第七章 「過去の襲来」
右手でポケットから端末を取り出した。プロダクションに帰還のメッセージを打つ。
「買い出し、完了しました」送信。「帰還します」送信。
四日後に迫った、最終審査を兼ねたアヴァロン・プロダクションの遠征。
ルナは、それに必要な日用品などの買い出しで、街に出ていた。
プロダクションでは寮生活だ。外出・外泊は申請しなければならない。今回は最終審査の準備のため、特別許可をもらっていた。
門限は午後八時。必要なことをささっと済ませて、街遊びで気分転換をすることにした。
気になっていたコートやロングブーツ、そして、新作のファンデーション。自分のアッシュグレイの髪色に合うか試してみた。
色鮮やかにデコレートされた写真映えのするスイーツ。行列に並んで、ようやく買えた。クリームの素朴な甘さとベリージャムの甘酸っぱさが口の中で混ざりあったとき、幸せを感じた。
柔らかな日差しが降り注ぐ公園。ベンチで感じた優しい風。散歩中の元気いっぱいなコーギーに手を振ると、笑い返してくれた。こちらも自然と笑顔になった。
(次に遊びに行けるのは、もうちょっと先になりそう……)
それに、もしオーディションに合格したら、自分はキャメロットの一員。そうなったら、もっと忙しくなってしまうのかもしれない。でも、そんな忙しさなら全然問題ない。
そう思えるほど、ルナは実技審査の結果に満足し、大きな自信を持っていた。
相手は、クレア。おもしろいくらいに自分の思惑どおり戦いになった。
*
紅い半透明のバイザーに覆われ、表情が読み取れなかったが、クレアは明らかに焦っている。
彼女がぐっと踏み込んできた! 予想外の動き。
クレアがダメージを覚悟して、長大な槍を突き出す!
ルナもコンクエストスキルをまとわせたナイフを突き出す。クレアの左肩に傷をつけた。
彼女の槍も、ルナの左肩を貫いている、はずだった。しかし、
槍の切っ先が肩の表面でひしゃげていた。さらによく見ると、少しずつルナがまとっているアドミレーションに溶け出していた。
これが、ルナのコンクエストスキルの特性だった。クレアの槍は、今や、ルナのアドミレーションと同質になっている。自分のアドミレーションは、自分を決して傷つけないのだ。
何が起きたのかわからず、クレアは戸惑っているようだった。
ルナは、左手で槍をつかみ、引き抜くように肩から外し、そのままぐいっと引っ張った。彼女がつんのめるようにして、倒れてくる。
それに合わせて、右手のナイフを構える。
クレアのわき腹が、ナイフの前に。音もなく突き刺さる。
「うっ! ぐ……」
クレアのうめき声が聞こえる。
そのとき、マーリンが立ち上がり、戦闘終了を告げた。
ナイフを引き抜く。クレアがお腹を抱えて、床に膝立ちになった。
ルナのコンクエストスキルによって、全身に灰色のしみがじわじわと広がっている。
先輩を支配し、勝利できた心地よい優越感が一気に染みわたる。
ルナが輝化を解除した。灰色のしみが消えていく。
クレアは慌てるようにヘルムを外した。目が合うと、彼女は視線を外してうつむき、恥ずかしさに耐えるようにアリーナから足早に退場していった。
*
(キャメロットに勝てたんだ!)
ルナは心の中で叫ぶ。
今振り返っても、そのときと同じ突き上げるような喜びを感じることができた。
候補者の中でキャメロットに勝ったのは、ルナだけ。その事実が自信と確信になっていた。
昨日のマーリンやキャメロットの三人とのミーティングでも、遊撃手としての動き方、特殊な輝化スキルの活かし方をしっかり話し合った。それに、マーリンからは、必ずうまくいく、とお墨付きまでもらったのだ。
もうすぐ訪れる輝かしい未来に、胸を躍らせていたとき、きぃんと耳鳴りがした。
耳をすますと、さっきまで聞こえていた街中の喧騒がなくなっていた。
ここは街はずれのバス停通り。うるさくなるような場所ではない。しかし、これほど静かになることもないはずだ。
突然、こつこつという靴音が聞こえてきた。
東の空から、紫色がせまり、その奥からゆっくりと夜がやってくる。
その夜とともに、誰かがやってきた。
大きなフード付きの真っ黒なローブをまとっている。
フードをすっぽりとかぶり、開口部から黒く長い髪が垂れていた。ちかちかと灯りだした街灯の光が、かすかに見える顔の白さと、なまめかしい唇を照らしていた。
