勝利の行方は誰のもの

江田・K

第一話 対峙

 衆人環視の真っ只中、二人の男が四角いリングで対峙していた。

 血と汗の染み付いたリングは、彼らにとっては他のどんな場所よりも馴染みのある場所だろう。居心地がいいかどうかは別として。


 赤コーナーはチャンピオン、生田柴門いくたさいもん。右利き。低い身長に筋肉の鎧をまとった強靭なファイターだ。見た目通りのインファイト巧者。


 一方の青コーナーは増戸京ますどきょう。同じく右利き。ひょろりとした長身で、リーチの長さを活かしたボクサースタイルの技巧派だ。


 両者がリング中央に寄り、レフェリーチェックが入る。


「久しぶりだなァ、京。よろしく頼まァ」

「……今日こそ、僕が勝つ」

「ハハッ、ソレ毎回言ってんゾ?」


 彼らの因縁は学生時代――アマチュアボクシングの頃まで遡る。

 これまでの対戦は、全て生田が勝利で終わっている。

 増田にとっては因縁の、越えられない、そして絶対に越えなければならない相手。

 それが生田だった。


 何か言い返そうとした増戸より先にレフェリーが注意を飛ばす。


「私語は謹んで」

「ういっス」

「……はい」

「よろしい。頭突きバッティングベルト高より下への打撃ローブロー等、故意の反則は減点します。クリーンなファイトをするように」


 二人がそれぞれのコーナーに戻り、試合開始のゴングが鳴る。

 大いに盛り上がる客席。

 しかしその盛り上がりは一転、どよめきに変わった。



 ――右利きの増戸が左構えサウスポーに構えたからだった。

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