第8話 わかって わからなくって

Side.凪


ジーーー・・・

「ん、なに?」

湊くんって、

「かっこいいなぁって」

「え、えぇ!?」

思っていたことがつい声に出てしまっていた。それに、日が沈んで暗くなって湊くんの顔がよく見えなくなっちゃったから、すごく見ちゃっていたみたい。

「背も高いし、顔整ってるし」

「え、あ、いや・・・//」

手紙だけじゃわからなかった湊くん情報を目からたくさん集めて整理。

湊くんってば、すごい慌ててる。

本当のことを言っているだけなのに。

「てゆーかそのくん付け!なんで私のことくん付けで呼ぶの?」

「んー、なんとなく?」

「まさか私のこと男の子だと思って…」

「いや、女の子だと思うよ」

「『思う』って…」

「それに、性別はどうでもよかったから。

湊くんに会えればそれだけで…」

「そっか・・・」

「あと年下っぽかったから」

「あぁ!確かに手紙じゃ歳もわからな…いのに年下だと思ったの?!なんで?!」

「だから、なんとなくだよ~」

「も~!!」

文章もそうだったけど、実際もテンション高いんだ。

「嫌だったら呼び方変えようか?僕もさん付け嫌がったし」

「ううん。くん付けで呼ばれたの初めてだし、うれしいかも!!」

「っはは」

変わった子。


会ってしまったら、きっと緊張するんだと思っていた。

「そ、そういえば凪さn

「・・・」

「え、えーと;

凪、くん?」

「?」

けど、なんだろう。この安心感。

「凪ちゃん?」

「~~~」

ボトルメールを始めてからだって、まだ1か月経っていないと思ったのに。

「じゃあー・・・凪?」

「はいっ」

ずっと前から知っているような・・・


「ふふっ。凪、今日お仕事は?」

「あ」

「え」

「・・・」

「・・・」

「・・・今日はもう終わりっ。夜だし」

「絶対嘘。夜なる前からここにいた」

「ふふっ、バレたか」

でも今日はもういいの。

「まぁ私も今日は“お休み”だけど(笑)」

「あーっ(笑)」

特別な日だもん。


ザザァーーー・・・


暗い海。

すごく怖かった。

けど、

「冷えてきたね~凪ぃ~」

「・・・そうだね」

夜の海は黒色だったんじゃなくて、鮮やかな紺碧色だったことがわかった。


******************************************


Side.湊


夜。

まだ凪と2人でわかば島の浜辺に座っている。

この島に到着してからまだ1時間も経っていないのに、一気にいろんなことが起こったなぁ。

凪、私より背ぇ低かったんだ。

声は落ち着いていて、顔はキレイ系。

なんていうか、雰囲気がすごく大人っぽい。

まだちょっと緊張して、暗くなっても顔よく見られないけど。

あ、そういえばさっき歳聞きそびれちゃった。

「ねぇ、湊くん」

「ん?」

凪の方から声をかけてきた。

「しずく島からわかば島まで、どれくらいかかったの?」

「えっとね、朝に出てきてさっき着いたから9,10時間くらいかな?隣の島らしいんだけど、わりと遠いよね~(笑)」

「そうなんだ…ボトルの行き来より時間かかってない?」

「え?そうかなぁ」

「僕が最初に手紙を出したのは朝。でも次の日の昼に湊くんからの返事が届いていた。

湊くん、最初に手紙を受け取って返事を出したのはいつ?」

「一番最初…夕方に受け取って、次の日の朝に出した!」

「そっか。こっちから最初に手紙を出したときは夕方にそっちに届いた。でもそっちから朝に出したものがその日の昼にこっちに届いた。9時間もかからないうちに…」

「???」

凪がいろいろと計算して考えている。

私はあまりよくわかっていない。

そもそもボトルが船より早く着くはずないのに、どういうこと…?

「湊くん」

「ん?」

「もしかして今日、筏(イカダ)でここまで来たの?」

「んなわけない!!;手ぇ折れちゃうよそんなに漕いだら!」

凪って意外と天然?いやわざとボケた?!

「だよね。でも、じゃあボトルはどうやって…」

「流れの速い海流があるとか?」

「しずく島からわかば島へ、その逆にも海流があるって地図に書いてあった。

けど、海流だけで船とこんなに差が出るわけない」

「そうなんだ!」

しずく島にある地図にはそんなことまで書いてなかったのに、やっぱりわかば島ってすごいなぁ。

でも海流じゃないなら、どうやってこのボトルメールはこんなに早く私たちのところへ届いたの…?

「んー…いやー私頭悪いからわかんないなぁ(笑)

でも、なんだっていい」

なんだっていいんだよ、今は。

「・・・僕もそう思うよ」

凪が笑いかける。

もうすっかり暗くなってしまったし、緊張で顔も見られなかったけど、その表情は読み取れた。


「ところで湊くん、帰りはどうするの?」

凪が聞いてきた。気にかけてくれてうれしいなぁ。

本当はもう少し一緒にいたいけど、明日はさすがにお店開かなきゃ。

「これから夜行便で帰るよ。ほらあれ、今しずく島に向かってる―――」

ボォオーーーー・・・

ん?汽笛の音…?

「・・・あぁーーー!!!!;」

船行っちゃった!?どうしよー!!!;

「っははは!」

凪が爆笑する。

「今日はわかば島に泊まってくしかないね」

「・・・え?」

そして 提案してきた。

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