F
ネコイル (猫頭鷹と海豚🦉&🐬)
殺し屋F
この世界には絶対に手を出してはいけない相手ってのが必ず存在する。
まずは育ての親だ。親っていっても生みのじゃねぇ。殺し屋として育ててくれた師匠に手を出すなんてご法度だ。
それから同業者とそいつの獲物にも手を出すもんじゃねぇ。
ん?使い方おかしいって?まぁ気にすんな。
そして最後に、これだけは手を出したらいけねぇ。
手を出すなんてアホはいねぇだろうな。だがこいつの魔の手にかかっちまう奴は何人もいる。俺だってその一人さ。
あれは今でも忘れられねぇ、とんでもねぇ野郎さ。
いいか?お前にこうして話してやるのもお前のためを思ってのことなんだからな?
あいつの噂が広まってるなんて知られたら今度こそ
あれは俺がいつもどおり暗殺の指令を受けて、ターゲットを目にとらえるところまで接近したときのことだ。
おれの得意手は、この自慢の腕で相手の首の骨を折っちまうことさ。
あの頃のおれは筋肉の力ばっかりに頼ってて戦法も正面突破あるのみって感じでよ、立ちはだかるやつには目の前で一人首をぽっきり折ってやりゃそれでみんな腰が引けてた。
そうするとあいつらは決まって、数で勝負しようって一斉にかかってきやがる。だが数なんかおれの前にすれば蟻んこも同然さ。
だからその日もおれは叩き落とすみてぇになぎ倒してやったのさ。
でもその日は一人だけ違和感を感じる野郎がいた、そいつがやつだったのさ。
見た目はほかのやつらとなんら変わんねぇ、いやちょっとはやれそうな空気出してたかもな。
でもあの当時のおれからしてもあいつは楽勝だ、そう勘違いさせられたのさ。
なんか、強敵に立ち向かう無力なヒーローみたいな表情してんだよ。おれもそれ見てなんかスイッチ入っちまってよ、肩慣らしって感じで首の骨鳴らして余裕ぶちかましてやった。
勝負は一瞬だった。突っ込んできたあいつの繰り出す攻撃の勢いをおれの自慢の筋肉で防いだら、あとはがら空きの背後から首に腕を組んで骨を折ってやる。
ゴキッ!って骨の砕ける音が響いて体が脱力するのを感じる瞬間が堪らなく好きでよ。おれは完全に殺ったと思ったもんさ。
この先でがくがく震えているだろうターゲットをどう殺ってやろうかってことで頭がいっぱいになってた。
そのときだ。首に電撃が走ったみたいな衝撃を感じたと思ったら、おれは体をどこもかしこも縛られたみたいに動けなくなっちまってた。
かろうじて動かせる首をがむしゃらに動かしていたら、おれの背後に立ち上がる影があった。
そいつはな、曲がってたんだよ。折れてるみてぇに、首がとんでもねぇ方向にな!
あ、あれ?そんな怖くなかったか・・・?
あぁ、違う違う。おれはなに怪談話みたいな語り口になってんだ。
まぁ、おまえももうわかっただろ?
そいつこそが『F』だったんだ。
『F』は動けねぇおれを見下ろしてこう言いやがった。
『力におぼれた暴虐の使いには少々テコ入れが必要なようだな』
そう言いながら『F』が曲がった首に手をかけると、真下向いてた頭がぜんまいを巻くみたいなカチコチって乾いた音立てながら戻ってくところを見たんだよ。
『F』っつう名前にはいろんな由来があってな。その首の鳴る音が骨が跳ね回ってカチコチって音を立ててるみたいだって言って『Frisck(跳ね回る)』からとるやつや、わざと自分を餌みたいに一回殺らせてから手をかけるから『Feed(餌)』って表現するやつもいる。
だがな、あいつが『F』と。
殺し屋Fと呼ばれる理由の最大の理由はあいつが手をかける
『F』はおれの肩に手をかけると何をしたのかわからねぇが、とんでもねぇ苦痛が襲ってきたんだ。
あんな痛みは初めてでおれはその瞬間にも気が飛びかけたよ。
そこからはもう地獄さ。
おれはなにかを吐かされるわけでもなく、ただただ耐え難い苦痛にもだえることしか出来ねぇんだ。相変わらず首から下は別の体みたいに動かねぇんだよ。
気が付いたときにはおれは師匠やらに叩き起こされたてたさ。
あれだけの苦痛を与えられたんだ、足や手の一本や二本無くなってたって驚かない。
けどおれの体は五体満足で目立った外傷もなかった。
おかしい・・・
そう思ったおれはなにか毒でも飲まされたんじゃないかと思って立ち上がったんだ。そうしたらだ
かるいんだよ、体が。
体に風船詰め込んだみたいだったよ。
体中の血管を血がなんの詰まりもなくスーーーーって通ってる感じがわかるんだよ。
そうしたらなんだか体の動きまで軽くなってよ。どんだけ悪い状態で今までやってたのか把握できたよ。
まぁ、察しの通りだよ。
殺し屋Fってのは
『Fatigue(疲労)』とりってことで、この界隈じゃ殺し屋Fって呼ばれてる。
おまえも一回死んでみたらどうだ?
生まれ変わったみたいな気分になるぞ。
F ネコイル (猫頭鷹と海豚🦉&🐬) @Stupid_my_Life
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます