復旧工事
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戦いの跡、それを直す者
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アージェスト海域内 ザバファール大陸 ビースティア大島
先日の戦いで被害を受けた港や街の復旧工事が行われていた。あらゆる種族がそれぞれにあった現場に就き工事を円滑に進めていく。
その様子をクトゥルーと魔王が視察していた。
「順調のようだな」
「そうね~、早めに指示を出してたからすぐに取り掛かれたわ~」
そんなクトゥルーの表情はどこか浮かない。魔王は横目でその表情を見た。
「……もう少し上手くやれたと思っているか?」
「ええ、そうね」
珍しく真面目な口調で答える。
「ちょおっと慢心してたわ~……。おかげで怪我させちゃった子もいたしね~」
あの時、すぐに住民を地下へ避難させていた。しかし、想像以上に攻撃の威力が強く、地下にも衝撃が伝わり壁の一部が落下、住民一名が軽傷を負ったのだ。
誰も傷付けないつもりでいたクトゥルーにとっては後悔する課題となった。地下に避難させておけば問題無いと考えた自分自身の慢心が招いたのなら尚更だ。
クトゥルーと魔王は【浮遊】で現場を見て回り、特に酷い港で足を止めた。
大破した船は直り、ボコボコに凹まされた石張りの港は前と遜色ない状態にまで修繕され、屋台や建物も修理工事が進んでいた。
「ここは特に酷かったが、死亡した者がいなくて良かったではないか」
「そりゃ~そうかもですけど~」
グチグチ言うクトゥルーに魔王は溜息を付く。
「クトゥルーよ、完璧などありはしない。我とて今回の戦いで反省すべき点は山ほどある」
魔王はクトゥルーと向き合った。
「お前がするべきは後悔する事では無く次に活かせるかどうかを考える事だ。問題点を洗い出し直すべき所は直し、良かった点は継続する。ここのトップに立つ者として当然の義務だ。それが出来ると見込んでお前をその立場に置いているのだ」
クトゥルーに力説し、言い切った。それを聞いたクトゥルーは小さく溜息をする。
「そのセリフ、何だか久し振りに聞いたわ~……」
十二魔将になったばかりの頃、魔王から現地のトップに任命されてしばらくは右往左往して上手くいかない事が多かった。それが嫌になって一日無断欠勤をしたら魔王が直々にやってきたのだ。一対一で面談をして、その際に言っていた。
クトゥルーは復旧工事が進む街を見渡した。
「……いつまでもクヨクヨしても仕方ないわよね~。復旧が終わったら魔術補助とかで強化してみようかしら~」
「一任する。しっかり頼むぞ」
魔王とクトゥルーは他の現場を視察するため、その場か移動した。
・・・・・
魔王は書斎に戻り、今回被害に合った場所、被害状況、修繕に必要な予算、派遣する者達、工事の日程などの書類に目を通していく。
クトゥルーの場所以外は予算や派遣をあまり必要とせず、既に工事が完了した場所が8割に当たる。
「(これで全部か)」
書類に目を通し終わり、不審な点が無いことも確認し承認印が必要な物に印を押していく。
「(あとは、神族との一件を皆に話すだけだな)」
椅子にもたれかかり、七つの冠と十二魔将全員に神族との一件を伝える書簡を【書類作成】の応用で瞬時に作り上げ、【転移】で送った。
「さあ、反応はどうかな?」
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お読みいただきありがとうございました。
次回は『緊急魔族会議』
お楽しみに。
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