~鬼女~5

占竜はおじいさんが亡くなったのは自分の責任だと感じていた…



「占竜さん…

ありがとうございます…」



登さんは占竜の手を握り締め

何回も頭を下げた…


「占竜さん、親父は何故色々わかったんだろう…


光一が倒れた原因…


占竜さんがいること…」



「人はみんな第六感だいろっかんって言うか…

不思議な力を持っているんです…


今は科学が発展して

その力はおとろえる一方ですが…


死期が近い人や純粋な子供…


動物などは不思議なものが見えるんですよ…


お爺さんは先祖せんぞに教えてもらったんじゃないかなと思います…


登さん、お爺さんにあわせてもらえませんか?」



登さんはぜひ会ってくださいと言うと霊安室にむかった …







霊安室につくとは人の気配がした…


登さんがかけよる!


「おふくろぉ!」



霊安室には登さんのお母さんと久恵さんがいた…


登さんは母親に駆け寄ると『親父がぁ~!』と泣き出していた…



占竜はお婆さんにご挨拶するのを後回しにして

おじいさんに手を合わせ…



心の中で…


すいません…


俺の力不足のせいでと謝った…



そして、失礼しますとおじいさんの胸に手をあてた…












くっ…



肉体を通して霊視れいしするが…



やはり魂が闇に捕らわれている…


やはり喰われている…


辛そうな表情にお婆さんが話しかけてきた…



「占竜さん…」



占龍はお婆さんに頭を下げる


「このたびはご愁傷様でした」


お婆さんも占龍に頭を下げた…



「色々とお世話になったみたいで…


ありがとうございます…


占竜さん…


和雄さんを見て何か気づきましたか?」



和雄さん?


お爺さんのことか…



「大変言いづらいのですが…

その…魂が…闇に捕らわれています…」



「そうですか…


和雄さんの魂…


取り戻してくれませんか…


せめて安らかに眠ってもらいたい…」



勿論もちろんそのつもりです!


必ず魂を取り戻します!」




「登さん…


光一さんの自宅の鍵をかしてください…


魂を取り戻しに行ってきます!」



登さんから鍵を借りると

占竜はおじいさんの胸に手をあて…


少しでかまいませんから

和雄さんの勇気を自分にください…


と呟いた…


その時、話を盗み聞きしていた光一が霊安室に入ってきた…



「占竜さん!


俺も連れて行ってください!」



「何を言っているんだ!


危険すぎる!


ダメだ!」



「そんな…


ダメって言われてもついて行きます!」



占龍と光一のやりとりに登さんが割って入ってきた…


「…


連れて行ってあげてください…」



「登さん!


何を言っているんですか!


危なすぎます!


止めてくださいよ!」



困っている占竜に光一が追い打ちをかけてくる!



「占竜さん!


一緒にかたきをとろうなって言ってくれたのは嘘ですか?」


うっ!


光一の奴…


痛いとこをついてくる…



「でもな…

もしものことがあったら…」


登さんも覚悟を決めたのだろう…


真っ直ぐに占竜を見つめ頼みこんできた…



「自分もついて行きます…


このまま…


このまま…


俺は泣き寝入りをしたくない!」



いやいや、登さんまで何を言い出すんだ…


占竜は助けを求めるように奥さんとお婆さんを見たが

奥さんは頑張ってと登さんと光一を応援している…


おばあちゃんはかたきつんだよと息巻いきまいている!



占竜はため息をつき最後のおどしをかけた…



「命の保証はできませんよ!」


脅しは逆効果で登さんと光一に望むところだ!

と興奮されてしまった…






占竜は仕方なく登さんと光一に念珠ねんじゅとヒトガタを渡した…


説明【ヒトガタとは、紙を人の形に切り作っている物

自分の身代みがわりにわざわいをうけさせたり

使い方は様々である

布バージョン

木バージョン等がある】



「念珠は手につけていてください…


ヒトガタは服の中…


心臓の位置に入れてください


守護してくれます!」



占竜は登さんと光一を自分の車にのせると

光一の自宅にむかった…




光一の自宅についた時には夜中だった…


自宅に入る前に登さんと光一に占竜は注意をした…



「手をこの形にしてください…

何があっても

この形をくずさないでください」



光一が何ですかこれ?と聞いてきた…


「この手の形は摩利支天まりしてんいんです…


陽炎かげろう化身けしんである摩利支天の力をかり

わざわいをもたらそうとしてくるモノから

その身を見えなくして攻撃を防いでくれます…


印が崩れると見えるようになりますから

絶対に崩してはダメです!


心に気合を入れてください!


何があろうと弱気にならないように!


