第179話 調教完了?
「申し訳ねえ!」
カズキの不意を突いて【ブロウアップ】を使ってしまったタゴサクは、戻ってくるなり(因みにだが、手合わせから二時間が経っている。なお、復活した神殿から王城は目と鼻の先の距離だ)土下座して、床に頭を叩きつけた。
「・・・・・・なんの話だ?」
「ニャア?」
頭を下げられた当のカズキは、いきなりの土下座の理由が分からず、ナンシーと顔を見合わせる。
「へ?」
予想と180度違う答えが返って来たタゴサクはこれに困惑し、騒ぎを聞きつけ(今まで模擬戦をやっていた)集まってきたフローネ達に、助けを求める視線を投げかけた。
「どうしたんですか?」
タゴサクの視線を受けとめたフローネがカズキを振り向く。
「いや、なんかいきなり謝られた」
カズキの言葉にフローネも困惑の表情を見せる。彼女にもタゴサクの行動は不可解だった。他のメンバーもフローネと同じ気持ちのようで、首を傾げている。
そこでフローネは、土下座しているタゴサクに事情の説明を求めた。
「だってオラ、カズキさんに全く歯が立たなくて・・・・・・。恩人に暴言を吐いたり、殺すつもりで戦ったり、最後は墜落する所を助けてもらったのに、不意打ちで自爆しちまったし・・・・・」
要領を得ないタゴサクの話を要約すると、どうやら彼は、自分が卑怯な真似をした事を恥じているという話だった。
「「「「「・・・・・・?」」」」」
タゴサクの言いたかった事を理解した五人は、揃って疑問の表情を浮かべる。
彼らがカズキを相手にする時は、不意打ち、だまし討ちなど当たり前。そこまでしてもカズキに攻撃を当てる事など出来ないのが現状なのだから。
「タゴサクが何か騒いでいたから様子を見に来てみたけど・・・・・・。中々カオスな事になっているわね」
全員が頭の上に?マークを浮かべていると、そんな言葉と共にエルザが現れた。
ちなみにだが、方向音痴のタゴサクをここまで連れて来たのは彼女である。
神殿で復活し、王城を背に走り出したタゴサクは案の定、遭難しかけていた。そこへ孤児院からの帰り道で『カズキさんを爆殺しちまったかもしんねぇ!』などと、
「ねーさん。何かわかったのか?」
「まあね」
カズキの言葉に、エルザは自信あり気に頷いた。
「要は認識のズレよ。タゴサクと他のみんなとの」
「どういう事?」
「みんなはカズキの強さを知っているけど、タゴサクはそうじゃないって事。【ブロウアップ】? その魔法でカズキを爆殺したかもって考えたという事は、タゴサクが少し頑張ればカズキを殺せるって思ったって事でしょ?」
エルザの言葉に納得の顔をする、タゴサク以外の一同。確かにカズキの強さは異質すぎて、直に見ないと信じられないと思ったからだ。
「じゃあ実際にその身を以て体験してもらおう。丁度、検証したい事が出来たしな」
カズキはそう言って、斬り飛ばしたタゴサクの剣を再び修復した。そして、何故かミスリルの部分が半分になっているので、再び魔力を込める。
「これでよし。さあ、付き合ってもらおうか」
その言葉と共にマジックアイテムを起動し、話に付いてこれていなかったタゴサクに、強引に剣を持たせる。
「さあタゴサク。【ギガス〇ッシュ】だ」
「いや、それは出来ねえ」
先程と同様に、力が漲ってくる感覚を覚えたタゴサクは、カズキが自分にさせようとしている事を悟ったのか、キッパリと要請を拒否する。だが、タゴサクに拒否権はなかった。
「じゃあ検証その一だ。【ライトニング】」
その言葉と共に、カリム用に創った魔法を早速発動するカズキ。すると狙い通りに、タゴサクは金色の戦士へと変化する。
「先程は不覚を取ったが、今回はそうはいかねえ。何故ならば、今のオラはさっきまでオラよりも強ぇからだ!」
変身するなりそう叫び、カズキに向かって突撃するタゴサク。どうやら、性格も変わっていないようだった。
「うん、予想通りだな。雷系の魔法なら、【ギガ〇イン】じゃなくても良いみたいだ」
対するカズキは暢気にそんな事を言いながら、エルザの助言通り、タゴサクの目には追えない程度のスピードでこちらからも接近し、鳩尾に掌底を叩きこむ。
「ぐはっ!」
「この程度か?」
一撃で戦闘不能になったタゴサクを、嘲笑うかのように見下ろすカズキ(タゴサク視点)。その事が我慢ならなかったタゴサクは、腹いせに再び【ブロウアップ】を発動し、またも棺桶になって飛んで行く。
そして一分後。タゴサクはまたも金色の戦士へと強制的に変身させられていた。
色々と面倒になったカズキが【テレポート】でタゴサクを回収し、棺桶の蓋が開いた瞬間に変身の条件を満たしたからだ。
「ミスリルが半分になっているからか、さっきよりも力強さがないな。これはやっぱり、死ぬと所持金が半額になる呪いが関係してるのかな?」
「はっ! さっきのは夢か? ならば死ねええええええい!」
正気に返る瞬間がなかったせいで、まだまだ殺ル気満々のタゴサクが突撃する。それをカズキがカウンターで戦闘不能にし、タゴサクが【ブロウアップ】を使う。このサイクルが何度か繰り返された。
「うん。金を持っていれば、剣のミスリルが減る事は無いみたいだな。これからは少しでもいいから現金を持たせるか」
その結果わかった事は、代々のタゴサクが金が減るのを嫌い、現金を持ち歩かなかった事。そして、
「うう、もう勘弁してけろ・・・・・・」
変身した状態で散々に負かされたからなのか、金色の戦士になったタゴサクを普段通りのタゴサクに矯正出来る事、だった。
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