてその場から逃げ出した。そいて街中の人混みに紛れて行くのであった。既に剣と盾は収納にしまっている。何故かやり方が分かったからだった。
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