闇に飲まれますから…


では行きますよ!」


登さんと光一はわかりましたと印を組んだ…


それを確認した占竜は目をとじ、真言しんごんを唱え始めた…


「陽炎の化身…


摩利支天よ…


我が身…


我が仲間…


守りたまえ!


オン! アニチヤ マリシエイ ソワカ…」



占竜を先頭に自宅の二階へとむかった…






二階はきりがかかっているかのような状態になっていた…




邪気じゃきが濃く息もしづらい…


こんなにキツい邪気を発するとは…


はたして俺で何とかできるのだろうか…



いや、何とかできるとか悩んでどうする!


命をおとすことになってもやるんだ!!!



占竜は心の中で自分に言い聞かせている…


どこにいやがる…


占竜はペンデュラムを取り出すが


訳のわからない動きしかしない…



クソッ!


場所すら特定できねぇ…



「占…竜…


 …占…竜…


占竜ぅ!」



!?



誰だ!



俺の心に直接語りかけてくるのは…



「こっ…ちだ!」



占竜は謎の声に導かれ壁の前に立った…



壁に血の後?


登さんが叫ぶ!



「占竜さん!

そこが親父の倒れた場所です!」



!?



さっきの声はおじいさんか…




この壁…


占竜は壁を調べようと手をだした時!


!?



占竜の腕を壁からでた青白い女性の手がつかんだ!


占竜は調べる為に摩利支天の印は解いている…


その方が敵の正体がわかるだろうと我が身をおとりにしていた…



光一にも青白い手が見えるのだろう…


青ざめ叫ぶ!


「占竜さん!」



光一が駆け寄ろうとする!



占龍が一喝する!


「近づくなぁ!!!


印を絶対に崩すんじゃないぞ!」



占竜は逆に壁からでてる手をつかみ返し

何かを呟きだした…


「さぁ、捕まえたぞ!


正体を教えてもらおうか!


何者だ貴様わぁ!


我が占術せんじゅつの力…



今こそ見せてやろう!」


占竜は意識を集中し敵の心を読みとろうとしている…


壁から地面の底からひびくようなうめき声がこえてくる…



ヴェェェェェェェェェェェ…


エェェ…



占竜は女性の心に入り込む…



「お願いっ!


ダシてぇ…!


苦し…いょお~…



寂し…いよぉ…



ゴホッ!


ゴホッ!


ブハッ!」



占竜の心に敵の過去が写し出される…


若い女性…


着物を着ている…


かなり昔だな…


監禁かんきん



病か?


血を吐いているぞ!



女性は部屋で監禁され

部屋には食事だけを入れる小さな穴がある…


ドアは頑丈で

女性は何度もドアを破ろうと挑むが全く歯が立たない…



苦しそうにき込みながら

吐血とけつり返している…



「ワタ…シヲ…トジコ…メ…


サベツ…シ…オソレ…ル…ヨワキ…ニンゲンヨ…ンヨ…


イツノ…ヒ…カ…クロウ…テヤル…


ジブン…タチダケ…シアワセ…ニ…ナリ…ワタ…シハ…


ノロッ…テヤル…


ニンゲ…ン……スベ…テヲ…


ノロ…イ…クロ…ウ…テヤル…ワ…」



女性は呪いの言霊ことだまを吐き…


着物のオビで首をった…






このやまいは…



結核けっかくか!



伝染しないように隔離かくりされた女性…



占竜は登さんや光一にもわかるように

念珠にその心を通じさせていた…


お爺さんを殺った奴が

どんな奴かを知ってもらいたかったのと

占竜がもしやられた時には

どうしたら良いのかを

わかってもらう為に…



「ヴエェェェエェェ…」


呻き声は鳴り止まない…


占竜は更に女性の心を探った…


女性の怨念おんねんはこの家に住む者を

何人も喰い殺していた…



これほどの怨念とは…


凄まじい…


魂を喰らい…


人を怨み…


鬼となりはてたのか…


哀れな…



当時の大家はたまらずに

お祓いを頼んだみたいだ…


部屋に護符等で結界を貼り封じ込めている…



では何故…


今頃でてきた…


占竜は集中し更に読み取る…



光一の前の住人…


エアコンを設置する為に壁に穴を…



開けたのかぁ!


封印はとかれた…


今はまだ少し封印力が残っている…



まっ!


マズイ!


これほどの魂を喰らってる奴だ!


今のままでは勝てない!


そう思った瞬間!



占竜の腕を掴んでいた女性の手が変貌へんぼう」をはじめた!



青白かった細い手が太くなり赤黒くなっていく…


メキメキッっと占竜の腕がきしみはじめた!



占龍が叫ぶ!


「登さん!


光一!


逃げろぉ!!!」




登さんと光一は心に写し出されたものを見て震え泣いていた…

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