第49話 巻き回
そんなこんなで夜。
ハジメ君を縛っている魔法を、出せなくするのだけ解除して、ふにゃふにゃのまま……私とミレイの食事風景を見せつけてあげた。
ちなみに彼の両腕は拘束させてあるので、自分でどうこうすることは出来ない。漏らすだけである。
でもめっちゃ作り出すのは変わってないのである。
するとどーなるか。それは……蛇口から水がでっぱなしになるのである。おわかり?
凄いのである。普通は1、2秒で終わるものが……いつまでも終わらないのである。
文字通り彼は途中から絶叫に、悲鳴になって、最後は許しを懇願してた。
凄かったでしょー、むふふ。
宣言通り、忘れられない初体験、堪能させてあげました。
あっちなみに私もミレイにめっちゃくちゃに搾られました。てかミレイさんここんとこ激しすぎませんかね?
え? リンドゥーが許せない。あぁはい……ごめんなさい。
そのリンドゥーですが、流石にここ数日でぐっちゃぐちゃなのか、ミレイにガチ土下座してた。
しかもガチ土下座中も壊れて水漏れしてた。ありゃタイヘンだ。
という訳で色々とまあそれはそれは凄く恥ずかしいことをさせられてしまいましたとさ。
リンドゥーさんとハジメ君が絡んだりとかね。いや彼は童貞のままなんだけど。
あれはエグい。というかリンドゥーさんが無駄にその手の事がお上手すぎて、童貞のハジメ君にはどうにもならなかった。
それで目標の三回を達成したので、晴れて私とリンドゥーさんでくんずほぐれつ夜のプロレスである。
もう私持たないんだけど。とか言いながら最後までするけど。
他の面子? ギンシュとシグさんは、どうにもならなくなった挙句に二人ではじめてた。いいなー。
アシンは一人旅。どうして二人がアシンとプロレスしなかったのかって?
……実はどうやら、お二人とも初物っぽいんです。
いやギンシュちゃんは分かるけどさぁ、シグさんまでそうなの!? ちょっと信じられない。
理由を聞いたら『自分より弱い奴としたくなかった』だって。なるほど強い人ならそういう理論もあるのかも。
それで『もう私の全ては主様のモノなので、はじめても捧げる』とか言ってくれてる。嬉しい。
さてさてどこで大事な初物をむしゃむしゃいたしますかね。
ギンシュちゃんはね。なんだかんだでご令嬢だからね。綺麗な体のままでいたいよね。
とか言ってたら……『男は怖いが、そなたなら怖くないからな』とか顔真っ赤にしながら言ってた。
いやーんご指名!? ご指名ですか!? きゃーどーしよー!?
……アシンさんはごめんね。元カノのリンドゥーちゃんとどうこうしちゃう?
でもなーリンドゥーちゃんも今は私の(さらにはミレイの)『犬』だからなぁ……
あっでも汁かけるだけの人ならアリかも! ……えっそうじゃない? はーい。
とまあ毎日が実にただれた夜を過ごしているのですが(むしろ何もない農村とかだと昼間も組んずほぐれつしてますが)
だって魔物が出ないんだもーん。あと出てもハジメ君の遠距離狙撃でなんとかなるんだもーん。
そうそうハジメ君ですが、部活はアーチェリー部だったそうで地味に県大会ベスト8とかいったことあるらしくて、魔法のポーズの構えが弓なの。なにあれちょーかっこよくない!?
あんまりかっこいいから【風魔法】教えちゃった。【風魔法】で矢を作ると、空気で出来てるからインビジブル弓矢。
しかも【風魔法】の使い方によっては、追い風で速度上げたり、周りの空気を操って多少なら狙いを調整できたりも出来るらしい。
流石にまだ追尾ミサイルみたいなことは出来ないらしいけど。それでも凄い。
どうやら『魔法を使うと、自分の思った通りのコントロールが出来る』んだとか。それが【賢者】ってことじゃないのかな?
おかげでぐんぐん成長してる。いやはや素晴らしいことですよ。
【火魔法】の弓矢もかっこいいだろーなーとか思ってるので水辺のある所に行ったときにでも教えたいなって思う。
流石に森に打ち込むのはちょっと怖い。あーでも【水魔法】あるからいいのかな?
ちなみに倒した獲物は私が回収している。どーやってかって?
それがですねぇ【探知】でマップ開いておいて、倒されると探知の印の色が変わるんですけど、開きっぱなしだとまさかの≪回収しますか?≫のポップアップ表示ですよ!
なんか【探知】便利すぎない!?
いやもしかしたらこれ【ステータス】の効果なのかも。一応扱いとしては【ステータス】のマップの画面だから。
そんな【ステータス】君もついにレベル10になりましたとさ。パーティのページは人数増えて楽しく見れるし、あと凄いのはこれ! 図鑑のページがありましてね、倒したモンスターとか手に入れたアイテムとかガンガンコレクションしてくの。もう最高ですよ。
おかげで採取も楽しくなってきたので、馬車を進ませながら逐一テレポートで馬車を降りては採取して馬車に戻って、という物凄く魔力効率の悪い方法で採取を続けている。
ちなみにこのテレポート魔法……つまり【空間魔法】の話をすると、皆様ぎょっとしてた。まあそうだよね。なにせ『失われた魔法』だからね。
でもハジメ君だけは「すげぇテレポートだぁ! 瞬間移動だぁ! 俺も頑張れば使えるようになりますかね師匠!?」とかいってた。なるぞなるぞー。
私も君に教えるのが楽しみだぞー。
だってテレポートで瞬時にいい位置からインビジブル弓矢でしょ。なにその最強コンボ!? かっこよすぎじゃない!?
