第16話 刹那《せつな》の時を



 嗚呼ああ、正直に言うよ、僕には分らない。


 悩んでる、すごく悩んでる。

 僕にはその深さが分らない。


 悲しんでる、とても悲しんでる。

 僕にはその広さが分らない。


 苦しんでる、終わらせたいと思うほどに。

 僕にはその色の濃さが分らない、分からないんだ。


 夜空に輝く星は死ぬ。

 頭上に燦然さんぜんと輝く太陽も死ぬ。

 僕はその10万分の1。

 僕はその3000万分の1。


 ほんの一瞬だよ、僕は。

 だから僕は一方的に願う。


 刹那せつなの時を、共に存在していて欲しいと。

 ただ願うよ。

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