黒ローブの女性とすれ違う。この街には不釣り合いなファッションに気後れして、顔をそらした。そのまま通り過ぎようとしたとき、彼女が言葉を発する。
「あら? あなたは、アイドルね」
ルナは、その言葉にただならぬものを感じた。荷物を放り出して、彼女から飛びのく。自分の聖杯連結力で彼女を探査すると、彼女から大量のイドラ・アドミレーションを感じた。
ルナは輝化武具であるナイフを生成する。
「人型イドラ……なの?」
しかし、黒ローブの女性は人間にしか見えなかった。
彼女がゆっくりと振り返る。相変わらずフードに隠れて顔が見えない。
「ルナ、というのね。アヴァロン・プロダクション! ちょうど探していたの」
「なんで……アタシの名前がわかる?」
「キャメロットのオーディション……。あなたは、その候補者。他の候補者は……」
ルナのことを次々と言い当てていく。気味が悪かった。
「質問に、答えろ!」
両手のナイフを構える。
「私は、マリア・レイズ。『ノヴム・オルガヌム』というプロダクションに所属する『黒のアイドル』です。マリアが、ルナの目を覗きこむ。「あなたは、アヴァロン・プロダクションのルナルクス・アルグレイス。『白のアイドル』ね」
「黒……? 白……?」
「あら、知らないのね。こんなことも教えないなんて、どうかしているわ」
マリアがフードをおろす。豊かな黒髪がこぼれ落ちた。
穏やかな瞳と微笑を浮かべた表情、ふくよかな体つきに、隙の無い所作。余裕のある不思議な雰囲気で、彼女がただ者ではないことがわかる。
「簡単です。白のアイドルは、あなたたちのようなアイドル・アドミレーションを生成する聖杯を持つ者です。そして、黒のアイドルは、聖杯をイドラに侵された者。イドラ・アドミレーションを生成する聖杯を持つ者です」
「聖杯を侵される……」
「そう。イドラ化は知っていますね? その最終段階が、黒のアイドルになることです」
「命を失うんじゃないの?」
「イドラ化したアイドルのほとんどが命を失います。しかし、まれに黒のアイドルになることがあるのです」
(知らなかった。そんなこと……)
マリアがルナの両手首をつかむ。
大きく垂れ下がったローブのすそ。そのかたちが崩れ、大きな黒い手となった。ナイフごとルナの両手が、彼女が操る黒い手に飲み込まれる。
「私は、聖杯連結がとても得意なんです。
連結した相手の表層記憶から深層記憶まで自在にアクセスできます。
この力を使って、白のアイドルの記憶を読み、その子が所属するプロダクションの情報を集めています」
「記憶を読む? そんなことが……」
そのとき、マリアが何かに驚いたように目を見開く。
「あなた……そう、だったの……。今日、出会えて本当に良かった。ぜひ、あなたとお話ししたいわ。あなたのこと、もっと知りたい」
黒い手が背中にまわる。
「離して! アタシはあなたと話したくない!」
ぞわっ、という不気味な感覚が背中に走る。
「ごめんなさい。私は、あなたとどうしてもお話しがしたいの」
マリアに抱きしめられた。
彼女の右手が、やさしく柔らかく、ルナの頭をなでる。彼女の手の温かさを感じたとき、ルナの意識がすうっと遠のいていった。
ルナが目を覚ましたのは、街灯に照らされたベンチの上だった。
西の空が微かに赤い。気を失ってから、時間は経っていないようだ。それに、遠くの景色も変わりがない。
「気がついたみたいね」突然、左からの声。マリアだ。ベンチから立ち上がる。
「アタシに、何をしたの!」
「あなたの聖杯と、記憶を探索したの」
「そんな……アタシ、どうなるの。その、黒のアイドルになっちゃったの? もうプロダクションにはいられないの!」
「いいえ。あなたの記憶を読んだだけよ。あなたは何も変わっていない。でも……」
微笑をたたえていたマリアが、急に真剣な表情でルナを見つめる。
「あなたは、十二歳の頃、記憶を改ざんされているわ」
「なによ、それ……」
まったく理解ができない。そんな言葉を身の回りで聞くことにリアリティを感じない。
十二歳……。伯母様、今のお義母様のところに引っ越したときだ。
「改ざんされたって、誰に?」
「……本当のお母さんよ」
「何、言ってるのよ。母様は、その頃、床に臥せっていたわ。そんなことできるはずがない」
マリアが立ち上がり、ルナに近づく。
「灰色のアドミレーション。そして、巨躯の人型イドラ」
ルナがびくっとからだを震わせる。
(この人はアタシのすべてを知っているの?)
