破壊衝動

まゆし

破壊衝動

「色んな考えで今までの人生遊んできたんだろ?あなたの人生設計は前半に全振りだろ?間違ってると思われる友人に、間違ってると言えなくなったら終わり」


 突然、友人からこんな発言が飛び出してきた。どうやら、忌憚なく意見を述べたところ、相手を怒らせてしまったようだ。それを愚痴りに私を夜中のファミレスに呼び出し、怒らせてしまった発言をそのまま私に投げてきた。


 昔から、敢えて気を遣わずハッキリ言うタイプだったから、ただの一個人の意見であることは、あの怒った友人も私もそれは解ってる。それでも腹が立つものは腹が立つ。悪気があろうがなかろうが関係ない。


「知らず知らずに善意で人を傷つけるって言われた事はある。そう言われたら『お前もな!』以外の答えがないよ」


 そう言って平然と笑っている。

『自分のエゴ』と解りながらも言葉を押し付けてくるところが迷惑千万である。さらに付け加えたい。毎回夜中に呼び出され、そんな話をしてくるな、と。


 人生設計の話なんて、私だって言われたら嫌になる一言だった。「何も知らないくせに!」と言いたくもなるし、怒る気持ちも解る。私は冷静に答えた。


「言われたくないであろうことは、敢えて言う必要はないし、それを言ったところで、相手が受け入れないなら、責任取れるわけじゃないから、言わなくたっていい。足を踏み込むべきではない」


 そう言って帰ろうと立ち上がるが……


 友人はいい議論相手を見付けたかのように畳み掛けてくる。


「それは正論。まぁ、1000万レベルになると年収も隠すよね。そんなこと隠されての友人ってねぇ~と思います。私の価値観からすると、友達は友達内で助け合うべき関係で、それには正確な情報が必要だと思っております」


 嫌みったらしく言ってくる。苛立つ。こちらが正論を言ってもこのように話をずらして立ち回る。友人は自分の意見を正当化することや、とにかく相手を論破することが好きだからだ。私が怒れば満足して終話となるだろう。


 しかし、話を切り上げようとしても、切り上げさせてもらえない。それならもう折れる必要もない。

 グラスに入ったメロンソーダが氷で薄まり、不味そうな淡いグリーンになっている様子を立ったまま眺める。


 正確な情報とはなんだ?年収まで教える必要があるのか?相手の心情を無視した上で、年収からプライベートのタイムスケジュールまでを情報として共有するのが友人?そもそも、コイツが言い換えた『友人』と『友達』に何か違いがあるのか。


 ──コイツの価値観が、おかしいんじゃねぇの?


 理解不能を越えて激しい嫌悪感を抱いた。ちなみに、私は友人だと思っているが、先の報告など一切していない。


 ──つまり。


 静かにテーブルに置かれたカトラリーの中から、ナイフを手に取った。


 それから、聞いてみた。これが最後の質問だ。


「具体的に何を助けるの?」


 自称、救世主トモダチが言った。


「全ての困難」


 言うが早いか私の持つナイフが一閃する。


 目を押さえて身をよじり、その悲鳴に店員が駆け付ける。


 私は、それを横目で見ながら出口へ向かう。




「オトモダチにヨロシク」

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