積み木

ひとつひとつ積み上げる

みんなが寝静まった真夜中

ひとり白いリビングで

真四角な積み木を一列に積み上げる


風を立てないように

振動させないように


16個目の積み木を積んだ瞬間

積み上げた積み木が崩れてしまった


もう一度ずれないように丁寧に積み上げる

また積み木が崩れてしまった

16個目の積み木を積んだ瞬間に


「これは15個までしか積めない積み木なんだ」


つぎは15個まで積んで積み木を眺めた

互いにくっついているみたいに安定していた


ぼくは15個目まで積んで寝室で眠ることにした


とても疲れているのになんだか眠れない

15個の積み木のことが頭から離れない

呼吸に意識を集中して眠ろうとしても

あの一列の積み木のことが頭に浮かんでしまう


ぼくはリビングに行って積み木を確認することにした

リビングの明かりを灯すと

直立している積み木が暗闇から浮かびあがった


「よかった、積み木は無事だった」


安心してまたぼくは寝室で眠ることにした

でもなんだか積み木のことが頭から離れない


もう一度リビングに行って明かりを灯すと

同じように直立している積み木が浮かびあがった


「よかった、やっぱり積み木は無事だった」


どうでいいことだとは分かっているのに

積み木は何かの拍子で崩れてしまうような気がしてならなかった

リビングを出るときにもう一度積み木を確認した

同じように積み木は何事もなく直立していた


空気が静止していて

何の音もしない

積み木が動く気配は微塵もなかった


でもぼくは積み木のことが気になっていた

今夜は積み木の横で眠ることにした


明かりを消してそっと床の上に横になった

ぼくの境界も、積み木の境界もない真っ暗闇

まったく眠れない夜

でもぼくはずうっと積み木のことが気になっていた

理由もなく崩れてしまうのではないかと


ぼくは窓から指す光に目が覚めた

いつの間にか眠っていた


ぼくは積み木のことが気になって確認すると

15個の真四角な積み木はばらばらに崩れていた

しかしその光景はとても安らぎをそなえていた

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