「あなたを悩ませる、二つの事柄の答えが、本当の記憶の中にある。取り戻してみる気はない?」
「……記憶が正しくないのは、イヤ。でも、怖い……」
「出会ったとき、あなたを利用してアヴァロン・プロダクションの情報を得ることだけを考えていたわ。でもね、記憶を読むうちに、あなたをこんな状態にした人たちに怒りを覚えたの。
あなたを苦しみから解放してあげたいと思ったのよ」
「苦しみが、本当になくなるの?」マリアの共感が、ルナのこころを開く。涙がにじむ。
「今すぐなくなることはありません。でも、ひとりで悩まなくてもよいのです。私がいっしょに悩み、苦しみます」
「……わかった。記憶を元に戻して、正しいアタシに戻して!」
「わかりました」
マリアが、あやしくも美しい微笑を浮かべ、再びルナを抱きしめる。右手で頭をなでられた。
脳裏に映像が浮かんでくる。
――白く美しい両手を灰色の海に浸す。底に溜まっているものを手探りでより分けていく。固く冷たい手触り。すくい上げる。灰色の厚い氷の中に輝く光が閉じ込められている。じっくりと観察していると、突然、氷が解けた。爆発するように光が広がる――
ルナの全身に悪寒が走った。マリアに抱きしめられたまま、からだをかきむしる。嗚咽するようにえづき、がまんできずにマリアの胸の中で嘔吐してしまう。マリアはルナの背中をさすりながら、だいじょうぶだよ、とつぶやきながら抱きしめ続ける。
「……かはっ、うぅ、なに、これぇ……」
のどの異物感、全身のかゆみ、お腹の気持ち悪さ、手足の倦怠感。津波のように襲ってきた。
そして、今度は波が引くように頭の中がすっきりと整理されていく。記憶が、かちゃかちゃと音を立てて積みあがっていくようだ。
「さぁ、私といっしょに語りつくしましょう。あなたが十二歳だったときの真実の記憶を……。逃げず、ひるまず、正面から向き合って」
ルナは、戻ってきた記憶が自分の望まない結末を迎えることがわかっていた。しかし、思い出さずにはいられなかった。
意識が薄れていく。目の前にいるマリアの柔らかいからだに包まれている感触がなくなる。代わりに目の前に現れたのは、今より幼い自分。きっと十二歳の自分。
彼女が、解けた氷の中にある光をつかむ。光は、より強くなった。今の自分をかき消すように光が押し寄せてくる。やがて、自分の輪郭がなくなった。
*
「輝け!」
ルナは輝化を宣言した。自分の胸からアドミレーションがあふれる。
薄緑色の光に包まれて、ルナが輝化防具をまとっていく。迷彩服、首と顔半分をすっぽりと隠すストール、タクティカルベルト、ひじやひざのプロテクタ、ブーツ。
そして、両手に集束した光から、彼女の輝化武具であるナイフが生成された。
集中を解いて、ひと息ついたとき、横から歓喜の声がした。
「ルナ……やったわ! ついに輝化ができるようになったのね。ママ、うれしいわ……。ようやく夢が叶ったのね」
まるで、自分が輝化に成功したかのように、泣きながら喜ぶ母親。彼女を見ていると、自分が何をしているのかがわからなくなる。
ルナは、アイドルになりたくなかった。知れば知るほど、その気持ちが強くなっている。
人類の天敵として、世界中を恐怖に陥れるイドラ。その怪物に対抗できる唯一の存在がアイドルだ。輝化ができるのは女性のみであり、アイドルになれるほど聖杯が成長する女性は限られている。つまり「選ばれた正義のヒロイン」だ。
アイドルそれぞれの個性を輝かせて、人類の共通の敵を討つ。否応なく世界中から注目される存在だった。十年ぐらい前から、アイドルとしてイドラと戦いながら、「アイドル」として芸能活動をする人が出てきた。
ルナは、そういう人前に出て目立つことに興味がないし、嫌悪していた。
また、イドラと戦えば、イドラ化のリスクがある。正気を失ったり、心を壊されたり、死んでしまったり……。そうなったときのことを考えると、とても怖かった。
「これから、きらきらした場所でたくさん活躍できるわ! ルナ、がんばりましょうね」
母親にとって、アイドルとは、この程度の認識なのだ。彼女は子どもの頃、アイドルに憧れていた。芸能活動のアイドルだ。オーディションで選ばれる直前に、父親の強い反対で白紙になったらしい。アルグレイス家は、この国の軍隊の重要なポストを代々任せられてきた名家だ。そういう浮ついた仕事を嫌悪しそうな家風であるのもうなずける。
その後、母親は家を出た。
