悪事は怒りを買うから、結局は損。――2
決勝戦が行われる前日、セントリア従魔士学校の生徒は、王都『レドリアス』まで移動し、宿で一夜を過ごした。
レドリアスを訪れたのは、決勝戦に挑む俺を見送るためだ。
そして、いよいよ決勝戦当日。
迎えにきた馬車の前に、生徒たちが集まっていた。
その最前列には、レイシー、エリーゼ先輩、ケイト、アクトの姿がある。
「頑張ってね、ロッド!」
「応援しているよ」
ケイトが親指をグッと立て、アクトがにこやかに手を振る。
「勝ってくださいね!」
「頼んだよ、ロッドくん」
レイシーが両手をムン! と握り、エリーゼ先輩が微笑んだ。
「ああ。行ってくる」
馬車に乗った俺は、窓からエリーゼ先輩へ視線を送る。
「任せたよ」と言うように、エリーゼ先輩がコクリと頷いた。
「任せてください」と思いを込めて、俺はニッと笑う。
馬車が走りだす。
生徒たちの声援を背中に受けながら、俺はレドリア城へと出発した。
「さて。最終チェックといくか」
レドリア城へ向かう道すがら、俺はメニュー画面を開き、従魔のステータスを確認する。
クロのステータス画面を覗き――俺は目付きを鋭くした。
「来い、クロ」
『ピィッ!』
魔石を取り出してクロを呼ぶ。
手のひらに現れたクロを見て、俺は呟いた。
「仕掛けてきたか」
『ピィ?』
首(?)を傾げるクロの胸(?)には、いくつもの
『
『装備しているモンスターのSTR、INTが30%上昇するが、HPが10秒毎に1/10減少する』効果を持つ装備品。
使い方によっては有用だが、サクリファイスボム以外に攻撃スキルを修得しないブラックスライムにとっては、デメリットしかない。
ブラックスライムのキモは、『分裂』によるハメ技だ。『分裂』はHPが3/4以上ではないと発動しないため、相性がすこぶる悪い。
さらに俺は、ユーとマルのステータス画面を開いた。
ステータス画面に表示された装備品を目にして、俺は顔をしかめる。
「『
ユーに装備されていた『毒棘の腕輪』は、『装備しているモンスターを「毒」状態にする』装備品。
『毒』は、バーサクリバストをメインウェポンとするゴーストナイトにとって、天敵と言える状態異常だ。ミスティ先輩も、真っ先にユーを『毒』状態にしたしな。
マルはそもそも、『
決勝戦の前に確認してよかった。警戒しておいて正解だったぜ。
俺は胸を撫で下ろしつつ、呟く。
「おかげで、わかったこともあるしな」
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