第4話

ビールでほろ酔いになった隆二の身体はシャワーを浴びている。


四十度ほどのお湯が皮膚を刺激する感覚が心地いい。

乱れた心もだいぶ落ち着いてきている。


【中学生、いじめを苦に自殺】

さきほどのニュースを観て、

隆二は中学時代の幸せと辛さがごっちゃ混ぜになっている記憶を思い出してしまった。


耐えきれなくなり、逃げるようにバスルームに向かった。

数分ほどシャワーを浴びているだけだが、

心にへばり付いた黒い感情が洗い流されていき、色が薄くなっていくのを感じている。



隆二は湿った髪をタオルドライしながらリビングに戻る。

つけっぱなしにしていたテレビは相変わらずだった。


今映し出されているのは、無能そうな人間たちの記者会見。

とても会見と呼べるモノではなかった。

カンペをひたすら棒読みしているだけ。

「無能そう」ではなく「無能」な人間が醜態を晒している。


記者から浴びせられる質問に対して『事実を確認中でございます』を連発。

(お前らが無能だから把握できていないだけだろ)

濃度の高い怒りが全身に駆け巡るのを感じ、隆二はすぐさまテレビを消した。


その時ソファーにおいてあるスマホが鳴った。


画面に表示されていたのは『市川美貴』。

母親の名前。

隆二はスマホが静かになるのを待った。


今度はメッセージアプリに母親からのメッセージが表示された。

『直也君が亡くなりました。メッセージを見たらすぐに連絡ください』



「は?死んだ?」

隆二はすぐにスマホの発信ボタンを押した。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る