ルナの父親と駆け落ちし、新たな生活を始めたが、ルナが生まれてすぐ、父親は病死した。
自分の愛した人と死に別れ、露頭に迷う。しかし、家には戻りたくない。そんな母親のことを心配した伯母が、生活を支援してくれていた。ルナが十二歳になった今でも、母親とルナが普通に生活できているのは、伯母のおかげだった。
「でも、衣装が……なんだか軍人さんみたいね。まるで……お父様みたい」
母親の顔がくもる。ルナは慌てて輝化を解除した。
「衣装は少しずつ変えることができるみたいだから! 本に書いてあった。だから、ママの好きなかたちにもなるよ」
「あら、そうなの。じゃあ、どんな衣装がいいかしら……」
母親の思考の矛先が別のものに向いた。彼女の不興を買わずにほっとする。
ルナが十一歳になったとき、聖杯がアイドルに適していることが判明した。
偶然にわかったことではなかった。ルナが生まれた直後から毎年続けていた聖杯の適正検査で、わかったことだった。
母親は、ルナがお腹の中にいるころから、自分の子どもを必ずアイドルにすると、自分の夢と理想を託していたらしい。母親が言う「アイドル」は、イドラと戦うアイドルなのか、芸能活動をするアイドルなのかはわからない。彼女の言動からすると、両方だと思っている。
ルナの聖杯にアイドル適正があるとわかってから、母親は自分の姉に連絡し、フリーのプロデューサーを紹介してもらった。彼とは、プロダクションに入所せずとも、ルナがアイドルとして充分に活躍できるようになるまでレッスンを行う、という契約を行ったようだ。
レッスン開始から一年が経った今日。ようやく輝化ができるようになった。
母親にとっては自分の夢と理想の種が芽吹いた瞬間だった。それはそれは大きな喜びなのだろう。しかし、ルナにとっては、イドラと対峙することが決まった恐怖のはじまり。そして、母親の理想を押し付けられる我慢のはじまりだった。
イドラへの恐怖と、アイドルをすることの嫌悪感をねじ伏せて、ルナは、プロダクションに所属しないローカルアイドルとして、イドラ退治を続けていた。
主な活動内容は、契約したプロデューサーを通してISCIから依頼される案件に対応すること。そして、ソーシャルネットワークで飛び交うイドラの目撃情報を解析して、現地に駆けつけ、イドラを退治することだった。
やる気はまったくなかったが、我慢強さと器用さによって、ここまで大きな失敗なくアイドル活動ができている。
普段のアイドル活動で、心を抑制することは簡単だった。母親との十二年間の生活で慣らされたからだ。今の状況もその延長でしかなかった。しかし、イドラとの連戦で負ったからだへのダメージや疲労が重なると制御しきれないときがある。
前の戦いで油断し、身体的なダメージを負ったため、家で安静にして治療に専念していたとき、イドラ発生のニュースがネットワークを駆けめぐった。
母親が速く行きなさいと命令するが、ルナは動きたくなかった。普段は抑えつけている「どうしてアタシが」という言葉が、のどまで上がってきた。何とか必死に飲み下していると、母親が正論でルナを諭しはじめる。
「命が危うい人がいるのよ! 助けられるのはアイドルだけなの。行ってあげないと!」
結局、ルナはからだの痛みを抱えたまま、イドラ退治に出撃する。
なんとか退治することができたが、からだのダメージはさらにひどくなってしまった。
そんなある日、ルナが住む街に、とてつもなく巨大な黒い雄牛のイドラが侵入した。
それは、『神話型イドラ』と呼ばれる種類の個体で、文字通り、神話に登場するような伝説上の獣の姿をしている。偶然に出会うことさえ珍しいイドラだった。
八階建ての大きなマンションを横倒しにした体躯で四足歩行。全身が複雑に隆起している筋肉のかたまりだった。顔は、ごつごつとした巨岩を黒く塗り、そのまま据え付けたようなかたち。根本が太く、前に突き出すように曲がりくねった角がある。
前日までの様子から推測すると、特別な意図のない襲撃のようだった。そのイドラにとっては気の向くまま、好きなように行動していたら、そこは街だったということだろうか。
街のあちこちで、がれきに巻き込まれたり、イドラ化によって心を壊されたりして、死んでしまった人がいる。
あんな巨大なイドラは、高ランクのアイドルでないと対処ができない。街の行政機関が速やかに近隣の大手プロダクションに応援要請を行ったという速報があった。
