育成ゲームの主人公に転生した俺、ゲーム知識と育成チートで不遇モンスターを最強に仕立てる
虹元喜多朗
第一章
プロローグ
どこともしれない森のなか。
目の前には、
明らかに
いやあ、睡眠不足ってのは恐ろしいなあ、こんな幻覚を見てしまうなんて。
『OOOOOOHHHH!!』
参った参ったと頭を
幻覚にしてはもの
まあ、どうせ幻覚なんだし別にいいか、食われればショックで目覚めるかもしれないし。まだまだノルマは残っているんだ、早く起きないといけないしな。
なんて思いながら、俺はその場に尻餅をついたまま、うんうん、と
木のバケモノの鉤爪が、俺の体を引き裂く――
寸前。
「フレイ、『ファイアブレス』だ!」
横合いから放たれた
『OOOOOOHHHH……!!』
木のバケモノが
俺は口をポカンと開けながら、気付いた。
肌をチリチリと焼く、業火の熱。
鼓膜を震わせる、木のバケモノの断末魔。
ここまでリアルな幻覚、あるはずがない! 目の前で起きているのは現実だ!
じゃあ、ここはどこだ? どうして、あんな木のバケモノがいる? 俺はどうなってしまったんだ?
「無事か、ロッド!」
業火が放たれた方向から、男の声がする。
そちらに目を向けて、俺はまたギョッとした。
男が、2足歩行の真っ赤な恐竜を連れていたからだ。
常識
「まったく! 森にはモンスターが生息しているんだから、『
男のセリフに、俺はハッとした。
このセリフ、聞き覚えがあるぞ! それに、いま気付いたけど、このひとが連れている恐竜と、俺を襲おうとした木のバケモノも、見たことがある!
まさかと思いながら、俺は近くにあった泉に駆けよって、自分の顔を映してみる。
黒い短髪に、黒い切れ長の瞳。
シュッとした顔立ちは、『爽やか系イケメン』と呼んで申し分ない。ぽっちゃり系な俺の、
この顔、間違いない! 『ファイモン』の主人公、『ロッド・マサラニア』だ!
ここまできて、俺はようやく事態を
俺は、ファイモンの――『ファイティングモンスター』の世界に転生したんだ!
ファイティングモンスター。通称、ファイモン。
世界中で大人気の、モンスター育成系RPG。
プレイヤーは、モンスターを使役する『
登場するモンスターは、なんと600種類以上。
倒したモンスターは新たな仲間――『
また、オンライン通信により、別のプレイヤーとの対戦や、タッグプレイ、パーティープレイ、従魔の交換も可能。
すでに8シリーズ発売されていて、あまりの人気に国際大会が
俺もまたファイモンのヘビーユーザーで、シリーズ1作目から楽しませてもらっている。
「どうした、ロッド? 狐につままれたような顔をして。『フレンジートレント』に襲われて
俺がファイモンの
俺がロッドだとすると、このひとは多分……
「な、なんでもないよ、オーグさん!」
「……本当にどうしたんだ、ロッド? 実の父を『さん』付けなど……頭でも打ったのか?」
「いや、本当になんでもないって!」
笑いながら、俺は現状を整理する。
ここがファイモンの世界だとしたら、俺がいるのは『レドリア王国』にある『トキルハの森』か。
オーグさん――父さんが倒したフレンジートレントは、手のひらサイズの結晶、『
おそらく、これはラノベやマンガでよく見る異世界転生で、現実世界の俺は死んでしまったのだろう。
たしかに死んでもおかしくない仕事量だったけど……マジで死んじまったのかよ、俺……。
俺はショックに打ちひしがれ――ふと思った。
待てよ? よく考えたら、この状況ってラッキーなんじゃないか?
もう、ブラック企業で仕事
ゲームの知識がこの世界でも通用するとしたら、俺は従魔士として大成功できるんじゃないか?
なにより、大好きなファイモンの世界で暮らせるんだぞ? こんな幸せがほかにあるか?
いや、ない!
俺はグッと
よっし、決めた! どうせ1度死んでるんだ! 俺は、
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