第2話 12歳となった今
そして12歳となった今のシオンは、充実した毎日を送っている。
武術も魔術もまだまだだが、形にはなってきているのだ。
下手でも自ら出来るようになるのは嬉しいものである。
「行ってきまーす。何かあったらよろしく頼むよー」
「坊っちゃま。今日こそは、早く帰ってきたてくださいね。お父様に怒られるのは嫌でしょ?ソロソロ懲りても良いのでは?」
給仕長に屋敷を抜け出すところを見つかったので、一応挨拶したら釘を刺された。
まあ、何があっても味方になってくれる人だけどね。
何をするのかも何故だかバレているらしい。
「悪いねー。マダム。これも男のサガというものさ」
と、ウインク一つ投げ捨てて、屋敷を飛び出す。
訳の分からない未来よりもシオンは今を生きるのだ。
そのためには、自己の欲望に忠実でなければならない。
そして、給仕長の予言通り、シオンが家に戻るとこの日も延々と説教が行われたのである。
話は戻るが、シオンが家を飛び出して急いで向かう目的地は、屋敷近くの川である。
「やあ、遅かったなシオン。もう、始まってるぞ」
待っていたのはヒソヒソ声でささやく男の子。
僕にとって色々な事を教えてくれる親分肌性格をした騎士団長の息子コオタだ。
僕の数少ない友達として付き合ってきた。
コオタは僕よりも2つ年上の14歳である。
視線の先では服を脱いで裸になり、浅い川へ入ろうとしている幼いが美人系の女の子。
彼女はまだ幼さの残る顔つきだが、少し胸が膨らみお尻に丸みが出てきて女性らしい姿になりつつある。
子どもから大人へなりかけの段階なのだが、年の近い女である以上、いくら貧相な体つきでも年頃の男としては十分な興奮対象だ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・ゴクリッ」
男の子2人、何一つ音をたてずにジッと集中する。
このくらいの年頃の男の子がジッとするのは難しい。
ほんの少しの時間でもじっと耐えることができないのだ。
それでも動かないのはエロの力によるものだ。
唯一聞こえたのは、生唾を飲み込む音。
2人とも真剣に見つめる先にあるのは11歳である魔術師長の娘、ヒスイの沐浴姿。
彼女も小さい時から友人として接してきたのだが、最近は異性として意識している。
そんなエロい姿になっている彼女を、今、必死に見つめているのだ。
別の言い方では、「覗き」ともいう。
録画する機器が無いので、今日もしっかりと目に焼き付けなければ。
騎士団長と魔術師長には、毎日自宅で訓練してもらい世話になっている。
僕との模擬戦など、流石に子ども相手は出来ないようで、シオンが武術と魔術を習い始めた時から、遊び相手だったヒスイとコオタ2人を僕の訓練のために連れてくるようになっていた。
子どもとは言えど、2人は専門的に鍛えられた者たちだ。
2人ともその辺の大人よりも格段に技術が上である。
僕と年が近いのでヒスイとコオタが対人訓練の相手となることが多いし、訓練以外は遊び相手としての位置づけだ。
世間でよく言う幼馴染というやつである。
その覗きの始まりは2ヵ月前。
兄貴分であるコオタのヘンテコな話から始まった。
「武術も魔術も集中力が大切なのは知っているよな。実は我が家には、集中力を格段に高める秘技がある。いや、秘術というものか。それを教える用意があるのだが知りたいか?」
ヘラヘラしながらも、コオタがもったいぶる。
「これは秘術を知る上で大切なことなのだが、シオンは女の体に興味はないのか?」
「侍女や給仕長とかとお風呂に一緒に入るから毎日見ているけど?」
シオンはお坊っちゃまなので、自分で体を洗わない。
いつも体全体を侍女に洗ってもらうのである。
少し年取った給仕長はともかく、侍女のほとんどはまだ若い女なのだが、今まで意識しなかったためなのか特に何も感じたこともなかった。
「バカッ。若い女だよ。ヒスイのような」
そしてコオタがニヤリッと笑う。
僕はヒスイの裸と聞き、思わず想像して興奮した。
股間が熱い!
