女性に優しくする理由は、男にはいらない。――4

 ファイアードラゴンとの戦いに勝利すると、大部屋の奥の壁が上がり、先へと続く通路が現れた。


 俺たちが通路を通り抜けると、そこには最初の小部屋と同じ造りの小部屋があった。


 ただし、この小部屋には、最初の小部屋とは異なる点がある。


「あの古代文字はなんでしょうか?」


 ミスティ先輩が、奥の壁を指さす。


 そこには、最初の小部屋にはなかった、古代文字の綴りがふたつ、刻まれていた。


「『Ice』と『Water』――『氷』と『水』だね」


 エリーゼ先輩が、研究レポートを眺めながら翻訳する。


「これもクリア条件に関わっているのでしょうか?」

「氷と水がなにを意味しているかだねー」


 レイシーとケイトが「「むぅ」」と唇を尖らせた。


 エリーゼ先輩とミスティ先輩も腕組みして考えているが、答えが上がってくる気配はない。


 4階層の暗号はちょっと難解だ。ここは俺が答えを示したほうがいいだろう。


「『勝ち進め』だ」


「「「「え?」」」」と4人が声をそろえた。


「氷も水も、モンスターの属性のひとつ。前の部屋で戦ったのは、火属性のファイアードラゴン。だとしたら、火属性に『勝つ』水が正解じゃないか?」

「なるほど! 『勝ち進め』は、『モンスターとの戦闘を繰り返せ』と、『戦ったモンスターの属性に対し、強い属性を選べ』の、ダブルミーニングなんですね!」

「そういうことだ、レイシー」


 ケイト、エリーゼ先輩、ミスティ先輩も、感心したように頷く。


「では、水のほうを選びましょう。いいでしょうか?」

「「「異論なし!」」」


 ミスティ先輩の確認に、レイシー、ケイト、エリーゼ先輩が賛同する。


 ミスティ先輩が壁に歩み寄り、水の綴りに触れた。


 古代文字に明かりがともり、壁が上がり、通路が現れる。


「正解みたいだね!」

「ロッドくんの推理は、相変わらずお見事ですね!」


 エリーゼ先輩が「おおっ!」と感嘆かんたんし、レイシーがキラキラした目を俺に向けた。


 俺はレイシーに笑みを返し、4人に目を配る。


「レイシー、ケイト、エリーゼ先輩、ミスティ先輩は、ここからが本番だ」

「はい! ロッドくんの指導の成果をお見せします!」


 レイシーが「むんっ!」と拳を握り、ケイト、エリーゼ先輩、ミスティ先輩が、力強く頷いた。


 俺たちは先へと歩を進める。


 通路を通りながら、俺は思う。


 ゲームのフローラ・ネイブルは、何度も主人公ロッドに勝負を挑んできた。このウェルト空間でも。


 そして、ゲームのフローラ・ネイブルは、ウェルト空間の5階層で主人公ロッドを待ち受けていた。


 つまり――


 おそらく、フローラたちは、俺たちより先に5階層に到達するだろうな。

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