通常営業!

アメのお母さん

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


ガリガリ。ガリガリ。ガリガリ。

おやおや?お店の扉をひっかく音が聞こえてきます。


「は~い。今行きますね~」

ガチャ。


「ワンッ!」

「いらっしゃ……ん?この眉毛、どこかで……あっ!アメの眉毛と同じだ!」

「ワンッ!」


私は、アメと同じ眉毛をした犬さんを店内へと案内した。


「もしかして、アメの知り合いですか?」

「クゥ~ン」


私の言葉が通じていないみたいだ。


「どうしよう……。あっ!アメを連れてくればいいのか!」


私は、自分の部屋で寝ているアメを起こし、犬さんの元へと連れて行った。


「ワンッ!」

「ワンッ、ワンッ!」


犬さんたちは、元気よく吠え、顔を擦り付けあっていた。

間違いない。親子なのだろう。


「2人は親子なんですね」

「ワンッ!」


あぁ。何故犬語をしっかり学んでこなかったのだろうか。すごく悔やまれる。


「いや、魔法を使えば少しは話せるようになるかも?!」


そう思い立った私は、簡単な魔法を自分に掛けた。


「うちの子を匿ってくださり、本当にありがとうございました」

魔法のおかげで言葉が分かるようになった。

「いえいえ。お母さんが無事見つかってよかったです」

「サテラお姉ちゃん。ありがとう」

「どういたしまして♪」


ほんの数週間と言う短い間だったけれど、アメが私に与えてくれたものは大きかっただろう。

毎日の癒し。朝一から元気にしてくれる明るさ。そして、姉弟が出来たかのような感覚だった。


「これよかったら召し上がってください」

「いえいえ、そんな。お構いなく」

「受け取ってください。犬の村では有名な犬饅頭です」

「で、では、お言葉に甘えて」


私は、アメのお母さんの圧に負け、犬饅頭を受け取った。


「では、私たちはこれで失礼します。また改めてお伺いさせてください。今度はお客として」

「はい。お待ちしています!」

「僕も来るから待っててね!」

「うん!アメの事待ってるからね!」


カランコロン。

「ありがとうございました」

アメとアメのお母さんは、森の方へと姿を消した。

数週間と言う短い間だったけれど、急にいなくなると寂しくなる。

また会えるよね、アメ。


っと、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様?はアメのお母さんでした。無事アメのお母さんが見つかり、本当によかったです。でも、少し寂しい気持ちはあります。出会いがあれば別れあり。本当にこの通りです。しかし、いつかまた会えると確信しているから、大丈夫!

さて、明日はどんなお客様が来てくれるのでしょうか!


それでは、いい夢を🌙




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