YuTuber

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


カランコロン。

「いらっしゃいませ!」

「昼間お電話させてもらっていた、YuTuberのラルクです」

「あ!お待ちしていました!」


そう、今日は予約と言うか、アポイントと言うか、そういう電話が昼間にあったのだ。

私はネットに疎いため、YouTubeなどは全く分からないけれど、ラルクさんの事は風の噂で少し聞いた事があった。


何せ、世界中のカフェを巡っているらしく、カフェ界隈では有名らしいのだ。

私はここ最近知ったのだけれど……。


「何になさいますか?」

「おススメってどれですか?」

こういう人はおススメを頼みがちなのだろうか。

「当店のおすすめは、モンブランになります」

「じゃあ、それとアイスラテを」

「かしこまりました」


私はいつもながら、キッチンへと向かった。

しかし、今日はなんだか緊張する。

ラルクさんがカメラを回しているからだろうか……。

それに、カメラで店内を撮影しながら何か話している。


「ここが今話題のウィッチカフェです!なんと、店主さんが魔女さんなんです――」


YuTuberというのはこういう事をするんだと、私は心の中で思った。


「お待たせしました。アイスラテとモンブランになります」

「ありがとうございます!」


今度は、カメラを持ち物撮りを始めた。

まるでテレビの様だ。


「うん、これは美味しい!今まで食べたモンブランの中で一番だ!」

「あ、ありがとうございます」

褒められてはいるのだけれど、少しテンションが高すぎて付いていけない。


「今日は撮影させていただきありがとうございました。今度はプライベートで来させてもらいます」

「はい!お待ちしています」


カランコロン。

ラルクさんは、店前でエンディングを取り始めた。

YuTuberも大変だと私は感じた。


では、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様はYuTuber。明日はどんなお客様が来るでしょうか。

楽しみですね♪


それでは、いい夢を🌙


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る