『ポスト・コロナ』 希望を託して
北風 嵐
第1話 グレタ・トゥーンペリの言葉。
昨年、『国連気候行動サミット』で、16歳のグレタ・トゥーンペリ*は並み居る世界の首脳たちに向かって、「貴方がたが話せるのは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり」と、毅然とこう言い放った。
地球からの果実を食い尽くしながら、経済成長を語る矛盾を「おとぎ話」と言っているのだが、これにコロナ禍と云う課題がもう一つ加わった。
戦後75年、75歳の私はとっても不思議な世界を観ることになった。新型コロナ、パンデミックの世界である。何しろ、世界中がマスクをしたのである(最後まで抵抗してコロナに罹った大統領がいたけれど…)。
2020年1月23日武漢が封鎖された。1千万都市の完全封鎖、私には理解不能だった。2月3日、クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号が横浜港に接岸し、『船上の武漢』を目のあたりにすることになる。その対応にニューヨーク・タイムズは「『こうしてはいけない』と教科書に載る見本だ」と酷評した。それ以外でも、「まるで浮かぶ監獄」と、世界のメディアはいずれも手厳しい評価を下した。
その世界も、日本をいつまでも笑っているわけにはいかなかった。ものの2か月もかからないうちに、新型コロナは世界を圧巻した。国々は国境を遮断し、大都市を封鎖した。最もこのコロナに脆かったのは「グレート」を自負するアメリカであった。
グローバル、一瞬にして世界は同時に鎖国状態になった。永遠に続く経済成長どころか、ほとんどの経済活動は一時全てストップし、予想されるのは世界同時恐慌。私たちのこの世界はこんなにも脆い基盤の上に成り立っているのかと、思い知らされたのである。
失われた20年、30年、経済成長が止まって*久しい国がある。かつて『東洋の奇跡』と称賛された日本である。リーマンショック以降、欧米諸国も軒並み成長が止まり、「みな『日本病』になってしまった」と、世界の経済学者が嘆くようになった。経済成長は本当の〈おとぎ話〉になってしまったのだろうか?
停滞する先進諸国に代わって、ここのところ、世界経済の成長エンジンになっていたのは、中国を筆頭にする新興国、インド、ブラジル、ロシア、南アフリカ(頭文字を取ってBRICS諸国と呼ばれる)やインドネシア・タイ・ベトナムらのアセアン諸国であるあった。アジアは本当に貧しかった。ベトナム戦争を知る私たち世代は、頑張っているベトナムを見るのは嬉しい。情報手段の発達や資本の移動が容易になった、何かと云われるグローバリズムだが、この点は評価していい。しかし、これらの国々も、今回のコロナでの傷は深く、コロナ禍が収まっても世界経済の回復は容易ではない。
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