第5話 -侍とギルド-
話を受けギルドの建物へと入る冬真。
通された先は、大きな掲示板に貼り出された紙が中央に貼ってあり脇にカウンター、その反対側には、広めの食堂が広がっていた。
仕事から帰ってきたと思われる様々な武器をを持つ傭兵たち、皆一様に見たことのない鎧のようなものやや動きやすそうな身なりでこの場を行き来する。
すれ違いざまに珍しいものを見るような目でこちらを見てくる人々。
異国の地で侍というのは、珍しいのだろう。
某は刀と脇差、他の者も多種多様な武器を携えているため、それほど目に付くような感じでもないと思われるが黒い羽織に藍色の長着に黒の袴。
着物と刀が目立っている要因の一つだろう。
そして、魔法とやらで話はできるものの書いてある文字はさっぱりだ。
「ここは、食事処か?」
フィリアに小声でたずねる。
「食事どこ? そういえば夕飯のお時間ですもんねぇ。私もお腹空いたなぁ」
「すまぬ、この場所は食事をする所かということだ」
「ええ?、あ、ええっと、ここはギルド食堂って言ってギルドの料理人が安く食事を提供してくれるの。メニューは、結構多くてどれもおいしいですよ! 帰りに寄ってみますか?」
「それは、いいでござるな!」
「それじゃ、このあとに傭兵になるための手続きがいろいろとあると思うので終わったら寄りましょう。今日は助けてもらいましたし奢りますよ!」
「おお、かたじけない! その好意に甘えるとする」
カウンター横の裏手へとつながる通路を通り、木目調に金属で加工されたおしゃれなドアを開けるとソファと横長のテーブルが置かれている応接間へと案内された。
レイラとの話は、終わり扉を開け応接間を後にする冬真とフィリア。
書類を持って確認するレイラが受付仕事で板についた笑顔を浮かべる。
「書類は書き終わりましたのであとは、検査をして申請するだけです。いろいろと書くものが多くて大変だったかと思いますがお疲れ様でした!」
「拙者、この地の言葉はまったくもって知らず代わりに書いていただきかたじけない」
日本語ではだめだとわかり、フィリアに書く物を丸投げした侍。
「あはは、ついてきて正解でした。そんな頭を下げなくてもいいですよ! 言語魔法が編み出されてそれなりに経ちますが、まだ言葉をよくわからない方も多いので気にする必要はありません」
「それでは最後に身体能力検査を行いますので奥の試験場へと行って待機しててくださいね」
応接室を出てレイラが指し示す先に通されるとだだっ広い空間が広がっていた。
壁には長剣、短剣、盾、槍、斧、弓等々の数多くの武器が立てかけられており、どれも手入れの行き届いている。
「身体能力検査かぁ、私も今受けたらランクアップするかな~」
「して、先ほどの話は拙者の素性を知る為の物であったが身体能力検査というのは何をするのでござるか?」
「身体能力検査は、武器をあつかった実践訓練なのですが魔法で操るダミー人形と戦います。それで魔力と力量を大まかに測ります。そして、どのランク帯までの依頼を受注できるかを決めて、そこから数々の依頼をこなしていってもらい実力がついたなと感じた時に、また同じ試験を受けていただいてランクアップしてもらいます! 自身の力量に合わず依頼未達成になってしまうのは、こちらとしても不本意な結果ですし長く続いてる伝統みたいなものですのでお手数ですが、よろしくお願いします」
「らんく…… まりょく?……」
首を傾げる冬真に対して困惑するレイラ。
そして困るレイラを見かねたフィリアが口を出す。
「ところどころ伝わらなかったところがあるみたいですけど……つまり戦って腕前を披露して階級が決まって、その階級に応じた仕事がもらえる感じですよ」
「なるほど!!」
「よくわかった!」
「やはり、フィリア殿は頭がいいでござるな」
「なんだか、うれしいようなそうでないような……」
しばらくして、新しい書類を片手にレイラは2人の魔術士を連れてくる。
一人は杖を持ち、もう一人は大きな本を持っていた。
そして静かに正座をして微動だにしない冬真を三人が見て不思議そうにフィリアへと疑問を投げかける。
「フィリア……これって何をしているの?」
「私もわからないけど……『腕前を披露するというのであればしばし、精神統一をする故、座禅を組む……準備ができたら肩をたたいてほしい』って言ってた」
「座禅……がなんだかわからないけど、目をつぶってまったく反応しないし……これ寝てるんじゃない?」
「多分寝てると思う……」
「試験の前に地べたに座って寝る人を見るの初めてだからなんだか面白い」
「笑ってる場合じゃないよレイラ! 起こして試験始めよ」
「そうね、肩をたたくんでしたっけ」
そうっと肩をたたいて準備ができましたよと耳元でささやく。
すると目をゆっくりと開き立ち上がった。
「随分と歩いてこられた様ですからね」
「お疲れなら後日でも大丈夫ですよ?」
気を遣うレイラ。だが、侍は、『一向に構わん』と言わんばかりの表情だ。
「ん? 先刻から準備を整えていた故、今からでも試験とやらをしても問題ない」
「え? はい、わかりました。それでは起動おねがいします!」
「了解しました!」
杖と大きな本を持つ二人の足元に魔法陣が青白く光り輝き、相互に稲妻のような青い光がピリピリとつながる。
『水の精霊、力を求めし者に祝福を与えんがため魔力を依り代に言霊の返し文よりきたれし力を示せ』
『アルタール・エゴ・アクア!!』
呪文を唱え中央に二重になっている魔法陣が出現する。
するとその上に水色の人が現れ、体と同じ色をした剣と盾を持っていた。
「それでは、これより召喚魔法により現れたダミーと戦ってもらいます。制限時間は30分、参ったと合図をしてくだされば途中でリタイアもできますので思う存分戦ってください!」
刀をゆっくりと抜き、状態をそのままにしてその場で屈み立ち上がる。
「よろしくお願いします!!」
「……? え、っと両者構えて!……はじめ!!!」
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