これがあの王都の冒険者ギルドで喚いてた彼かと思えば、いやはや成長したもんだって感じですよこのこの。
……そういや最近私は自分の魔法あんまし育ててない。育ててないというかもっと色々使えるはずなのに、光と闇ばっかり使ってる気がする。
もっと色々開発しないとなぁ。魔法の力って無限大な感じがするし。
なによりそのこう、未知の力を引き出すのって楽しいじゃない?
とまあそんなこんなで私達は旅を続けた。
それからの旅は、それはそれは順調に進んだ。
……そう信じたい。
村とか町に寄る度、シグさんとバレると熱烈な歓迎を受ける。
もはやシグさん御一行として有名になってるんじゃないか。人生苦あれば楽ありの歌が流れてくるんじゃあるまいか。
しかも正体バレてるしね。そんな御一行ありかよって話。
一番凄かったのは、少し道を外れた森の中にある獣人族の集落。
そこはもう……そもそも道をがたごと行ってたのにいつの間にか見つかっていつの間にか連れていかれて、皆で拝まれてもうそれからはずっとお祭り騒ぎで、これ何も言わなかったら一週間どころか一ヶ月くらいお祭り続くんじゃない? ってくらい熱量が半端なかった。
流石に数日で立ち去ったけど、なんかもう色々申し訳なかった。
でも集落を出た後に、シグさんめっちゃぶすってしてて、聞いたら『気持ちは嬉しいんだけどアタシゃそんな聖人でも神様でもないんだよ。いい加減分かって欲しいんだけどねぇ』とか言ってた。いやちやほや具合はすんごく羨ましいぞ!!
……まあ流石に拝み出すのは私の場合だったとしてもやめて欲しいけど。
そんなあるひ。
「なあ、本当にこの道程で行くのか!?」
ギンシュがおもむろに言った。
「あの、僕関係ないと思うんですけど」
「性行為をしてない人物の話ではない! 道のりの話だ!」
「あっ、失礼しました。どうにもコンプレックスなのでついつい」
「こ、こんぷれっくすとはなんだ?」
「えーっと……自分が気にしている自分のこと、ですね。女性だったら胸の大きさとかです。僕は、というか男性は誰もが未経験の部分を気にしてますから」
「なるほどな……それを『こんぷれっくす』と呼ぶのか。私だと魔法が使えなかったこととかだな」
「え、そうなんですか!?」
「そうだぞ、私もハジメのようにエリィに教えて貰ったのだ……で、本当にこの道程で行くのか?」
なんか二人で面白そうな話してた。
「もちろんですよ」
「しかし……」
「はいじゃあみんなに聞きまーす! ギンシュちゃんのご実家訪問したいひとー!」
私の声に、スッスッスッ、と手を上げる皆。
「そんな大したところではないがな……分かった。向かうとしようか」
「いえーい」
「と言っても、先日の分かれ道からはもう一本道なのだがな」
「そういえば、景色が変わってきたですぅ」
「ホント。緑が無くなって、岩や荒れ地が目立ってきたわね」
ミレイとリンドゥーの言う通りだ。今は峠道を登っているのだが、びっくりするほど木がない。山肌はそのままで、岩石がごろごろしている。
「バニング伯爵領は、東側からくると小さな峠を越えなくてはならん。南に抜けるのは楽だがな。そしてこの山を越えると、気候が変わるのだ」
「へえ……」
「そして以前交易の町と言ったが、北側の森を抜ける道程は、山を越えれば分かるが殆ど通れる道のりが限られていてな、ほぼ全てがここ、バニング伯爵領に集まってくるのだ。そしてここから、東、南、西へと分岐するのでな、大したものは採れないが、そうやって金だけは回っているのだ」
なるほどねぇ。
「それにしては貧乏伯爵家って言ってなかった?」
「うぅ……それは……」
「あれじゃないですか? 税による金線的な収益はあるけど、食べ物とか生活雑貨とかそういう必需品が手に入らないから、そういうのを入手する為にお金を使っちゃって、無いんじゃ」
「そうなのだ……恥ずかしながら。しかしハジメはよくそのような事が分かるな」
「こういうのって、大体ある程度は決まってるんですよね。地域の発展する条件とか、逆に戦争とかになると真っ先に狙われる地域とか。そういう意味ではここはとても危険ですよね」
「その通りだ! 交通の要所だからな。かつてはこの地域もかなり荒れ果てたというか、戦乱期によって土地がここまで荒れたとすら言われている。かつては北にあるような豊かな森がここまで広がっていたとも……」
「そんな馬鹿なぁ」
「幾らなんでも、それはちょっと……」
私も言った。だって相当離れてるよ?
「まああくまでも伝説だ。しかし、植生や動植物も、基本は北と一致しておるのだ……関係があると考えるのが自然であろう」
なぁるほどねぇ。面白い仮説だねぇ。
そんな話をしていると峠を登り終えた。馬達を休ませるので一時休息である。
折角なので馬車から出て外を眺めてみる。
……凄いなぁ。今まであんなに農地やら森やらあったのに、山越えただけでこんなにも違うのか。
私の目の前には、何もなかった。
いや、山の裾野を下った先には、本当に荒れ地とか岩石とかごつごつとした地肌がむき出しになっており、その先にようやく一つだけ、大きな町が見えるのだった。
ギンシュは大きく両手を広げて言った。
「ようこそ! 我がバニング伯爵領へ!」
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