近所の人といっしょに、郊外にある避難所を目指していた。そのとき、黒い雄牛の進行方向が変わる。ルナたちが目指す方角と同じになった。
ルナたちのグループはパニックにおちいる。
雄牛が発するイドラ・アドミレーションに侵され、走りながらイドラ化した人が、その場にばたばたと倒れていく。混乱がさらに増していく。
振り向くと、母親が真剣な顔でルナを見つめていた。疑わしく思いながら母親を見つめ返すと、彼女が力強くうなずき、変なことを言いはじめた。
「みんなを、守らないとね」
なんのこと? とたずねようとしたとき、母親が周りの人たちに向かって声を張り上げた。
「皆さん! 安心してください! 『あたしの娘』が皆さんを守ります!」
「えっ! ママ?」
突然の言葉にびっくりした。母親がみんなに、勇気づけるような言葉を伝え、もっと速く走るように促す。
ルナが母親を捕まえて、問いただした。
「ママ! 何言っているの? 早く逃げないと、あのイドラに巻き込まれて死んでじゃうよ!」
「ルナ、あのイドラと戦って、あたしたちの避難所から遠ざけなさい」
ルナには、黒い雄牛がどれほど強敵であるかがわかっていた。自分が相手をしたところで何の役にも立たない。ただ死んでしまうだけだ。
母親に対して必死に説明した。神話型イドラは、高ランクのアイドルがチームを組んで、事前準備をしっかりとしてから、勇気を振り絞って立ち向かう相手であること。アタシのような駆け出しには奇跡が起こっても勝てる相手じゃないことを。
「そんなことママだってわかっているわ。今回は勝たなくてもいいでしょ。あの怪獣を別のところに連れて行けばいいの。それくらい、あたしのルナだったらできるんじゃない?」
「それくらいって……あんなのを誘導なんてできないよ。死んじゃうよ……」
「これまで、できていたじゃない。きっと大丈夫よ」
この人には「これまでのイドラ」と「今、目の前にいるイドラ」との区別がついていない。世間知らずなのか、無知なのか、それとも本当にそう信じているのか。
いずれにしても、気持ちがまったく伝わっていないことに腹が立った。
「嫌よっ! そんなこと、やりたくない!」
声を荒げて、母親をにらみつける。黒い雄牛は、向こうのブロックまで迫ってきた。
母親の顔が、鬼のように変わる。地響きの震動にも負けない声で、怒り狂った。
「早くやりなさい! やらないと、家に入れないし、ごはんもあげないよ! 街のみんなに約束したんだから、ルナがやらないと信用されなくなるじゃない! どうせ、あたしを困らせようとして、駄々をこねているだけなんでしょ? ほんっとうに自分勝手な子ね!
あたしは親よ! 親を何だと思っているの! 親を馬鹿にして……許さないわ! さっさと言うことを聞きなさい! そんなの正しくないでしょ! いつも言ってること忘れた? 正しいことしないと、愛してあげないよ!」
彼女の言葉に唖然とした。そして、彼女のことが信じられなくなった。
これほど圧倒的なイドラを目の前にして、十二歳の子どもに向かって、何とかしろと言っている。母親の思考は正常だろうか? どう考えても無理だと思うのが普通ではないか?
彼女の真意がわからない。自分が助かるために、リンを犠牲にしようとしているのだろうか。
黒い雄牛の恐怖と同じくらい、母親のことが怖かった。……きっと、いくら考えたところでわかるはずがない。考えるのをやめた。いつも通りのことをすればいい。
こうなった母親には、何を言っても通じない。だから、従っておくのだ。自分が我慢して、子どものような彼女よりも大人になればいい。我慢するのは一瞬。ノーリスク。お手軽だった。
右手をにぎりしめる。いつもより強く。自分で自分の指を折るくらい激しく。これが我慢する痛みだ。涙が出る。涙を見せれば母親の言葉がさらに激しくなる。うつむいて袖でぬぐう。
「ママ……、ごめんなさい。アタシやります」
にぎりしめた右手を胸にあて「輝け!」と輝化を宣言する。薄緑の光に包まれて、ルナの武具と防具が現れた。
「ルナ! いい子ね。さぁ、街を救いましょう」
「はい。ママは早くここから逃げて」
「わかったわ。向こうからルナの活躍を見ているから」
後ろを振り向いて、向こうからやってくるイドラと向き合う。
(あのイドラの鼻先にアタシの全力の攻撃を当てて気を引く。そのあと、引き付けながら全速力で郊外に離脱する……。これくらいなら何とかなるかもしれない)