夏の暑い時期であるために、ヒスイはかなりの薄着で、胸元が大きく開いた服をよく着ている。
ヒスイが僕に魔術を指導する時に、手を取って教えてくれるのだが、開いた首元からチラリと見える小さな乳首に何度もドキドキしたものだ。
正直、服と下着で隠れているヒスイの足の付け根部分は、男として非常に興味がある。
シオンはヒスイの裸を想像しただけで、心臓がバクバクして血圧が急激に上がったのを感じた。
その時、唇の上を何かがタラリと伝う。
「おいっ。鼻血出てるぞ。刺激が強かったか?お子様か?お子様なのか?」
からかい半分の言葉に
「ううん。のぼせただけだよ」
と言って慌ててハンカチで拭った。
コオタがニヤニヤしているから誰かに話したいのだろうが、覗きをしている事とセットだからな。
誰かに話せるものなら話してみろ。
「ヒスイは、決まった時間に川で沐浴するから、見つからないように覗くんだ。それで集中力が鍛えられる」
ヒスイの体を隅々まで観察するのが目的だが、ヒスイに見つからないために離れたところから覗いている。
覗きの初心者としては、この距離でもかなり冒険していると言えるだろう。
離れた場所から裸体を1つも見逃さないようにするためには、かなりの集中力を使うらしい。
「もう少ししたらいつもの沐浴の時間だ。集中力を高めに行くぞ」
これがコオタからの覗きの合図だ。
集中力を高めるためとはよく言ったものであるが、実際かなりの効果があったのは認める。
「うん。わかった」
事前に音をたてないように、コオタからしつこいくらいに説明を受けている。
覗き道を極めようとしている者たちにとって、音をたてないことは、基本中の基本事項なのだ。
コオタが言うには、この効果もあって、隠密系の動きが冴え渡るらしい。
沐浴するために服を脱ぐヒスイに見つからないために、音をたてないよう注意しながらも、出来る限り僕とコオタはヒスイへ近づいていく。
今日もコオタに誘われるまま、いつものように覗きを行った。
僕が見つめる先には、膨らみ始めた双丘の上にちょっぴり主張し始めた乳首。
それはまだ、ほぼぺったんこな胸に近い。
そして足の付け根に自分にあるものが無い、裸の女の子が体を洗い清める姿である。
その女の子が、今、潜んでいる藪からほんの数メートル先にいる。
ここからちょっと飛び出して手を伸ばせばすぐに届きそうな距離だ。
僕が12歳になったばかりの子どもでも、ちゃんと異性への興味はあるので、今の幸せを、一つでも見逃す事のないように必死に目を凝らして集中する。
シオンは、あられもない異性の姿に子どもながらも興奮を隠せなかった。
ツーと半空きの口から水分が落ちる。
興奮のせいか、油断してヨダレが垂れたようだ。
いかんいかんと口を閉じ、ゴクリと喉を鳴らす。
エロガキ2人であるシオンとコオタは、今日も11歳の女の子であるヒスイの沐浴を覗いていたのである。
異性の裸を見るためだけにかなりの集中力を使っているのだが、シオンが覗きの苦しい姿勢を正そうと少し動いたために、カサリと小さな音をたててしまう。
「しまった!」
「誰っ?」
「・・・・・」
空気が凍りついた。
じっと息をひそめる。
「古の精霊よ。我がもとに集い我が願いを聞き入れよ」
ヒスイのつぶやきとともに現れる数々動物の死霊たち。
ネクロマンスの術である。
「ヤバイ。シオン、逃げるぞ」
コオタと慌てて撤収する。
隣の藪から飛び出したのは、コオタの父親だが、今、相手している暇はない。
親子揃って覗きが趣味なのか?
全力で必死に逃げる2人の横を掠るように追い越す2つの影。
僕の逃げ足は速いほうなのだが、死霊に憑依された動物には負ける。
「ドタドタドタドタッ。バタン。うっ」
「くそっ。ダメだ。捕まった」
コオタとシオンの2人が山猿2匹に取り押さえられ、ヒスイにすぐに捕まった。
一緒に覗いていたはずのコオタの父親は逃げ切っている。
さすが年の功である。
この事は黙っているので、ひとつ貸しだ。
コオタと一緒に何か強請ろう。
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