2.1.15 九階 死の兆候(2)
――ザエラ六歳 春 アニュゴンの街 郊外 地下迷宮九階
「カロル、ランスをこちらに投げて」
カロルが荷袋から取り出したランスを僕に投げつける。
サーシャからランタンを受け取り、ミーシャ、サーシャと死神の相手を交代する。二人は距離を保ちながら魔法攻撃を行い、死神の注意を自分たちに引き付ける。その間に僕は、床から天井まで糸で道を作り、ラピスに天井まで加速させ、ランスを裂け目に突き刺す。しかし、思うように裂け目が広がらない。
(
ふと後ろに目をやると、前衛四人がクモの糸をよじ登ってくる。ラピスの背に乗せて、前衛の武器と共に裂け目を砕く。どこかにスイッチがあるのかもしれないが、力技で押し切る。ようやくランスが天井を貫いた。穴の周りを叩くと天井の石が崩れてひとひとり通れるぐらいの大きさとなり、僕を先頭に天井の隠し部屋へ入る。
「うわ、空気が淀んでいる」
僕は風魔法で換気しながら中にはいる。
光魔法 ‟
(これが死神を操る魔法陣だろう。魔力による
僕は魔法陣に手を当て、‟
「死神が消えてしまったわ、この
いつの間にかミーシャとサーシャ、元の姿に縮んだラピスもいる。
「ミーシャ、サーシャ、彼らを安らかにしてあげて」
ミーシャ、サーシャは‟
最後の一体に‟浄化魔法”を掛けると、彼の背中の魔術紋様が光り、魂が僕の体の中に流れ込む。
◇ ◇ ◇ ◇
『我が魔術紋様を受け継ぐ子孫よ。我を開放してくれたことに感謝する』
僕へ流れ込んだ
「あなた達は誰なの?どうしてここにいるの?」
『幾百年もの月日が流れているが、我が国王への忠誠と盟約は永遠に続く誓い。そのため何も伝えることはできない。この都市はまだ健在なのだろうか?』
「古代の都市なら既に滅んでいて、城壁しか残っていないよ」
『そうが、我が国王の悲願が叶ったか……。我が子孫よ、お主により解放されるのも何かの縁かもしれぬ。我の魂を吸収して糧としてくれ。魂は劣化しておるから、我の意識は残らぬだろうが、お主の役には立つだろう』
「魂が吸収されるとどうなるの?」
『なんだ、お主はそんなことも知らぬのか。吸収した魂の知識、スキル、
「共有された知識やスキルなどがわからないのは不便だね」
『今まで読んだ書物の知識が頭のどこにあるかわかるか?それと同じだ。しかし、習熟度を上げれば把握することはできる。他に質問はあるか?』
僕は魂を吸収した直後に使えた上級聖魔法が翌日に使えなくなったことを話した。
『仲間を助けたい想いが一時的に潜在能力を高めたのか……我は聞いたことがないがそんな理由だろう。もしくは、新しい魔法の芽かもしれぬ。習熟度が上がれば魔法として現れるかもしれない。すべては血が覚えているからな」
「いろいろと教えてくれてありがとう。では、吸収するね」
僕は‟
『うん、なんだこの魂の感じ……そうか、お主は……』
◇ ◇ ◇ ◇
「ザエラ、どうしたの?
サーシャに肩を揺すられて、僕は意識を外に向けた。
「一体だれがこんな仕掛けを施したのかと考えていたんだ」
「手足を切るなんて残酷だわ。頭蓋骨に角は生えていないから
サーシャは
「ここに祭壇があるわ、祭具は金でできているみたい。いただいて帰りましょう」
ミーシャは魔法陣の奥に金細工の祭壇を見つけて喜びの声を上げた。
みんなが祭壇に集まり騒いでいる間、僕は崩れ落ちた
すると、辺りを漂う魂が絡まりあいながら、天へ昇華されていく……
近くにいたラピスと目が合う。これまで明らかに戦いを避けていたのに、死神だけは自ら戦いを仕掛けた。まるで、以前からの仇敵を見つけて襲い掛かったかのようだ。
「ラピス、いったいどうしたの?」
僕の問いに答えるはずもなく、ラピスは頭を僕にこすりつけながら甘えてくる。
僕はラピスを抱きかかえて、頭を撫でながらため息をついた。
「やれやれ……」
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