地響きとともに迫ってくる黒い雄牛。もうあんなに近い。地面の揺れとは関係なく、恐怖でふるえる手足にぐっと力を込める。目からあふれていた涙も止まった。
(さぁ、行くぞ)
突然、視界にノイズが走る。
夕焼け空を背景にして照り映える、がれきだらけの街。ところどころで燃え上がる炎。黒い煙を上げる廃墟を駆け、黒い雄牛に立ち向かうところだった。
ノイズが広がる。視界を覆いつくしたあと、ぶつりと音を立てて、ブラックアウトした。
*
目を開ける。
眼下には、穏やかに凪いだ灰色の海。見上げれば、雲ひとつない灰色の空。ルナは、その間で漂っていた。
灰色の世界のすべてに声が響く。マリアの声だ。
「このあとの二時間ほどの記憶は、すくい上げることができませんでした。あなたが厳重に抑圧している記憶です」
「アタシはどうなってしまったの?」
「ルナは、あの神話型イドラを誘導することには成功しました。しかし、ルナ自身が逃げ切ることができず、そのイドラに聖杯浸食されてしまったのです」
「そんな……それってイドラ化ってことでしょ。それじゃアタシは……、アタシは?」
考えることができなかった。
マリアが現れる。ルナと同じように宙に浮いていた。彼女に頭を撫でられる。突然、眠気が襲ってきた。
「今、この場で、『出来事の意味』を考えてはいけません。それが記憶に刻み込まれてしまいます。それは、あなたにとって悪いことしかありません」
マリアに手を取られ、ひざ枕で寝かしつけられる。目の前に、薄緑色の光の粒が現れた。
「あなたが聖杯浸食されたあとの記憶です。これにも、しっかり向き合ってください」
マリアのひざに頭をあずけたまま、両手で小さな光を受け取る。
最初のときと同じように、まぶしい光が押し寄せてきた。自分の輪郭が再びなくなっていく。
*
気がついたとき、ルナは自分の家の床に倒れていた。母親が顔を覗きこんでいた。
全身にダメージを負っている。指先を動かすだけで痛みが襲ってきた。
とてつもなくひどいことがあった、気がする。でも、何が起こったのか思い出せない。
「ルナ! 気づいたのね」
「ママ……、アタシどうしてここに?」
「街の外で倒れていたルナを拾ったと、真っ黒なローブを着た女性が訪ねてきたのよ。いっしょに行動していたんじゃないの?」
覚えていない。あの巨大なイドラに立ち向かった後のことをまったく思い出せない。
「あの巨大なイドラは、どうなったの?」
「あの怪獣なら街から去っていったよ。あなたがやったんでしょ?」
「たぶん、そうなんだと思う。その、アタシを運んできた女性は何か言ってなかった?」
母親が迷うような、困るような表情でルナをに伝えた。
「ええ、言っていたよ。ルナが『聖杯浸食』されているって……」
一瞬、何を言われたのか、分からなかった。
「うそ、よ。だってアタシ覚えてない! さっきと何も変わっていない!」
「そうなの? でも、全身に浮かんでいる黒い斑点はなに? ママ、詳しくはわからないけど、今日見た怪獣みたいな色をしているよ」
ルナが両手をかざす。手のひらに黒い斑点がある。手首にも浮き出していた。
この症状は見たことがある。イドラ化の初期症状だ。自分の聖杯を確認してみると、聖杯の中が黒いアドミレーションで満たされ、真っ黒になっていた。
こうなることを恐れていた。しかし、自分が本当にイドラ化するとは思っていなかった。
アイドルのことや、母親とのことを、我慢しながら上手くやっていけると思っていた。でも、それは甘い考えだった。
(これからどうなるんだろう。イドラ化すると、死ぬと言われている。死ぬのは……怖い)
しかし、どうなってもアイドルは続けられないだろう。それに、この母親のことを気にすることもなくなりそうだ。もう我慢しなくてもいい……。それは素敵な状況だ。
母親が涙を流していた。すすり上げる声が小刻みに続く。
「聖杯浸食されたというのは、本当なんだ。ルナ、がんばったんだね。自分を犠牲にしてまで、あの怪獣を追い払うなんて……」
彼女にしては珍しい、娘のがんばりをねぎらう言葉だった。しかし……
「ママ、少し知っているわ。イドラ化されちゃうと、アイドルが続けられないんだよね? それはダメ。ルナはあたしの夢と理想なの。実現してもらわないと、あなたを産んだ意味がないの。せっかくここまで来たのに、ここであきらめたら、もったいないよ」
彼女の言葉に絶望した。
(……もう、いやだ。アタシは、このひとのお人形じゃない!)
