離れていても力になれるって、案外本当。――10

「負けるものか! 『アークスラッシュ』だ、ゲオルギウス!」

(コクリ)


 弱気になりそうな自分をふるい立たせ、わたしは二連続物理攻撃『アークスラッシュ』をゲオルギウスに命じる。


 ゲオルギウスが大剣を上段に振りかぶった。


「ティターンも参りましょう! 『ホワイトアウト』です!」

『OOOOOOHH……!』


 クレイド先輩も指示を出す。


 粉雪が戦場に舞い、風が鳴る。『10%の確率で相手を「麻痺」状態にする』追加効果を持つ、氷属性の魔法範囲攻撃『ホワイトアウト』の予兆よちょう。チャージタイムは10秒、クールタイムは1分15秒だ。


 わたしたちがそれぞれ指示を出し終えたとき、チェインライトニングのふたつ目の雷球が、ゲオルギウスに襲いかかってきた。


 ゲオルギウスがかぶとの下の目を光らせて、大剣を斜めに構える。大剣に当たった雷球が、軌道をらされて床を焦がした。


『10%の確率で攻撃スキルのダメージを無効化する』固有アビリティ『受け流し』。


 わたしたちはグッと拳を握る。


「まだ運に見放されてはいない!」

「ええ! この『受け流し』をきっかけに逆転しましょう!」


 それでもゲルド・アヴェンディに動揺はない。


「このようなこともあるだろう。こちらも、チェインライトニングの一発目で『目眩』を引いたからな」

「その余裕、崩してみせよう!」


 余裕綽々よゆうしゃくしゃくな様子のゲルド・アヴェンディに、わたしは指を突きつけた。


「行け、ファブニル!」

『GOOOOOOHHHH!』


 溜めていた力を解放し、ファブニルの全身が砲弾となる。


 ズドンッ! と轟音ごうおんを立て、ボルトバーサーカーの正面にファブニルの巨体が叩き込まれた。


『WOOOOHH……!?』


 弱点属性の攻撃に、たまらずと言ったふうにボルトバーサーカーが転倒する。HPは一気に3/5まで削れた。


「「よしっ!」」


 わたしたちは喝采かっさいする。


 ファブニルの固有アビリティは、『土属性の攻撃スキルの威力が、30%増加する』効果を発揮する『大地だいちちから』。大地の腕輪でバレットタックルは土属性になっているので、弱点補正と合わせて260%のダメージ増だ。


 ようやく流れがきた! この流れは決して逃さない!


「よくない流れだ。断たせてもらおう」


 わたしの思考を見透かしたように、ゲルド・アヴェンディがつぶやく。


『WOOOOHH!』


 同時、ボルトバーサーカーの『麻痺』が解けた。


「堅実に行くぞ、ボルトバーサーカー。『ブラッドサッカー』だ」

『WWWW……!』


 ボルトバーサーカーが右腕を引く。その爪に、鮮血のような、赤い陽炎かげろうがまとわりついた。


「くっ」とわたしはうめく。


「ここでHP吸収スキルか……!」


 ブラッドサッカーは、チャージタイム5秒、クールタイム10秒の、直接物理攻撃スキル。その効果は、『与えたダメージの1/2分、HPを回復する』だ。


 せっかく半分まで削ったのに、ブラッドサッカーが発動すれば回復されてしまう。エレクトリックオーバーフローでステータスが大幅に上昇しているため、ダメージ量・回復量はともに多いだろう。


「流れに乗ることと同じく、流れを断つことも重要なのでな」


 ゲルド・アヴェンディの考え方は、基本かつ重要だ。事実、つかんだ流れを断たれ、わたしたちは精神的な疲労を得ていた。


 焦燥感がわたしを襲う。


 早くロッドくんの応援に向かわなくてはならないのに……ゲルド・アヴェンディが、あまりに遠い……!!

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