きみの故郷

いつも話しをしてくれたきみの故郷ふるさと

遠くを見ながら話してくれた

いつも話しをするものだから

あたまの中にきみの故郷ふるさとができあがった

いつかきみと行く約束をした

恥ずかしがりながらやさしい指切りをした

こころの中ではとても固く


 いつかきみと行くはずだった


ぼくは遠くの空を見上げた

その空の下にきみの故郷ふるさとがある

きみがそこにいるかもしれない

きみがそこにいる


 きみの故郷ふるさとに行こう


電車を乗り継いでいく

きみが話してくれた故郷ふるさとよりずっと遠かった


きみの故郷ふるさとに降り立つ

きもが話してくれた町並みよりずっと綺麗だった


そびえ立つ山々やまやま

きみが話してくれた山よりずっと切り立っていた


空を見上げる

きみが話してくれた空よりもずっと広がっていた


橋から川を眺める

きみが話してくれた川よりもずっと雄壮ゆうそうだった


夕暮れにたたず

きみが話してくれた夕焼けよりもずっと鮮やかだった


流れ星が流れた

きみが話してくれた夜空には星がなかった


どこにも時計台がなかった

きみが好きだった時計台

正午にも三時にも六時にも鐘の音が聞こえなかった



 ここはきみの故郷ふるさとではない



ぼくは空を見上げた

どっちを向いたらいいのか分からなかった


きみよ


ぼくはきみをたどれなくなってしまった


きみはまぼろしだったのか


まぼろしなら 


まぼろしらしくして欲しかった

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