母親が懐からピルケースを取り出す。その中には、何の変哲もない一粒の白い錠剤が入っていた。慎重にフタを開けて、彼女の手のひらに錠剤を移す。
「ルナ、これを飲んで」
「それは……薬?」
「そう。イドラ化の進行を止めて、イドラ・アドミレーションを排出するんだって」
「それって……」
「たしか『セル・フロス』っていう名前だったわ」
イドラ化に対抗する即効性のある薬だ。飲めばすぐにイドラ・アドミレーションを排出。イドラ化の進行を止めて、聖杯を洗浄することができる。しかし、問題なのは……
「副作用が……」
「知っていたんだ……あたしも知っているのよ。あなたのプロデューサーが、教えてくれたの」
母親がピルケースに入っていた成分表を取り出し見つめる。
「いやだっ! 飲みたくない!」
「またぁ? 今日はわがままばっかりだね」母親の顔が怒りに染まる。「もう、しょうがないでしょ? アイドルは貴重なの! みんなの平和を守らないといけないの! わかるでしょ? 副作用なんか気にしてられる状況じゃないの! たいしたことないわよ……」
彼女が成分表を読み、ぼそぼそとつぶやく。
「『記憶障害』……って記憶喪失のこと? うぅん、しょうがないよね? 世界平和のためなら。それから……『パーソナリティ障害』。何のことかしら? 性格が変わっちゃう、みたいなことかな。まあ、これもしょうがないよね? アイドルとして成功するには、なりふり構わず強く生きなきゃならないんだから。ああ、そう! これ、高かったのよ? せっかく買ったんだから、活用しないとね。あたしの夢と理想のために……」
「待って! 記憶がなくなるとか、性格が変わるとか……いやなの。このまま……アタシのままで死なせてよ!」
「なんてこと言うの! 死ぬなんて口にしてはいけません! イドラ化が治るのよ? アイドルが続けられるのよ! こんなにいいことないじゃない!」
「もういや! 離れてっ! あなたの夢は、あなたが叶えたらいいじゃない! アタシはあなたの身代わりじゃない!」
身動きできないルナが必死に抵抗する。左手で口をふさぎ、右手で母親を突き飛ばした。腹ばいになり、玄関へ向かう。母親から逃げて、イドラ化によって死ぬ。そのための時間稼ぎだ。
「待ちなさい! 早く、薬を、呑みなさい!」
母親が追いかけてきた。ルナを見下ろす。
足を振り上げて、ルナの左肩を思い切り蹴った。
激痛にうめくルナ。左腕を上げられない。
彼女がルナを仰向けにひっくり返す。
そして、近くに置いてあったペットボトルをつかみ、ふたを開けた。
痛みに耐えながら見上げた母親の顔はどんなイドラよりも醜悪だった。
ルナの口に、強引に薬がねじ込まれる。
舌を使って吐き出そうとするが、彼女の指が入ったままで上手く動かせない。
口のすき間に、彼女がペットボトルの水を乱暴に流し込む。
手で口をふさがれた。
水が気管に入る。むせて、せきが出た。それでも彼女は口をふさぎ続ける。
彼女の手から逃れるため、右手を振り回す。彼女のからだに当たり、にぶい音がした。
ルナの反撃に対して、彼女は、残りの水をルナの顔に浴びせた。
とっさに目をつぶる。その拍子に、口の中のものを呑み込んでしまった。
肌色をした人間そっくりの怪物が、笑った。
「……呑んだ?」
口に指を入れて錠剤を探す。ない。
のどに力を入れて、せきをする。錠剤は出てこない。指をのど奥に押し込んで、吐き出そうと思ったとき、怪物がルナの右手をつかむ。
ルナが、怪物に、呪詛の言葉を浴びせた。
「ぜったいに……お前の思い通りになってやらない! 絶対だ! 必ず聖杯を元に戻して、お前に復讐してやる!」
怪物の左手がルナのほおを叩く。
「親に対して! なんて言葉を使うの!」
「こんなことをするのが親か! お前なんて、親じゃない! イドラだ!」
冷めた目をした怪物が、ルナを見くだす。ばちんっ、と再びルナのほおを平手で打った。
「悪い子は、早く消えなさい……」
ルナが言葉にならない声を上げ、痛む左腕で、怪物に一矢報いようと殴りかかる。
そのとき、頭の中で、まるで頭蓋骨が割れたような音が響いた。
激しい偏頭痛とうずくまるほどの胸の痛みが襲い掛かってきた。苦しさに耐え、うめきながら、怪物をにらむ。
やがて意識が混濁し、ルナがルナであると思っているものはなくなってしまった。
*
マリアのひざ枕の上で悪夢から目覚める。
眠る前にマリアの胸の中で嘔吐してしまった気持ち悪さが残っていた。それに、両腕にも違和感がある。夢の中で暴れていたからだろうか。
マリアがルナの顔を覗きこんで、問いかける。
「そのあとのこと、思い出せますか?」
「……知っているんでしょ」
「はい。でも、あなたが語ることに意味があるんです」
マリアにからだを預けたまま、目を閉じて、語る。
「十三歳のとき、体調がすぐれず、ベッドから動けない時期があった。なぜこうなったのかは聞かされなかった。きっと、セル・フロスの影響だったんだろう……。
からだの調子が良くなると、入れ替わるように、今度は、あいつの方が病気がちになり、入退院を繰り返すようになった。
アタシは、あいつの看病をしていた。でも、あいつは死んでしまった。それで、アタシは伯母のもとに預けられた。伯母が率いるアルグレイス家で、優しく厳しく、大事に育てられたのよ。軍人の資質があったから、将来を期待されていたの。
