第232話 残り全員連れて来た
「父上は古代魔法の【トール】を使えるようになった。叔父上も料理に
ランスリードの王城のソフィアの部屋で、猫たちと戯れながらジュリアンはそう言った。
その場にいるのはカズキと学院でのパーティメンバー。それに加えて弟のカリム。そして、部屋の主であるソフィアと、多数の猫たちであった。
今回、参加希望者全員を連れて行くことになったので、異世界メモリアに行く前に、これまでの事を整理しておこうという話になったのだ。
「武具の方は大体想像がつくわね。ヒヒイロカネがいくら魔力との親和性に優れ、アダマンタイトの数十倍硬いといっても、カズキが圧縮した魔法金属の方が上って事でしょう」
ジュリアンの言葉に答えたのはソフィアだった。確かに現在の彼らの装備は、全てがカズキが圧縮したものになっている。これが魔法金属の創り方がわかった当時のままだったら、ヒヒイロカネの武具が発現したかもしれないが。
「後は戦闘以外にも役立つ物も沢山持っていますからね。必然的に、望むものが手に入る確率が高くなっているのもあるのかと」
「確かにな。『次元倉庫』のお陰で荷物を持ち運ぶ必要もない上に、内部には居住スペースまであるから野営する事もない。更に、ピンチの時には神話級の魔法を込めたマジックアイテムまである。そうなれば、望むものが手に入るのも必然かもしれん」
ラクトの言葉にジュリアンが頷く。かと思ったら、立ち上がって拳を振り上げ、演説を始めた。
「とはいえ、まだ四人しかヒヒイロカネを入手していないのも事実だからな。やはり正確な情報を得る為には、サンプルを増やすしかあるまい! さあカズキよ! 我々を異世界メモリアへとガッ!」
段々とヒートアップしていったジュリアンが、言葉の途中でカズキに頭を叩かれ呻き声を上げた。
発作を起こしたジュリアンを放置しておくと、本能の赴くままに暴走するので、沈静化させるためにカズキが治療(物理)を行ったのだ。
「じゃあこの後の動きを確認しておきましょうか。まずは全員でライセンスを取って、その後は別行動する事になるわ。私とジュリアンはカズキと一緒にオリハルコンダンジョンでヒヒイロカネの取得条件を満たす。他のみんなは修行がてら、適正なランクのダンジョンの攻略。自力でのヒヒイロカネ獲得を目指してもらうわ」
暴走したジュリアンの後を引き取り、ソフィアが今後の予定を説明する。
事前に相談して決めた事もあり、誰からも異論は出なかった。というのも、ジュリアンとソフィアは立場上、国を長く開ける事は出来ないのと、一定以上の強さ――具体的には魔力操作の練度――を持っているから、劇的な成長を望めなくなっているからである。
対するラクト達も、実は最近伸び悩んでいた。ただ彼らの場合はジュリアン達と事情が異なる。冒険者ランクがBに到達し、一流への仲間入りを果たした事で、皮肉にも受けられる依頼が減ってしまったのが原因だ。
学院では依頼の報酬を半額にする代わりに単位を付与しており、半額を学院の運営費の足しにしているという事情がある。
学院長であるどこぞの
これは、カズキが【テレポート】を使えるようになってから、世界各地の依頼を受けれるようになった弊害だった。そのせいで、現在では余程の事態でもない限り、彼らに依頼が来なくなったのである。
カズキのお陰で装備に金の掛からないラクト達と違って、普通の冒険者は稼がなくてはならないからだ。
「じゃあ早速行きましょうか。カズキ、お願いね」
「わかりました」
最終確認を終えた一行は、カズキが開いた『門』へと喜び勇んで突入する。そして、その足でブロンズランクへの昇格の条件を満たすと、いつものようにリリーのいる冒険者ギルドへと足を運んだ。
「・・・・・・お待たせしました。こちらが皆さまのライセンスとなります」
ライセンスを受け取った一行は、真っ先に自分のランクを確認する。その結果、ジュリアンとソフィアはオリハルコンランク。ラクト達はプラチナランクであることが判明した。
既にカズキの関係者が常軌を逸している事を知っているリリーは、今度は取り乱すこともなく、淡々と仕事をこなす。
「まずはプラチナランクのダンジョンからだな」
カズキはそう言って、ギルドのダンジョン情報には載っていないダンジョンを魔法で探すと、即座に【テレポート】を使って現地へと跳んだ。
「ここがプラチナダンジョンだ。じゃあしっかりな」
魔法で一通り中を調べたカズキが、そう言ってラクト達を促す。このダンジョンに突入するのは、ラクト、フローネ、マイネ、エスト、コエン、タゴサクに加えて、カリムとお目付け役のアレン、そしてクレアだ。
彼らはカズキの言葉に頷くと、ラクトを先頭にしてダンジョンへと入っていった。
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