第315話 カズキ、空間魔法を使って家を創る その1

 オークの群れをサクッと全滅させたカズキ達は、砦を魔物や野盗などに利用されないように封印(壁をドーム状にして、出入り出来ないようにした)すると、ランスリードの城に戻ってきた。

 帰り着いたのが昼過ぎだったのでそのまま詳しい報告をし、その後は新たな情報が入るまで城で待機という名の休暇を与えられた。

 誰かさんのお陰で装備がグレードアップした騎士団が各地で魔物を蹂躙しており、カズキ達が出張る必要がなくなった事で、エンペラーやクイーンが発見されたら即応できる体制を整える事が出来たからだ。


「うーん」

「みぃあ」


 そんな日々が続く中でカズキが考えていたのは、初めての野営? の時に造った砦の事。あの時は初めてだったから構わないのだが、これから旅をしていく中で、毎日の様に砦を造るのもどうかと思っていたのだ。


「ベースはやっぱり『次元ポスト』だよね。これなら持ち運び可能だし」


 カズキはそう言うと、左腕にはめている腕輪を見た。


「『次元ポスト』の魔法は覚えてるけど、特殊な金属がないと使っても何も起こらないんだよね。それに、今の時代に残ってる特殊な金属は、大半が『次元ポスト』に使われてるってエルザさんが言ってたしなぁ・・・・・・」


 実を言えば、エルザも、カズキも、そして城にいる人間も大半は『次元ポスト』に使われている魔法金属である『ミスリル』を目にしている。

 カズキが厨房にある銀食器に魔力を込めた事で、それら全てが『ミスリル』へと変化しているからである。

 ただ、全ての人間がそんな方法で魔法金属を創る事が出来るとは思ってはいないので、偶に『似てるなぁ・・・・・・』と思う人間がいても気の所為だと思ってしまい、それ以上考える事はなかったのだ。

 

「そうすると、まずは特殊な金属なしで『次元ポスト』を使えるようにならないといけないのか。良し・・・・・・」


 カズキは決断すると目を閉じ、ナンシーを撫でながら徐に詠唱を開始した。


「深淵の奥底より響き渡る古の叡智よ、虚空にて秘蔵せし門戸を開き、異界への道筋を示さん。我が手に宿りし無限の力よ、今こそ我が前に空間の扉を開け! 永劫の秘密を紡ぎし魔法、"ディメンジョン・ポスト"!」


 魔法が完成すると、カズキの目の前の空間が歪む。それはカズキの意志で開閉が可能で、容量も『次元ポスト』と全く同じものだった。


「成功。・・・・・・だけどいつもより疲れた気がする」


 だが弊害もあった。空間に働きかけるという荒業を行った所為か、いつもより魔力の消耗が激しかったのだ。具体的に言うと、全魔力の2分の1を消費していたのである。


「これは反復してヒントを導き出すのが厳しそうだな。でもこの魔法が完成すれば、気兼ねなくナンシーと過ごす事が出来るし・・・・・・」

「みぃあ!」

「ごめん、心配かけちゃったね。うん、今日はこれ位にして、ゆっくり休むよ」

「みぃあ!」


 ナンシーに注意されたカズキは、これ以上心配かけないようにその日はゆっくりと休んだ。だが翌日以降――。


「あれ? なんか今日は調子がいいな」


 リバウンドにより急激に増えた魔力のお陰で一日の試行回数が増加。結果、僅か三日目で特殊な金属の必要のない魔法、【ディメンジョン・ポスト】は完成を迎えたのだった。

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