十五歳になったとき、アタシにアイドルの資質があることに気づいた伯母は、新たな分野でアルグレイス家の力を見せつけるため、アヴァロン・プロダクションに入所するようにアタシに命じたんだ。そうして今に至る……」
「ありがとうございます」
マリア、と今度はルナが問いかける。
「聖杯浸食されて、セル・フロスを呑んで……、アタシはどうなったの? 今までのアタシからどう変わったの?」
マリアがしばし考え込んだあと、穏やかに話す。
「ルナは、イドラ化していました。セル・フロスを呑んでいなければ、死んでいたでしょう。それは伝えておきます。
セル・フロスを呑んだあとは、ルナが十二歳だったときの記憶、すなわちアイドルとして活動していた記憶を、心の奥底に抑圧しました。そして、その空白の一年間と関連する記憶は、『十二歳から十三歳の間、病に臥せっていた』ということで改ざんされていたようです」
「ベッドから動けなかった理由は……」
「残ったイドラ・アドミレーションの排出と、聖杯の修復をしていたから、ということね。ところで、あなたの母親はどんな病気だったの?」
「イドラ化です……」
「やっぱり……。その原因はセル・フロスによってルナから排出されたイドラ・アドミレーションを知らずに吸収して、それが蓄積された結果なのかもしれませんね」
当時、母親を殺した原因でもあるイドラを恨んでいた。しかし、なんのことはない。自業自得だったのだ。あいつに対する留飲が少し下がる。
「なんで、アタシの聖杯は再び機能するようになったの?」
「それは、あなたの悩みである『灰色のアドミレーション』に関係しています」
ルナが息を呑む。「教えてください」
マリアがうなずく。
「きっと、セル・フロスの効き目が弱かったのでしょう。聖杯の破損が少なかったのです。だから、たった一年間で聖杯が修復されたのだと思います。
修復された聖杯から生成されるアドミレーションの色は、なぜか灰色になるのです。だからといって、『イドラに近い』なんてことはありません。他の色のアドミレーションと比較しても変わりはありません」
マリアが優しい顔をして、ルナに告げた。
「ああ、よかった……」
ルナは、それを聞いて心の底から安心できた。安心したら、涙があふれてきた。拭ってもぬぐっても、とめどなく流れていった。
マリアのひざ枕から起き上がりベンチに腰掛ける。もう一つ気になることを質問した。
「『巨躯のイドラ』の正体も、アタシが経験した聖杯浸食に関係があるんですか?」
「はい。今回すくい上げることができなかった記憶の中にその答えがあります。ですが、今それを思い出すのはやめましょう。あなたへの負担が大きくなります。もう少しあとで向き合えばいいのです」
「わかりました……」
沈黙が流れる。ルナは不安な気持ちを吐露する。
「これからどうしたらいいのでしょうか……。今のアイドルになりたい気持ちが本当なのかわからないんです。昔はあんなに嫌っていたのに、今ではキャメロット・メンバーになりたいと真剣に思うほど焦がれている。自分が自分であると信じられないんです」
マリアがルナの手を取って、優しく語り掛ける。
「お腹の中にいるときから、母親が果たせなかった夢と理想を理不尽に押し付けられたルナ。
痛みを伴うような我慢を続けて、母親の言葉を必死に実現しようと頑張るルナ。
これらはこれまでのあなたです。では、今のあなたは? そして、本当のあなたがいるとしたら、それは、どんなルナですか?」
自分の手に触れる温かい手をじっと見つめながら、ルナが答える。
「今のアタシ? 本当のアタシ? ……わからない。そんなもの……なかったと思う。
ずっと誰かが望むことをやってきた。そうしないと生きていけなかった。
『そうしなければならない義務感』と『そうしなかったときの罪悪感』が、心の中でどろどろと渦巻いているのよ……。そんなこと考えている暇なんてなかった」
「誰かの声に支配されているという感じかしら?」
「そうかもしれませんん」
「……少し前のルナはどんなことを望んでいたの? その望みの声は聞こえる? その中に、自分の声はあるりますか? 母親やお義母様の声は無視して、自分の声を探してみて」
ルナは、目をつぶり、自分の心の中を丁寧に探る。
「あいつへの復讐。そして、リンを打ち負かすこと。オーディションの合格は……あいつやお義母様の声です」
「それなら、ライバルのリンを倒すことに専念してはどうでしょう? 他の誰でもない、自分の望み。そこからはじめて、自分が何者であるかを探すのです。私も協力を惜しみません」
目をしっかり合わせて、マリアが、ルナの両手を包み込む。まるで……母親みたいに。
「ルナ? リンを倒した後、私たちのプロダクション『ノヴム・オルガヌム』へ来ませんか? 黒のアイドルたちが、『復活』を目指して頑張っています。そこでルナが望むことを探し、実現するお手伝いをさせてください」
マリアの提案は本当にうれしかった。必要とされたこと、選んでよいと言われたこと、自分であることを許されたのは、はじめてだった。
彼女が言うように、リンを倒せば、世界が広がりそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます