2.1.12 八階 古代教皇
――ザエラ六歳 春 アニュゴンの街 郊外 地下迷宮
八階までは五階と同じ敵が現れた。単調だけど気を緩めずに黙々と倒して先へ進む。
冬が終わり春を迎えたころ、八階の
「今回の門番は手ごわいかもしれない。気を付けて」
光魔法‟
微動にしないが、身に纏う魔力は僕たちを圧倒する。配置についた後、闇属性の固有魔法‟
「ギャアア」
「お目覚めだ」
彼は四属性による広範囲の固有魔法をとめどなく打ち続ける。僕たちは一か所に固まり、
(
「ニヤ」
一瞬、彼が笑ったように見えた、次の瞬間、彼の頭上に巨大な魔方陣が突然現れる。しかもこの魔法陣は多重に展開されている。まずは崩れ落ちた壁の岩々が魔法陣に集まり、火の属性が付与される。しかも威力の高い青色の炎だ。さらに周りの空気が渦巻き、青い炎をまとった岩が渦に取り込まれる。最後には青い炎の渦となり、こちらに向かい放出される。広範囲の固有魔法で僕たちを一か所に集め、多重魔法陣による集中攻撃でとどめを刺すという彼の狙いに僕はようやく気付いた。
「散開して逃げたほうがよくないかしら?」
サーシャは青い炎の渦がこちらに近づいて来るのを不安そうに見つめる。
「個々に逃げると狙い撃ちされてしまう、このまま押し返すしかない」
僕は‟物理防御”を前面に展開しながら言葉を続ける。
「僕は‟物理防御”を多重展開するから、ミーシャ、サーシャは僕の‟物理防御”の間に‟魔法防御”を展開して。より強力になるように半円状で」
青い炎の渦がこちらに届くまで、三人で必死に防御魔法を発動し続けた。
半円状の物理、魔法の多層防御を青い炎が突き破る。新しい防御層の展開が間に合わない。まさに最後の一枚が破られようとしたとき、目の前を分厚い黒いものが覆う。オルガとカロルが投影魔法で僕たちを覆いつくす黒い盾を生成している。
「ここはあたしとカロルが凌ぐから反撃して」
オルガが叫び声をあげる。
僕、ミーシャ、サーシャは
彼の頭上の巨大な魔法陣の両隣に二つの魔法陣が現れ、キリル(火属性)には上級水魔法‟
巨大な魔法陣からの青い炎も止まる。魔力を使い果たしたようだ。彼の体内には活動を維持するだけの魔力しか残っていないはずだ。僕は彼の背中に回り両手を添えて、サーシャ、ミーシャは両腕に手を添えて、魔力を吸い取る。空になっても搾り取るかのように吸い続ける。
「ギャアアアア」
彼の断末魔のような声が響き、両眼の光も消えた。念のため糸で全身を拘束すると骨が関節から外れ音を立てて崩れる。
みんなで遺品を集めている間、僕は気づかれないように‟
――ギルド二階 執務室
師匠が遺品を鑑定しているとき、突然現れた魔法陣のことを話した。
「突然、魔法陣が現れた?‟
突然、頭の中に魔法の仕組みが思い浮かぶ。鑑定に集中する師匠の傍らで、‟
「空間に魔力袋を作り、魔力袋の表面を‟
「そうじゃ、よくわかるな。さすがわしの一番弟子じゃ……ふーむ、こちらの魔石は
魂を吸収した相手のスキルを使用できるのは確かなようだ。今回はスキルの仕組みまで理解できた。しかし、使用できるスキルの個数や使用期間の有無などわからないことが多い。
「今回の遺品はこれまでで最高の価値じゃな。聖属性の骨の保存状態は非常によいし、魔石も大きい。装備品も王国の宝物庫に陳列されても不思議ではない。しかし、これ程のものとなると売るのは難しいじゃろう。
師匠は放心したように考え込む僕を覗き込むように声を掛ける。
「いつも鑑定ありがとう。
僕はわれに返り師匠にお礼を言い、
自宅へ戻る途中、背中で寝ているラピスを腕に抱いて僕はつぶやいた。
「なんでお前は地下迷宮だと戦わないのだろうね……」
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