第317話 カズキ、空間魔法を使って家を創る その3

「「みゃー・・・・・・」」

「大丈夫よ。少し休めば目を覚ますわ」


 カズキの意識が覚醒に向かったのは、心配そうな猫たちの鳴き声と、それをなだめるエルザの声が聞こえたからだった。


「みぃあ!」


 それに真っ先に気付いたナンシーがカズキの胸に飛び乗って懸命に顔を舐めると、それに反応したカズキの手がゆっくりとナンシーの頭を撫でる。

 それが毎朝の様に繰り返されている、カズキの起床の合図だと気付いたナンシーは、顔を舐めるのを止め、いつもの目覚めの挨拶を待った。


「ん・・・・・・。おはようナンシー」

「みぃあ!」


 挨拶を返したナンシーは、一緒にカズキの様子を伺っていたエルザとフローネの顔を確認する。二人が人の怪我や病気を治す術を持っていると知っているナンシーは、いつもより動きが緩慢なカズキが大丈夫なのか、二人の表情から読み取ろうとしているのだ。


「大丈夫ですよ、ナンシーちゃん。枯渇していた魔力が回復したのか、顔色も戻ってますから」

「みぃあ」


 ナンシーはフローネの言葉に曖昧に返事をすると、今度はエルザの顔を見た。疑う訳ではないが、セカンドオピニオンを受けて安心したかったのだ。


「大丈夫、フローネの言う通りよ。この様子だと、直ぐに普段通りになると思うわ」

「みぃあ! みぃあ!」


 エルザの言葉で漸く安心したのか、ナンシーはお礼を言うかのようにエルザに向かって元気に鳴くと、次いでフローネに顔を向けて同じように鳴いた。まるで、疑って悪かったとでも言っているかのように。


「ふふ。気にしてませんから大丈夫ですよ?」


 フローネはその気持ちが伝わったのか、手を伸ばすとナンシーの頭を撫でた。その際、フローネの手と立派な胸部装甲が自分の顔の上を通過した事に、未だぼんやりとしていたカズキが気付く。ついでに、頭の下の適度に柔らかく、弾力のある感触にも。

 

「・・・・・・えっ!?」


 そこで漸く頭がはっきりしたカズキは、何故か自分がフローネに膝枕をされている事に気付いた。だが、起きようにも思い通りに体が動かない上に、


「暫く安静にしていなさい」


 とエルザに言われてしまったので、無理に体を動かす事も不可能になってしまった。

 これにはフローネとカズキの仲が深まる事を望んでいる、エルザを始めとするランスリードの上層部の思惑もあったのだが、カズキは猫が最優先、フローネは食欲が最優先だったので、二人の仲は遅々として進まなかったという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る